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標高4000m超のゴールを目指してバイクで駆け上がる! アメリカのレースに挑戦した3組の日本人たち

3組の日本人チームが『第97回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム』(アメリカ・コロラド州・2019年6月30日)の2輪クラスに参戦しました。予選、練習、そして決勝と、彼らが挑んだレースの模様をご紹介します。

PPIHCにチャレンジした3組の日本人たち

 2019年、日本から『パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム』(以下PPIHC)に挑んだのは、岸本ヨシヒロ選手(電動バイク 韋駄天X改HC)、新井泰緒選手(カワサキ KZ1000MK2)、井上哲悟選手(カワサキ Z900RS)の3組です。

標高4301mのゴール地点を目指すPPIHC

 独自設計の電動バイクにカワサキの新旧ストリートバイク。決勝に向けて予選と練習走行を重ねる彼らの模様を、日を追ってご紹介します。

6月25日(火)予選

 この日は「ボトムセクション」と呼ばれる、スタート地点から中間地点であるグレンコーブまでの走行です。練習と同時に予選を兼ねており、決勝レースの出走順が決定します。

 針葉樹林の中を走るハイスピード区間は高速コーナーの連続。スタート地点の標高は2800m、フィニッシュ地点は3600mになります。

独自設計の電動スポーツバイク「韋駄天X改HC」は、立ち上がり加速のよさとコーナリングスピードの速さという電動ならではの特徴がPPIHCのコースと相性がいい。練習と予選を順調にこなしてきたが、決勝レースで痛恨の転倒を喫した

 岸本選手は決勝出走順11番手を獲得しました。新井選手は「コースを忘れてますね」と笑いながらも着実に走行を終えて17番手。井上選手は走行中にエンジンが止まるトラブルを抱えつつも6番手に。

6月26日(水)練習

「ミドルセクション」での練習走行。標高は3600mから3900mまでとその差は300mで距離は4.8kmと短いものの、つづら折れとともに森林限界を超える難セクション。

井上選手のZ900RSは、前後オーリンズ製サスペンションの他、ワンオフのアルミ製スイングアームや燃料タンク、ブルーサンダース製シートカウルなどを装着。エンジンはZ1000をベースとしてレーシングチューンを施し、最高出力を上げている

 井上選手はエンジンストールに悩まされつつも2輪総合5位のタイムを記録しました。岸本選手は4位で、立ち上がり加速に優れる電気バイクの強みが表れた結果に。

 また、タイムこそ彼らに追いつかないものの、ラップごとにタイムを縮めた新井選手は「マシンの仕上がりはいい」と、高地でのキャブセッティングも順調。4回目だからこその経験が生きていました。

6月27日(木)練習

 もっとも重要といえるトップセクションの練習走行です。スタート地点は標高3900mでフィニッシュは山頂の4300mと、酸素濃度が著しく低下します(低地の約20%程度といわれる)。

 電気バイクを走らせる岸本選手にとっては面目躍如となるセクションでしたが、走行中にドライブチェーン切断のアクシデントが起きたため途中で走行不可能となってしまいました。

「衝撃が起きて後ろを見たらチェーンが空を飛んでた」(岸本選手)

 幸い切れたドライブチェーンはコース外に落下し、岸本選手にも怪我はありませんでした。

 井上選手のエンジンストール問題は昨日の整備で解決したようで、マシンの仕上がりは順調の様子。

6月28日(金)練習

 2度目となるミドルセクションを3選手とも無事に終了。夕方からはコロラドスプリングス中心街で「ファンフェスタ」が行なわれ、井上選手と新井選手はマシンを展示しました。

新井選手のKZ1000MK2はフレーム補強に加えて前後ホイールを17インチ化。走行性能向上とともにハイグリップタイヤの装着を可能としている(ピレリ・ディアブロスーパコルサ)。オリエントエキスプレス製シリンダーで排気量は1293ccに拡大

 KZ1000MK2、Z900RSという新旧カワサキのストリートバイクでPPIHCに挑む彼らに、地元ファンは熱い声援を送っていました。両選手はファンたちと握手をかわし、サインの求めに応じていました。

6月30日(日)決勝

 天候は快晴。予定どおり7時30分にレーススタートです。決勝は予選タイムが遅い順にスタートします。

 ここで序盤から転倒者が続出。中盤に出走した岸本選手はスタートから間もない右コーナーの立ち上がりで転倒し、左足首を骨折してしまいました。

 決勝レースを見事に完走した井上選手と新井選手はレース後、以下のように語ります。

●井上選手(タイム10分36秒884・ヘビーウェイトクラス3位・二輪総合6位・オーバーオール19位)

井上選手のPPIHC参戦はiconがスポンサーとなり、ヘルメットやレーシングスーツの提供のみならず参戦体制を全面的にバックアップ。これにより井上選手はライディングのみならず高地トレーニングやコース習熟にもより集中することができた

「レース中断が続いたために気温が上がって路面温度も上がってしまい、装着したタイヤとの相性が悪くなってしまった。ズリズリと滑るリアタイヤでなんとか走れたが、そこに悔いは残る。しかしチームメンバーと全力で挑んだし、クラス3位の結果を出せたことは素直にうれしい」

●新井選手(タイム11分18秒220・エキシビションパワースポーツクラス3位・二輪総合12位・オーバーオール27位)

新井選手にとって今回が4度目の挑戦。2016年は100台制限のためエントリーが受理されない苦難も味わったが、それでも「夢を広げてくれたレース」と参戦を継続してきた。目標の10分台には届かなかったが、最後の挑戦となった今年のレースに悔いはなさそうだ

「目標としていた10分台には届きませんでしたが、自己ベストはほんの少しですけど更新できました。マシンのチューニングもやれるだけやったしセッティングもよかった。完走できてよかったです。PPIHCは今年でひと区切りつけます」

【了】

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Writer: 山下剛

男性誌や二輪誌の編集部を経てフリーランスのライター&フォトグラファーとして活動中。レース取材はもっぱらマン島TTとパイクスピークという海外の公道レースのみの偏食家。海外取材ついでにレンタルバイクツーリングが趣味で、いつかはそれで世界一周することを企んでいる。1970年東京生まれ。

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