ヤマハ「セロー」ロングセラーの秘訣はセルモーターにあり? 2020年にファイナルを迎える人気モデルの変遷とは
ヤマハのマウンテントレール「セロー」シリーズは、1985年の登場以来、幅広い層のユーザーに親しまれてきたロングセラーモデルです。2020年で35年目を迎えると同時に、国内最終モデルとなるセローの変遷とはどのようなものだったのでしょうか。
「深化」を続けてきたヤマハ「セロー」
ヤマハは1985年に初代モデルが登場した「SEROW(セロー)」シリーズの国内最終モデル「SEROW250 FINAL EDITION」を2020年1月15日に発売します。

1985年に初代モデル「セロー225」が登場し、1989年には重量増を抑えてセルを装着した同モデルは、その後も「二輪二足」というコンセプトを頑なに守りつつ、様々なマイナーチェンジを行うことでロングセラーモデルとしての地位を確立してきました。
2005年には新開発の250ccエンジンとフレームを採用することで、ストリートでの快適性を高めた「セロー250」が登場し、厳しい排ガス規制などに対応するためモデルチェンジを繰り返していきます。
これまでのセローの変遷や開発時のコンセプト、225ccと250ccモデルの違いについてMC戦略統括部商品戦略部商品企画1Gr 松田克彦さんは次のように話します。

「セローを発売して35年になりますが、そのターニングポイントについてどういったエピソードがあるのかお伝えしていきます。
セローは1985年、マウンテントレールを提唱し導入をいたしました。89年にセルモーターを採用、その後リアタイヤのチューブレス化、リアのディスクブレーキ化などを行ってきました。
その中でも一番大きな変更が2005年のオールニューエンジン、オールニューフレームの導入です。その後はFI (フューエルインジェクション)化やトレール量の変更等がありました。これがセローの歩んできた道となりますが、当時開発していた部隊の方々にインタビューして振り返って頂きました。
1985年、当時ヤマハにはXT200というモデルがありましたが、当時社内ではこうした林道などを快走できる足の長い、サスペンションストロークの良いオフロードバイクをスーパートレールと呼んでいました。
それに対してセローはトライアルから普通のオフ・ツーリング、ストリートまでこなすバランスの良いモデルということで導入をいたしました。
この当時、1983年頃からセローの開発をスタートしましたが、弊社のモーターサイクル事業担当の森永という重役は、“このモデルはシングルヒットになるだろう”と導入前に言っていたそうです。その理由はセルの有無で、セルが付けばロングセラーになるだろと指摘したと聞いています。
遅れること4年目、ようやくセルを装着しておりますが当然、車両が重くなります。そのため、ブラケット一個一個の形から見直し、細部の軽量化に取り組んだようです。そのため、セルをつけても100kgを超えないと、商品の進化ごとにちゃんと重量アップを抑えて“深化”しています。
250cc化の際にはバランスコンセプト配合を変更
2005年の250cc化した際には、社内で“こんなのセローじゃないぞ”という話があったと聞いています。初代からセローの開発に関わってきた近藤充はその際に、“時代に合わせて進化しなければいかん”ということで、バランスコンセプトの配分見直しを行っています。

初代セローは、一番にトレイル、その次にマウンテン(いわゆるオフロードでの走行)、3番目にストリートでの使いが勝手という順番でした。
250ccモデルではストリートを一番にもってきて、マウンテン、トレイルという配合に変更していますが、あくまで比率の問題でして、いわゆる“紅白まんじゅう”というのか“白紅まんじゅう”というのかの違い程度となっています。
このようにモデルとしては深化してきましたが、とにかくオートバイに初めて乗る人でも敷居の低い、間口の広い乗り物であるべきという信念は変わらずに貫かれています」。
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2020年からは新型車に対してより厳しい排ガス規制であるユーロ5が適用されますが、翌年2021年には継続生産車にもその規制が適用されます。
セロー250はユーロ4導入時などにも扱いやすい車重やサイズをそのままに規制をクリアしてきましたが、ヤマハによると現状ではユーロ5に対応させるための装置の追加スペース、装置追加に伴う車重増加への対応が難しい状態であるといいます。
また、仮に規制をクリアできたとしても、車両価格が上がってしまう可能性がある点もセロー250継続の懸念材料の一つに挙げられるようです。
【了】