「TECH21」カラーで沸いた!! 伝説の“鈴鹿8耐レーサー”ヤマハ「FZR750(0W74)」が特別になったワケ
日本国内にバイクレース人気が沸騰していた1985年に、ヤマハが「鈴鹿8耐」に投入した「FZR750(0W74)」は日米のスターライダーを起用し、男性化粧品の「TECH21」がスポンサーでした。ゴール29分前のリタイヤは、伝説のストーリーです。
のべ24万人が観た「TECH21」カラーの躍動と悲劇!!
1985年の「鈴鹿8時間耐久ロードレース」に参戦したヤマハの「FZR750(0W74)」は、伝説的なストーリーでレースファン以外のライダーにも知っておいて欲しいレースマシンです。
その車体を見て最初に気になるのは、独特の薄紫色の車体色ではないでしょうか。これはチームのスポンサーであった資生堂の男性化粧品「TECH21(テック・トゥーワン)」のブランドカラーでした。
派手な原色が溢れるサーキットでは違和感があるかもしれませんが、その後のレースでの活躍を含めて、逆によく目立ち、印象深く、多くのバイクファンの記憶に強く残っています。
この独特の薄紫色=「TECH21」=「ヤマハレーシング&FZR」というブランディング作戦は、見事に成功します。
「男性化粧品? しかも資生堂がヤマハのスポンサーに?」と驚くかも知れませんが、当時はバイクレースやプロレーサーに、それだけのバリューがあったワケです。

「FZR750(0W74)」を駆り、鈴鹿サーキットを走ったのはアメリカ人ライダーのケニー・ロバーツ選手です。その戦歴を記すと膨大になってしまうほど有名なライダーで、3年連続世界GPチャンピオンに輝き、そして鈴鹿8耐当時はGPから勇退して2年目という伝説のレーシングライダーです。
そしてペアを組んだのは、「TECH21」のテレビCMにも出演した平忠彦選手でした。当時、3年連続全日本チャンピオンに向けて快走中のヒーロー的ライダーです。そんな国内外のトップスター2名がペアを組むという特別なチームの参戦に、バイクファンの間で話題沸騰となりました。
当時の熱い空気感を、少しサーキットの外の状況で説明すると、日本は空前のバイクブームでもあり、ヤマハは前年の1984年に「FJ1100」、「RZV500R」、「FZ400R」、「SRX250」、「DT200R」などを、1985年には「FZ750」、「VMX1200(V-MAX)」、「XVZ1300ベンチャーロイヤル」、「FJ1200」、「XV1100」、「SRX600」、「FZ250フェザー」、「TZR250」、「セロー225」……など、後年に名車として名高いバイクを次々と発売する、新車攻勢をかけています。
またヤマハは新車攻勢で獲得したユーザーを満足させるために、サマーフェスティバルを開催。北は北海道から南は九州まで全国各所で行われ、鈴鹿8耐の前週には富士スピードウェイ(ロバーツ選手も参加)で2万5000人を集め、鈴鹿8耐の翌週にもスポーツランドSUGOで同様のオーナーズイベントを開催しています。
このように日本中で熱いバイクの夏を迎えており、鈴鹿8耐では土日でのべ24万人(!)もの観客が詰めかけ、推しのチームやライダーへ声援を送りました。

さて、「FZR750(0W74)」に話を戻すと、そのベース車となった「FZ750」は、「ジェネシス思想」と呼ばれた前傾した水冷DOHC4気筒エンジンや1気筒あたり5バルブという新技術をフル投入したモデルでした。ヤマハとしてはここで他メーカーをリードしたいという悲願の新型ナナハンです。
今も昔も世界の檜舞台である鈴鹿8耐での優勝は、そのバイクの性能証明のみならず、バイクメーカーの勢いを象徴する大金星です。「FZR750(0W74)」とロバーツ選手+平選手の組み合わせは、ヤマハの総力を結集したチームでした。
レースの結果は、ロバーツ選手のスタートの出遅れから始まり、ほぼ最後尾からの猛ペースで追い上げ、交代した平選手がトップに出ると、終盤には3位以下を周回遅れにするほどの圧倒的リードを奪いながら、残り29分で無念のリタイヤ……という展開が観客を沸かせ、伝説的なストーリーとなりました。
結果はリタイヤですが、ある意味では優勝以上のインパクトと興奮をもたらし、ヤマハファクトリーTECH21チームの「FZR750(0W74)」もまた、伝説のマシンとなりました。
その後もヤマハファクトリーチームはTECH21カラーのマシンで鈴鹿8耐に挑み、1987年には優勝を果たしています。
ヤマハにとって特別なレーシングカラーとなった「TECH21」はその後、スーパースポーツモデル「YZF-R1」誕生21周年の2019年に、復刻カラーで鈴鹿8耐に出場しています。
■ヤマハ「FZR750(0W74)」(1985年)主要諸元
エンジン形式:水冷4ストローク並列4気筒DOHC5バルブ
総排気量:749cc
最高出力:130PS以上
フレーム形式:アルミ・デルタボックス
【取材協力】
ヤマハ・コミュニケーションプラザ(静岡県磐田市/ヤマハ発動機本社隣接)
※本記事中の写真は許可を得て撮影しています
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員














