「やさしいから好きです。」で大ヒット!! ヤマハ「パッソル」がつらぬいた「ソフトバイク」とは?

1977年に登場したヤマハ「パッソル」は、膝をそろえて乗る原付スクーター構造を軽量で安価に実現し、爆発的に女性ユーザーを増やしました。新しい顧客のニーズは、パワーやメカニズムではなくふたつの「やさしさ」でした。

清潔感のあるスタイルと簡単操作、ふたつの「やさしさ」で大ヒット

 1977年にヤマハが新発売した「Passol(パッソル)」は、女性を中心にバイク需要を拡大し、その後の「JOG(ジョグ)」や「Vino(ビーノ)」などにつながる原付スクーター全体のルーツとも言えるモデルです。

「パッソル」以前にも、ヤマハには「チャッピー」など女性向けの人気モデルがありましたが、ミッション付きエンジンを使用した「小さなバイク」という雰囲気です。

 それに対して「パッソル」には原付スクーターならではの手軽さがあり、ヤマハはこれを「ソフトバイク」と名付けました。それを一言で表すと「やさしいバイク」です。

ヤマハが女性ユーザーをターゲットに開発した「Passol」(1977年)は、ニーズを徹底的に分析してバイクの既成技術にとらわれない「ソフトバイク」を確立
ヤマハが女性ユーザーをターゲットに開発した「Passol」(1977年)は、ニーズを徹底的に分析してバイクの既成技術にとらわれない「ソフトバイク」を確立

 ヤマハは「パッソル」の開発時に、ターゲットとなる新しいユーザー層のニーズは「やさしさ」だと分析しました。

 その「やさしさ」とは、「パッソル」の特徴でもあるスカートでも気軽に乗れる、膝をそろえて座る乗車姿勢です。そのために必要な構造はステップスルーですが、これはパイプフレームの強度確保で実現しています。

 この車体形状のおかげで従来のバイクとは異なり、跨らずにシートに腰掛けることができます。シート高は680mmと、両足が地面に届くほど低く設定されていました。

 エンジンは強制空冷としてカバーの中に収められています。これには従来、水平に寝かしていたシリンダーを立てたコンパクト設計が生かされています。

 チェーンなどの駆動系も外装で覆っており、前面のレッグシールドと相まって衣類が汚れる心配を減らした構造になっています。

 そのカバー類は当時新技術のプラスチック製なので、スリムで柔らかな外観を持ったデザインが可能となっています。また「パッソル」以前の本格的スクーターに比べると車両重量は45kgと圧倒的に軽量で、取り回しも容易です。

 さらにギアチェンジ操作が無く、アクセルを捻るだけの「易しい」操作で運転することができました。ブレーキも自転車と同様に右手が前ブレーキ、左手が後ろブレーキになっています。

ヤマハ「Passol」のスピードメーター。目盛りのデザインが可愛い
ヤマハ「Passol」のスピードメーター。目盛りのデザインが可愛い

 価格や燃費など、維持費の安さも財布に優しい「ソフトバイク」でした。

 ヤマハは「パッソル」の宣伝役に国民的大女優の八千草薫さんを起用し、「パッソル」に乗る姿をTVコマーシャルで大々的に展開します。当時は毎日お茶の間のTVにこのCMが流れ、日本全国隅々まで「パッソル」が知れ渡りました。

 バイクとは縁遠かったデパートやスーパーなどでも展示会が行われ、女性をターゲットにした販売戦略もあって「パッソル」は空前の大ヒットとなります。

 翌年にはグレードアップした姉妹車の「パッソーラ」が登場しました。さらにフットペグタイプの「マリック・リリック・キャロット」の3姉妹や、男性向け「タウニー」なども加わり「ソフトバイク」シリーズは充実していきます。

 その後、この流れは1980年代の50ccの原付スクーターブームへと繋がり、「ジョグ」や「ビーノ」などが登場します。

 ヤマハ「パッソル」(1977年型)の当時の販売価格は6万9800円です。

■ヤマハ「Passol(S50)」(1977年)主要諸元
エンジン形式:空冷2ストローク単気筒
総排気量:49cc
最高出力:2.3PS/5500rpm
最大トルク:0.37kg-m/3500rpm
全長×全幅×全高:1515×605×925mm
シート高:680mm
始動方式:キック式
燃料タンク容量:2.3L
車両重量:45kg

【取材協力】
ヤマハ・コミュニケーションプラザ(静岡県磐田市/ヤマハ発動機本社隣接)
※本記事中の写真は許可を得て撮影しています

【画像】一家に一台!? 「優しさ」と「易しさ」を備えたヤマハの大ヒットモデル「Passol」(1977年)を画像で見る(13枚)

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Writer: 柴田直行

カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員

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