『Yoshimura SERT Motul』の渡辺一樹選手に8耐決勝前日に聞いた!〜小野木里奈の○○○○○日和〜

『小野木里奈の○○○○○日和』は、鈴鹿8耐に参戦した『Yoshimura SERT Motul』の渡辺一樹選手に決勝前日お話をお聞きしました。

『Yoshimura SERT Motul』の渡辺一樹選手に直前インタビュー!

 皆さん、こんにちは!小野木里奈です。今日はバイクレースで活躍する日本のトップライダー渡辺一樹選手へのインタビュー記事でございます。先日、開催された『2022 FIM世界耐久選手権“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第43回大会』(以下、鈴鹿8耐)へ出場したゼッケン1番『Yoshimura SERT Motul』の渡辺一樹選手へお話を聞くことができました!

 EWCにラスト参戦となる『Yoshimura SERT Motul』は、鈴鹿8耐でもバイクレースファンからとても注目されています。

『Yoshimura SERT Motul』から鈴鹿8耐に参戦した渡辺一樹選手
『Yoshimura SERT Motul』から鈴鹿8耐に参戦した渡辺一樹選手

 初心者目線で説明しますと、まず『Yoshimura SERT Motul』は日本4大メーカーの1つ、スズキのワークスチームです「ワークスチーム」とは、マシン(車両)を製造しているメーカー自身が運営し参戦するチーム。メーカーのファクトリー(開発工場)と直接関係があることから、「ファクトリーチーム」とも呼ばれているそうです。他に、レースマシンの製造メーカーからマシン(車両)をリース・購入し参戦する「サテライトチーム」、市販のレースマシンを自費で購入し参戦する「プライベートチーム」があります。

 その中でも『Yoshimura SERT Motul』は、日本を代表するバイクメーカーのスズキとマフラーなどバイクの部品・用品で有名なメーカー『ヨシムラ』が共に結成したという注目すべき背景があります。また、2021年に結成したばかりですが、既にFIM世界耐久ロードレース選手権(EWC)で2021年のシーズンチャンピオンを獲得しました。そして、このチームとしては鈴鹿8耐へ初参戦!

そんな注目チームに所属する日本のトップライダー渡辺一樹選手に、バイクレース初心者の私と、同じくバイク女子の高梨はづきちゃんが鈴鹿8耐の決勝前日に色々と聞いちゃいました!(高梨ちゃんの取材内容は、彼女が執筆する記事が今後更新予定なのでそちらをチェックしてみてください!)

トップライダー渡辺一樹選手に、私と高梨はづきちゃんでお話を聞きました
トップライダー渡辺一樹選手に、私と高梨はづきちゃんでお話を聞きました

高梨:まず、今年の鈴鹿8耐についてどんな思いがありますか?

渡辺さん:自分自身としては、今年の鈴鹿8耐で7回目なのですが、チームとしては結成されたばかりということとシリーズ戦では1回目となりますし、不思議な立ち位置にいる気分です。

小野木:今年はコロナ禍の影響もあり、ようやく3年ぶりに鈴鹿8耐が開催されました。この3年ぶりに出場するということについて、どう感じていますか?

渡辺さん:実は、今シーズンが開催される前から出場することは前もってほぼ決まっていました。ですが、改めて時期が近づいてくると「あれ、8耐ってどんなもんだっけ?」ってなりましたね (笑) やっぱり暑い中を走るなど、鈴鹿8耐ならではのレース展開があります。例えば「鈴鹿8耐の事前準備をどうやってたかな?」なんて思うこともありました。

小野木:やはり3年ぶりは期間が空いている感覚はありますよね。

渡辺さん:あとは、このチームとしてシリーズ戦を参加することが初めてということもあり、今までの鈴鹿8耐とは違った雰囲気も感じました。自分のメンタリティも変えていかなければならないなと思いましたね。

歴史のあるチームの一員になったことで「すごく大きいものを背負っているんだなぁ」と実感
歴史のあるチームの一員になったことで「すごく大きいものを背負っているんだなぁ」と実感

小野木:実際にこの『Yoshimura SERT Motul』というチームの一員となったことで、チームならではの特徴をご自身で感じたことはありましたか?

渡辺さん:はい、僕自身も「あぁ、そうなんだ」と一番わかりやすく感じたことがありました。あ、ちなみに『ヨシムラ』というチーム自体は今年の鈴鹿8耐の参戦が43回目なんですよ。

小野木:え!そうだったんですか!

渡辺さん:はい。実は、第1回目から全部出場している唯一のチームで、とても歴史のあるチームなんですよ。なその分、昔から応援してくれる熱いファンの方も多い。だからこそ、歴史あるチームの一員として走るということは、「すごく大きいものを背負っているんだなぁ」と実感します。特徴となるとそういうところだと思います。

小野木:歴史がすごい…それもチームの中にいるからこそ感じれたことですね。ご自身の中でこれまでと今年の鈴鹿8耐で何か変化などはありましたか?

