ステンレス・フレームにハブレス・ホイール インドネシアの「スクーター」カスタムに見る驚愕のクオリティ

小排気量車のカスタムが盛んなインドネシアでは、カブ系以外にもスクーターをベースにした車両を目にすることがあります。どのような仕様になっているのでしょうか。

高い技術力ありきで製作されたインドネシア発のカスタムバイク

 アメリカで生まれたチョッパーというカスタム・カルチャーが欧州や我が国に飛び火し、現在は東南アジア各地で盛り上がりを見せていますが、その中でも日本でいうところの400cc以下の中型排気量で現在、トップといえる国……今回、ここに紹介させて頂く車両をご覧いただければ、それがインドネシアであることに異論を挟む方は少ないかもしれません。

要所の稼働部のデザインを“円筒”で統一し、摩訶不思議なムードとなったこのマシン。マニアはもちろん、バイクに興味のない一般の方が見ても驚愕のクオリティが与えられています。車両のショーネームは『IBRA』とのことです

 毎年10月の第一週の週末、インドネシアの古都である『ジョグジャカルタ』で開催される『KUSTOMFEST』というイベントには、毎年数多くの極上のチョッパーが出展されているのですが、その中でも異彩を放っていたのが、『ALPHA SIERA&TEAM』による一台です。

 写真をご覧になってもお分かりのとおり“円”と“曲線”を基調とするフレームワークには驚愕すべきディテールが散りばめられたものとなっています。

 ネックやシートの稼働部を“筒状”のデザインで統一したフレームは当然、ワンオフ(一品もの)で製作されたものなのですが、その素材は何とフル・ステンレス。鉄に10.5%以上のクロムを添加し、耐食性と耐熱性、加工性、強度など優れた特性を備えるこの鋼材は英語で「Stainless Steel」といい、直訳するとまさに『錆びにくい鋼』という意味を持つのです。

 しかし、その一方で溶接の熱によって製作物が大きく変形し、施工自体も炭素鋼より技量を要するものとなっています。特に『厚もの』は、より溶接に関する技術と知識を有した職人でなければ難しいものですが、このマシンは見事なクオリティで仕上げられています。

 またそのフレームに合わせ、前後のホイールも斬新なデザインが与えられているのですが、これは中心軸を持たない“ハブレス”構造となっており、独特の個性を演出。以前に同じくインドネシアで製作された同じような構造のホイールを装着したマシンを当サイト(バイクのニュース)で紹介させて頂きましたが、この車両はあえてスポーク部を残し、車体のデザインとの統一感が図られています。

ベースモデルはホンダ製スクーター「BeAT125」

 さらに車両を見るとエンジンの形状が摩訶不思議であることにお気づきの方もいるかもしれませんが、この車両のベースとなったのはインドネシアで圧倒的な人気を誇るスクーター、ホンダ「BeAT125」とのこと。同モデルは年間で172万台のセールスを誇り、2位のホンダ・スクーピーと比較しても3倍以上の売上となっているのですが、この最もポピュラーな車両に同じくホンダのGL100系のシリンダーとヘッドをドッキング。

ベースとなったホンダのスクーター「BeAT125」

 スクーターの腰下にシングルの腰上を組み合わせたエンジンの排気量は210ccとなっているのですが、こうした『ハンドメイド・エンジン』もインドネシアらしさを存分に感じさせるものとなっています。
 
 ちなみにブレーキはこのエンジンのプーリー部分の裏側にリア用のみが装着されているのですが、ゆえに操作を司るパーツは右サイドのステップに装着されたブレーキペダルとスロットルワイヤーをハンドル内に納め、インナースロットル構造となった右グリップのみ。こうした部分もスクーターをベースにした利点を最大限に生かした特徴といえるものです。

 チョッパーというカスタムでは、こうした『装飾性』が求められ、あえていえば『改造』が『性能の向上』に直結するわけではないのですが、こうした『創意工夫』の技術を凝らした『アート的』な側面も、その大きな魅力の一つであることは間違いありません。

 高額な大排気量車ではなく、身近にあるスクーターで、このマシンのようなカスタムを創り上げるインドネシアのシーンのパワーには改めて驚かされるばかりです。
 
【了】

【画像】ホンダ「BeAT125」をベースにしたカスタムバイクを見る(10枚)

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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