カスタムショーを更に楽しく! 「YOKOHAMAホットロッド・カスタムショー」で開催される「スポットライト」とは?
我が国最大のアメリカン・カスタムカルチャーイベント「YOKOHAMAホットロッド・カスタムショー」では、毎年決められたテーマに沿った車両を展示する『スポットライト』スペースが用意されます。毎年、技巧を凝らしたカスタムバイクが展示される同スペースですが、過去にはどのようなテーマが用意されていたのでしょうか。
わずか30分で定員オーバーとなった「YOKOHAMAホットロッド・カスタムショー」
去る2019年9月12日に開始したWeb上でのエントリーが30分足らずで定員オーバーとなり、今年も盛り上がりが期待される我が国、最大のアメリカン・カスタムカルチャーの祭典、YOKOHAMAホットロッド・カスタムショー(以下:HCS)。

モーターサイクルのエントリーが2002年にスタートし、7年後である2009年からは『スポットライト』として毎年、異なるテーマごとに出展を募り、同じカテゴリーの車両がショーの一角でまとめて展示され、訪れる人々を楽しませています。
12月1日に神奈川県のパシフィコ横浜で開催される2019HCSでは、『”Slicker and Quicker” Glorious Shovelhead』というタイトルでハーレーのショベルヘッドがテーマに決まっていますが、過去を振り返ってみるとじつにバラエティーに富んだラインナップとなっています。ここでは、その歴代アワードバイクについて順を追って、ご紹介させて頂きます。
ムーンアイズ「YOKOHAMAホットロッド・カスタムショー」スポットライトの軌跡
●2009『YAMAHA SR PALACE』

HCSショー・スポットライトの第一回目として開催されたのは当時、盛り上がりを見せていたYAMAHA SRをベースとしたカスタムです。1978年に初期型が登場し、今なお現役で生産されている日本を代表するモデルが様々なバリエーションでカスタムされ、一堂に会しました。アワードは横浜のクリブモーターサイクルが獲得しています。
●2010『Forever Multi Palace』

第二回目となった2010年は『フォーエバー・マルチ・パレス』として『国産の三気筒以上のエンジンを搭載したモデル』がベースというレギュレーションで開催。カワサキZ系やホンダCB系などチョッパー・スタイルのものから、パフォーマンスを追求したマシンまで、バリエーションに富んだ車両がエントリーを果たしました。アワードは愛知県の改華堂カスタムサービスのカワサキ・マッハをベースにした車両が獲得しています。
●2011『Custom British&Bobber』

第三回は『カスタム・ブリティッシュ&ボバー』というテーマでイギリス製バイクをベースとしたカスタムがテーマに開催されました。エントリー車種はトライアンフやBSA、ノートンなど。『Bobber』というレギュレーションだったゆえ、ロングフォークのチョッパーやディガーではなく、コンパクトかつオールドレーサー的なムードのマシンが多く出展されました。アワードは広島県の平和モーターサイクルによるノートンModel 50をベースにしたマシンが獲得しています。
●2012『Early Days Chopper Extravaganza』

1960年から1970年代に製作されたチョッパーの手法に準じた車両がエントリーの基準となった第四回のショースポットライトは新潟県のスパイク・チョッパーズがアワードを獲得。テーマがテーマなだけに、この年は自然と『ロングフォーク』の車両のエントリーが多かったと思います。いにしえのオールドスクールの技を現在の技術で再現した車両が多かったのも、同年の特徴です。
●2013『Timeless Chopper Spectacular Domestic Models』

スポットライトのテーマタイトルから分かりづらいかもしれませんが、この年は国産バイクをベースにしたチョッパー&カスタムという題材で基本的に400cc以下の車両の展示というレギュレーションで開催。比較的、自由な題材だったゆえ、ストックのフレームを活かしたBobberやロングフォークなどが出展されましたが、アワードは愛知県のMCペッカーズのカワサキ250TRをベースにしたディガーが選ばれました。
開催6年目以降も様々なテーマが用意された『スポットライト』
●2014『The DIGGER BEAT』

1970年代後期から1980年代初頭にかけてアメリカの北カリフォルニアで発祥した『ディガー』をテーマにしたのが2014年のスポットライトです。フロントのステム位置はあくまでも低く、車体全体がロー&ロングとなったドラッグバイクをモチーフとしたこのカスタム・スタイルは高い装飾性を与えることが特徴になっていますが、数あるエントリーの中から茨城県のグラスホッパーモーターサイクルがアワードを受賞。典型的なディガーのシルエットながらヘッドライト位置などに個性を感じるマシンとなっています。
●2015『EXOTIC IRON』

1957年から1985年まで生産されたハーレーダビッドソンのスポーツスター、ヘッドとシリンダーが鉄となった『アイアン・スポーツ』モデルをベースにしたマシン、というテーマで開催されたのが2015年のスポットライトです。この年はエントリー台数、22台の中から兵庫県神戸市のシウンクラフトワークスがアワードを獲得。チョッパーやディガー、カフェレーサーなど様々なタイプのカスタムが出展を果たしたのも記憶に新しいところです。
●2016『Mystical Triumph Choppers』

2011年にも『英車』をテーマにしたスポットライトが開催されましたが、この年はイギリス製バイクでもテーマを『トライアンフ』単一メーカーに絞り、スポットライトが行われました。28台がエントリーされた中で頂点となった平和モーターサイクルのカスタム、『Masterpeace』は同年、HCS全体のベスト・オブ・ショーにも輝いています。この年もイギリスのバーチカルツインをベースにしたチョッパーやボバーが出展を果たし、多彩なバラエティーの内容です。
●2017『Swinging TRADITION』

1960年代のトラディッショナルなチョッパー、というテーマを掲げて開催された2017年のスポットライトは、滋賀県のハマンズカスタムがアワードを受賞。このマシンをご覧頂ければお分かりのように、『あくまでもフォークが長くなる以前の時代のチョッパー』が主催のムーンアイズが意図するものだったと思いますが、出展側によって『トラッド』の解釈も様々。結果としてバラエティーに富んだラインナップになっています。ちなみにこの年のスポットライトはマレーシアのBEARD BROTHERS CYCLESもエントリー。インターナショナルなショーへ成長を遂げたHCSのムードを感じさせたものとなっています。
●2018 『ETERNAL PANHEAD』

昨年のYOKOHAMAホットロッド・カスタムショーでスポットライトになったのが、1948年から1965年まで生産されたモデル、パンヘッド。チョッパーというカルチャーが生まれた時代に現役だったマシンをテーマにしただけあって、ロングフォークからボバーまで様々なスタイルのマシンが出展されるに至りました。その中でアワードを獲得したのが神奈川県横浜市にあるブル・オリジナルが製作したカスタム。アメリカのハーレーを素材にし、英国車のような雰囲気で仕上げられた独創性の高い一台となっています。
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2009年にスタートしたHCSスポットライトについて、ここまで駆け足で紹介させて頂きましたが、主催するムーンアイズが、毎回、様々なテーマの中で常に一貫しているのが『アメリカン・カスタムカルチャー』を盛り上げ、その灯を消さないよう努めている姿勢です。
今年のテーマは過去、HCSで最もエントリー台数が多く、我が国のチョッパーシーンの中で中軸ともいえるモデルであるハーレーの『ショベルヘッド』。今年の12月1日も極上のマシンたちがパシフィコ横浜の会場に並ぶことに期待したいところです。
【了】
Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)
ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。