東南アジアのカスタムシーンを牽引するインドネシア インドネシア政府も後押しするイベント『カスタムフェスト』は今年も熱かった!
インドネシアで開催されているバイクイベント「カスタムフェスト」が10月に行われました。8回目の開催となるカスタムフェスト2019は例年以上に熱い盛り上がりとなっていました。
インドネシアのイベント『KUSTOM FEST』で感じる『熱気』の凄まじさ
ここ数年で、かつてない程に盛り上がりを見せる東南アジアのカスタム・シーンですが、その中で起点となった起爆剤と呼べるイベントがインドネシアで開催されている『KUSTOM FEST(カスタムフェスト)』であることは、まず間違いないかもしれません。

事実、2012年からスタートし、今年で第8回を数える同イベントがスタートしてから東南アジア各地では翌年からマレーシアの「アートオブスピード」が始まり、2015年にはインドネシアの「スリアネーション・モーターランド」、そして2016年にタイの「バンコク・ホットロッドショー」などが開催されています。
そうしたことを踏まえれば『カスタムフェスト』が与えた影響はかなり大きいといえますが、このイベントが始まったキッカケとして挙げられるのが、主催者であるRetoro Clasic Cycles(レトロクラシックサイクル)が2009年に参加した日本のカスタムショー『クールブレイカー』や翌年の『ヨコハマ・ホットロッドショー』への出展です。

レトロクラシックサイクルの店主にして『カスタムフェスト』のオーガナイザー(主催者)を務めるLulut Wahyudi氏は「日本で見たカスタムショーのようなイベントをインドネシアで開催したかった」と当時を振り返ります。
インドネシア政府もバックアップする『カスタムフェスト』
とはいえ、現在の『カスタムフェスト』の規模といえば、ある意味、日本のカスタムショーを凌駕しているレベルといえるものに成長を遂げています。出展の台数や会場の広さなどは『カスタムフェスト』が開催されるジャグジャカルタのJECホールよりパシフィコ横浜の全館で行われる『ヨコハマ・ホットロッドショー』の方が上ですが、インドネシア政府が観光推進の一環として同イベントをバックアップし、ホンダやカワサキをはじめとする大メーカーがスポンサーとしてポスターに名を連ねる様子は、日本のカスタムショーでは見ないものです。

ちなみに国際空港であるジャカルタのスカルノハッタ空港には、巨大なポスターサイズのチョッパーの写真が貼られ、開催地のジョグジャカルタ空港の入場ゲートには過去の同イベントで行われた現地のアストラ・ホンダが主催した『HONDAカスタム・プロジェクト』で製作されたカスタムが展示されています。
その光景は正直、日本のカスタムショーでは考えられないものではないでしょうか? 政府やメーカーが『カスタム・カルチャー』をバックアップするという土壌は、(東京に限って言えば)街中を走るバイクもまばらで駐車場を探すこともままならない我が国、日本の状況を考えると羨ましい限りです。
「昭和の日本」の空気を感じる一大イベント
しかしながら、そうした状況とは裏腹に『日本のカスタム・シーン』が現地では憧れの対象になっているのは、紛れもない事実です。実際、『カスタムフェスト』には多くの日本人ゲストが毎年、招かれているのですが今年はムーンアイズのShige菅沼氏/WILDMAN石井氏/チェリーズカンパニーの黒須嘉一郎氏/カスタムワークスゾンの吉澤雄一氏/ホンダカスタムプロジェクトの講師を務めたラックモーターサイクルの杉原雅之氏/前年の『ヨコハマ・ホットロッドショー』にてレトロクラシックサイクルからピックを獲得したチーターカスタムサイクルズの大沢俊之氏などが来訪。

多くの観客と交流を温めましたが、その中で米国に拠点を置くChabottエンジニアリングの木村信也氏の参加は主催者が5年越しで実現したもの。日本のみならず、世界を股にかけてレジェンドとして知られるビルダーの招聘は、インドネシアのカスタムファンにとって念願だったとのことですが、大げさ抜きに会場の『熱気』は凄まじいレベルのものです。
また凄まじいといえば会場に飾られる出展カスタムも筆者(渡辺まこと)が最初に訪れた2013年と比較して著しいレベルアップが果たされており、ともすれば『独創性』という観点で見れば、既に日本のソレを凌駕しているといえるものが多かったのが印象的です。
ちなみに出展された130台のカスタムバイクの中心にあるのが、200cc以下の小排気量車なのですが、ある意味、ハーレーのカスタムと違い、『決まったテンプレートがない』ジャンルのカスタムゆえ、それぞれに注がれた『創意工夫』には感心させられることしきりです。

またインドネシアでは欧米からの輸入車に200%ともいわれる関税が掛けられ、その上、消費税も徴収されるゆえ、ハーレーのスポーツスターでも300万円オーバーという凄まじい価格設定となっているのですが、首都のジャカルタでの最低賃金は日本円で月に2万5000円とのこと。この数字を見るだけでもカスタムはおろか、バイクも非常に高額であることがお分かりになると思います。
そうした部分からもインドネシアの人々のカスタムにかける『情熱』のほどが伺えるのですが、まさにそれをストレートに体感できるイベントが『カスタムフェスト』です。
世界の人口で中国、インド、アメリカに次ぐ第4位にあるインドネシアが将来的には経済的にも世界のトップに立つとも云われていますが、今年も入場者数で2万8000人を数えた『KUSTOM FEST』での熱を感じる限り、それもあながち夢物語ではないのかもしれません。何故か、この国には『昭和の日本』にも似た懐かしい匂いが漂います。
インドネシアの『カスタムフェスト』、来年も開催が楽しみなイベントです。
【了】
Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)
ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。