暗いコーナーの先の路面を照らす心強い機能 ヤマハ「TRACER9 GT」に採用されるコーナリングランプとは?
バイクに搭載されるコーナリングランプは、暗いコーナーの先の路面を自動で照らす機能です。ツーリングでは陽が落ちたシーンなどで絶大な安心感をもたらしてくれます。コーナリングランプを採用したヤマハ「TRACER9 GT」で解説します。
とくにツーリングシーンで大活躍、ライダーの視界をサポート
今の電子制御技術の進化はスゴイ! ヤマハの「TRACER9 GT(トレーサー・ナイン・ジーティー)」(2021年型)に搭載されている「コーナリングランプ」を体験したときに感じた率直な気持ちです。なにそれ? という読者のために、この機能を少し深掘りしてみましょう。

トレーサー9GTは、2021年にモデルチェンジして登場したスポーツツアラーモデルであり、国内外で高い評価を受ける大型バイクです。2021年7月28日に日本発売となりました。
そのキャラクターは、時間をかけて遠距離を走ることや、季節を楽しみに出かけるようなスポーティかつツーリングベストなバイク、という造り込みがされています。
当然、夏より秋冬の方が日照時間は短くなります。また、山岳地ではトンネル、スノーシェイドの中を昼間に走ることもツーリングではよくあるシーン。目的地に到着するころにはすっかり陽が落ちていることもあるでしょう。そんな、暗くなった場面でライダーの視界をおおいに助けてくれるのが、コーナリングランプなのです。
なぜ、コーナリングランプ?
バイクはその特性上、曲がる時に曲がる方向に車体を傾けながら進みます。ヘッドライトの光軸は直進時(つまりバイクが直立した状態)でロービーム、ハイビームの配光が最適化されています。もちろん、コーナリング時に車体が斜めになっても進む方向に光が飛ぶような配光部分もありますが、直進時と比較すれば照度範囲が限られます。その部分を補うように照らすのが、コーナリングランプの役割なのです。

コーナリング時の状態をもう少し説明します。例えば左カーブを走る時、車体は左に傾きます。ヘッドライトが照らす明るい部分は車体が斜めになるためカーブのイン側はバイクに近い側に集まる傾向があり、手前が明るく、ライダーが見たいコーナーの先にダークスポットができてしまいます。
まさにこのダークスポーットを照らすのがコーナリングランプの仕事。コーナリング開始を察知しコーナリングランプを点灯するよう電子的に指示を出し、車体の速度や傾きに合わせてその明るさまで変化させ、必要なエリアを照らし、ライダーに安心感を与えてくれるのです。
実際に使ってみると、確かに曲がる先を照らしてくれているのだと思いますが、「いま、点いた?」というほどナチュラル。直進時からバイクを寝かせたどのタイミングで点いたのか、注意力マックスで見ていても解らないほど自然なのです。コーナリングランプのオペレーションはどうなっているのでしょうか。

その秘密は、トレーサー9GTに搭載されているIMU(Inertial Measurement Unit:イナーシャル・メジャーメント・ユニット)こと、慣性計測ユニットにあります。この装置、車体に搭載された数cm角で手のひらサイズのセンサーがモニタリングする車体情報が大きな役割を果たしているのです。
簡単に言うと、スマホを縦にしたり横にしたりしても画面が回転して見やすいように自動にしてくれる、あの機能を司るセンサーと同種のもので、ゲームのコントローラーにも搭載されるものと同じ、動き方とその強さも同時に検出します。

バイクの場合、前後方向の動き=「ピッチング」、バイクを寝かす方向の動き=「ローリング」、そしてライダーシートを真上から見てそこを中心に、バイクを時計回り、反時計回りに回そうとする「ヨー」を軸としています。
実際にバイクが傾けながら加速したり、減速したり、複合的になるピッチング、ローリング、ヨーの各方向にかかる動き(加速度)をモニタリングし、そうした情報も有効に使いながら「コーナリング」や速度によって照射範囲、照度を決定し、曲がる進行方向の先を照らすのです。

1秒間に100回以上のバイクの動きをモニタリングするIMUだけに、カーブに入り、ライダーが視線を向けた頃にはすでにコーナリングランプは必要な照度、範囲で点灯させ、カーブを終えて直進方向にバイクが向く頃には自然に消えてくれる、というものなのです。
2015年にバイク用コーナリングランプが認可されました。その初期のものは、バイクを寝かせた角度によって段階的にランプを点灯するものが多く、明確に点いた、消えた、が解りました。それがいかにもデジタルスイッチング的で、速く点いて欲しいのにワンテンポ遅れたり、消えるのも早かったりと、その点灯マップが粗めだった記憶があります。しかし、トレーサー9GTのコーナリングランプを体験すると、その進化と真価に驚きます。

安心感あるナイトランを、明るいLEDヘッドライトだけに暗部とのコントラストが強いのが気になっていたライダーは、優れたコーナリングランプを採用したバイク、という視点で次なる愛車選びをしてみるのもアリなのではないでしょうか。
Writer: 松井勉
モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。











