ビモータ「テージH2」は刺激を感じなくなったライダーが最後に行き着く先!? 別次元のハンドリングを実現する新生ビモータ第一弾モデル

2019年に初公開され世間の度肝を抜いたビモータ「TESI(テージ)H2」がついに日本市場へ導入されました。ここでは日本総輸入発売元のモトコルセの協力のもと、ジャーナリストの伊丹孝裕さんがその魅力を探ります。

強烈なインパクトを放つ新生ビモータ第一弾

 イタリアにファクトリーを構えるプレミアムブランドが「ビモータ」です。日本車やドゥカティのエンジンを搭載したオリジナルマシンで知られる他、かつてはエンジンも設計したり、レースでは世界タイトルを獲得するなど多方面で活躍。マニア垂涎の名門コンストラクターと言っていいでしょう。

ビモータ「テージH2」に乗る筆者(伊丹孝裕)

 2019年、そんなビモータとカワサキの提携が発表されました。それだけでも多くのライダーや関係者を驚かせましたが、秘密裏に開発していたニューモデル「テージH2」を同時に披露。その強烈なデザインとスペックによって、世界中のファンの度肝を抜いたのです。

 テージの歴史は、1990年に発表された「テージ1D」から始まります。ハブセンターステアという独特の足まわりを備えたそれは、後に「テージ2D」、「テージ3D」へと進化。いずれのモデルにもドゥカティ(=D)のエンジンが採用され、すべてが独創的でした。

独自の車体にスーパーチャージドエンジンを組み合わせた新生ビモータ第一弾モデル「テージH2」。強烈な個性を放ちます

 最近は目立った動きを見せていませんでしたが、カワサキとのコラボレーションを機にその名が復活。独自の車体にスーパーチャージドエンジンを組み合わせ、新生ビモータ第一弾にふさわしいインパクトを放っています。

 ご覧の通り、見た目はかなり特異です。通常は後輪の位置決めを担うスイングアームをフロントにも備えて前輪を支持。ただし、後輪と同じ仕組みでは操舵ができませんから、ハンドルを左右に切るための機構をフロントホイールの中心(ハブセンター)に組み込まれているのです。

ハブセンターのメリットは?

 では、この機構はなにがいいのか? 主なメリットはふたつあり、ひとつは「低重心化によるハンドリングの軽さ」、もうひとつは「姿勢変化が少ないことによる安定性の高さ」と言えるでしょう。

ビモータ「テージH2」と身長174cmの筆者(伊丹孝裕)。独自の車体構造とされたテージH2には「低重心化によるハンドリングの軽さ」「姿勢変化が少ないことによる安定性の高さ」といったメリットがあります

 フロントカウルが大きく張り出しているため、パッと見はとても低重心には思えません。しかしながら、一般的なバイクなら高い位置に備わるステアリングヘッドも、それを支持するメインフレームも持たず、さらにはいわゆるフロントフォークもなし。つまり、重量物の多くが低いところに集約されていたり、そもそも存在しないため、車体を倒し込む時の抵抗感がほとんど感じられないというわけです。

 また、普通は減速時にフロントフォークが大きく沈み、車体が前下がりになるものです。それによってコーナリングのきっかけを作るわけですが、センターハブステアにその動きはほとんどありません。

 ブレーキを掛けても緩めても姿勢変化が極めて少なく、タイヤがピタリと路面を追従。外乱を拾っても車体は不安定な動きを見せません。なによりハードブレーキング時の減速Gは4輪並に強烈で、どこまでも突っ込める気になれるほど安定しているのです。

 それゆえ、加速や減速で車体を前後にピッチングさせ(姿勢が前下がりになったり、後ろ下がりになることです)、高いところからグラリと車体を倒す動きに慣れていると、最初はとまどうライダーも多いでしょう。巨体と言えるサイズにもかかわらず、あまりにも軽々とバンクし、自分の意志とは無関係にレール上を滑走しているように感じられるからです。

 逆に言えば、テージH2のオーナーになって慣れ親しむと、フロントフォークを持つバイクの動きはまどろっこしく、挙動が大き過ぎて不安になるかもしれません。同じ2輪でありながら、それほど別次元のハンドリングなのです。

別次元感を助長するカワサキ製スーパーチャージドエンジン

 別次元感を助長している要因はパワーユニットにもあります。なにせ、最高出力は231ps、ラムエア加圧時に至っては242psにも達する998ccのスーパーチャージドエンジンを搭載しているのですから当然です。

独自の車体構造とされたビモータ「テージH2」と筆者(伊丹孝裕)。カワサキ製スーパーチャージドエンジンと車体のマッチングにより、高い速度域でも両輪が押さえつけられたまま突き進んでいきます

 5000rpmあたりから過給圧が急激に高まり、瞬間移動さながらの加速力を披露。同仕様のエンジンを搭載するニンジャH2なら車体がよじれ、暴れ出すような領域でもテージH2はビクともせず、強固なスイングアームによって両輪が押さえつけられたまま、突き進んでいくのです。

 本当にすごいマシンです。ありとあらゆるバイクを経験し、ちょっとやそってでは刺激を感じなくなったライダーが最後に行き着く先が、このテージH2ではないでしょうか。866万8000円という価格と、世界限定250台という生産台数は望んでもやすやすと手に入るものではありませんが、だからこそ夢があります。

 ビモータとカワサキがこれから一体どんなスペシャルマシンを生み出すのか。今後の展開にも大いに期待したいところです。

【了】

【画像】超ド級の存在感を放つビモータ「テージH2」を見る(20枚)

画像ギャラリー

Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。マン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムなど、世界各国のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

最新記事