乗れば未来を実感できる!? ヤマハの大型3輪バイク「NIKEN GT」は確かにツーリング向きだった

ヤマハ独自の3輪システム(フロント2輪)であるLMWテクノロジーを採用した大型ロードスポーツバイク「NIKEN(ナイケン)」の上位モデル「NIKEN GT」で三浦半島を走り、ツーリングでの使い勝手を実際に確かめてみました。

前2輪のド迫力ボディ、唯一無二のツーリングバイク?

 ヤマハ「NIKEN GT(ナイケン・ジー・ティー)」は、ロードスポーツモデル「MT-09」の3気筒エンジンを搭載し、前2輪、後1輪で車体を傾けながら旋回するヤマハ独自の3輪システム「LMWテクノロジー」を搭載する、革新的なスポーツツーリングバイクです。実際に目の前にすると、その存在感に圧倒されます。とくにフロントのボリューム感がすごい……果たしてちゃんと乗れるのだろうか……と少し不安になります。

ボディは大柄だが、畑の中をめぐる細い道などでもクイックでシャープなハンドリングを見せてくれた

 跨がってみると、かなり腰高な印象です。それでいてハンドルが少し手前にあるポジションは、まるでトラかライオンにでも跨がっているかのようです(跨ったことはありませんが、あくまでイメージです)。

 ゆっくりと走り出すと、重そうだった車体は軽々と前進します。2輪だと苦手な低速でもフラつきがほとんどなく、とにかく安定しているのが印象的です。

 そんな「NIKEN GT」のツーリングでの使い勝手を確認すべく、筆者(野岸“ねぎ”泰之)は東京都心から神奈川県の人気ツーリングエリア、三浦半島へ向かいます。

 首都高速から横浜横須賀道路を走ると、その軽快さがさらに際立ちます。何せエンジンは排気量845ccの水冷直列3気筒を搭載する「MT-09」(2020年型)と同型ですからパワーは十分、グイグイと気持ちよく加速してくれます。

ヤマハ「NIKEN GT」

 首都高速はけっこうタイトなコーナーがあります。最初こそ前2輪を意識して慎重になっていたものの、慣れると普通の前後2輪バイクと同じようにスッとコーナーに入っていけるので、3輪のマシンであるということを忘れそうになります。これはヤマハ独自の「LMWアッカーマンジオメトリ」というテクノロジーを採用しているためで、ハンドルを切った際に内側のタイヤのほうが切れ角が大きくなり、とても自然なコーナーリングフィールを実現しているのです。

 路面の継ぎ目の鉄板などでも滑る気配は全くありません。濡れた鉄板の上でもない限りフロントからスリップダウンする可能性がほぼないので、雨の日のライディングでも大きな安心感があるでしょう。

 さらに驚いたのが橋の上でした。首都高速湾岸線で、横浜ベイブリッジの上を走った際に横風がとても強く、2輪だと瞬間的に車体が横に流されることがあるので緊張する区間ですが、「NIKEN GT」は地面に張り付くようにどっしりと安定していて、風に走行ラインを乱されることがありませんでした。この安定感と安心感は、2輪では決して得られないものだと思います。

 また、クルーズコントロールを標準で装備しているので、これを併用すると高速道路ではとても楽で安定した、疲れない走りができました。

標準装備のクルーズコントロールはハンドル左のスイッチで操作する。「+/-」ボタンで速度調整も可能

 三浦エリアに到着し、一般道を走り始めても「NIKEN GT」は軽快でした。半島を巡る県道は意外とコーナーやアップダウンが多く、ちょっとしたワインディング地帯でもあります。そんなシーンでもグイグイ、ヒラヒラと走ってくれます。

 三浦半島には畑の中を網の目のように走る細めの道も多く存在し、ところどころで分岐したり、S字状に曲がっていたりするのですが、そんな状況でも見かけに似合わず素早い切り返しが出来て、クイクイとスムーズに走れました。

 また、路面のいたるところに砂利や畑の土が堆積していて、2輪だとちょっと怖いと感じる場面でも、全く不安なく走れたことにはびっくりするとともに、感動を覚えるほどでした。

 渋滞ですり抜けをする気にはなかなかなりませんが、じつは筆者が所有する2016年式の「MT-09 TRACER」よりも全幅は狭く、直線なら意外に狭いスペースにも入っていけます。ハンドル切れ角も36度あるので、思ったよりも小回りが利く印象です。ただ、ハンドルではなくフロントパネルから左右に張り出したバックミラーはハンドルバーよりも幅が広いので注意が必要です。

 入り口にポールが立てられている駐輪場などに入る場合は、乗ったままだと前輪付近の足元が見えず、ハンドルを切ったときの前2輪の幅や位置なども気を付けたいところです。

 走っているときは全く気になりませんが、やはり車体前半部が重いので、停車時に傾けると一気に重みを感じます。その点に要注意ですね。

低速トルクもあり、ハンドル切れ角36度もあいまって、細めの坂を登りつつカーブする、なんて状況も難なくこなす

「NIKEN GT」はフロント2輪なので普通のバイクとは勝手が違いますが、扱いに慣れてしまえば違和感はほとんどありません。ツーリングでの使い勝手も、見た目の印象よりもはるかに良好で楽なもの、むしろ安心感があって疲れも少ないと感じました。

 しかし価格(消費10%税込み)は198万円、受注生産(2021年分の受注は終了)で取扱店も専門的な環境を要するなど、一般的なバイクのようにはいきませんが、最先端のテクノロジーを実感できる乗り物としても、貴重で興味深い存在と言えるでしょう。

【了】

【画像】ヤマハ「NIKEN GT」のツーリングでの使い勝手は? 詳細を見る(7枚)

画像ギャラリー

Writer: 野岸“ねぎ”泰之(ライター)

30年以上バイク雑誌等に執筆しているフリーライター。ツーリング記事を中心に、近年はWebメディアで新車インプレッションやアイテムレビューも多数執筆。バイクツーリング&アウトドアを楽しむ『HUB倶楽部』運営メンバーの1人。全都道府県をバイクで走破しており、オーストラリア、タイ、中国など海外でのツーリング経験も持つ。バイクはスペックよりも実際の使い勝手や公道での走りが気になるキャンプツーリング好き。

最新記事