渡辺選手:過去2年の鈴鹿8耐が無かった期間に関しては、僕自身がこの世界耐久ロードレース選手権に出場するバイクの開発ライダーをしていました。要は、バイクを速く走れるようにしたり、乗りやすくするためのセットアップをするお仕事です。今まではそのバイクで世界耐久ロードレースを走ることはありませんでした。ただ、今年は自分が開発したバイクで初めて走るということなので、「自分が作ったバイクでどれだけ走れるかな」という楽しみがあります。

開発してきたバイクで初めてEWC参戦
開発してきたバイクで初めてEWC参戦

小野木:バイクに乗って走るだけでなく、開発まで手掛けられていたんですね。

渡辺選手:今までの鈴鹿8耐では、この一戦のためだけに出場する高いモチベーションのチームしか見えていませんでした。しかし、今回に関してはEWCのシリーズ戦、さらに今のところチームのランキングがトップということもあり、鈴鹿8耐を終えたらもう次の一戦で終わってしまうのです。だからこそ、鈴鹿8耐でどれだけポイントを稼げるか、という今までと違ったプレッシャーとモチベーションがあるのも僕にとって今年の鈴鹿8耐ならではかなと思います。

小野木:そうだったんですね。あと初心者目線の質問をさせてください…!『ヨシムラ』と聞くと私自身マフラーをすぐに思い浮かべてしまうくらい印象がとても強いんです。ものすごい速度でコースを走行する最中に、『ヨシムラ』だな、とマフラーの音などで感じることはあるのでしょうか?

渡辺選手:そうですね。聞き慣れないと難しいと思いますが、ピット内で自分達がいるときに直接見えなくても、今ピット前をチームのバイクが通ったなということは音でわかりますよ。

小野木:わぁ!すごい!やっぱり認識できるんですね!私もレースを観戦している時に目の前で順番にバイクが通り過ぎる瞬間、「それぞれ音が全然違うんだなぁ」ということは初心者ながらに感じました。

渡辺選手:そうだなぁ…どんな音って言えばいいかな。比較的に高めの音ですね。そして響くようなイメージです。割とこもった音をするバイクも多いのですが、それとは対照的な音かもしれません。

ピット前をチームのバイクが通ったなということは音でわかる
ピット前をチームのバイクが通ったなということは音でわかる

小野木:いつかレース観戦中でも聞き分けられるようになってみたいです! 最後に今年の鈴鹿8耐は比較的涼しい気候のようですが、そうなるとタイヤに大きな影響を与える路面温度も例年より低くなると思うのですが、それについてはどうお考えですか?

渡辺選手:極端な言い方をすると、走っているときにタイヤの滑りだけで大体の路面温度はわかります。わざわざ測らなくてもそれを体感しながら走ることができるんです。路面が熱ければタイヤはゴムでできているので柔らかくなってきなりなど、ライダーはその瞬間に感じることができるんですよ。

小野木:きっと今年も暑い気温を予想して準備をされていたと思うのですが、たまたま涼しくなったことでやりずらさなど感じることはあるのでしょうか?

渡辺選手:そもそも鈴鹿8耐に関しては、「やりずらい」というイメージが頭の中で常にあるんです。「暑い」・「タイヤはグリップしない」・「エンジンは速く走らない」・「人間にとってしんどい」など、悪い条件が全部詰め込まれたものが鈴鹿8耐、ということが前提にあるんですよ。逆にここまで涼しいと「あれ?意外と速く走れちゃうな」と思うこともありましたね(笑)

ここまで涼しいと「あれ?意外と速く走れちゃうな」と思うこともありました
ここまで涼しいと「あれ?意外と速く走れちゃうな」と思うこともありました

小野木:なるほど、「そもそも鈴鹿8耐はやりずらいんだ」というイメージが前提にあるからこそ、特に気候が涼しくなっても振り回されずそのように感じられるのですね。すごい精神力で尊敬してしまいます…今回は、お忙しい中貴重なお時間ありがとうございました!

渡辺選手:いえいえ。鈴鹿8耐だけでなく他にもバイクレースはあるので、今後もレース観戦をたくさんの方に楽しんでいただけたら嬉しいです!ありがとうございました。

※ ※ ※

 今年の鈴鹿8耐では、渡辺一樹選手が所属する『Yoshimura SERT Motul』は、3位で表彰台を飾りました!おめでとうございます!

渡辺一樹選手が所属する『Yoshimura SERT Motul』は3位で表彰台獲得
渡辺一樹選手が所属する『Yoshimura SERT Motul』は3位で表彰台獲得

小野木 里奈 Rina Onogi Twitter

 実際にこの鈴鹿8耐を走る日本のトップライダーの生の声を聞けて、ますますバイクレースに魅力を感じてしまいました。最初はコースを眺めていた時、目の前を通り過ぎるものすごい速さのバイクとライダーに正直同じ人間が操っているとは思えず、なんだか遠い存在のような印象だったのです。

 今回お話を聞けたことでさらにレースで活躍するライダーの皆さんに親近感を感じることができましたし、トップで活躍するからこそ見える景色をシェアしていただいた感覚になり、チャンピオンがかかる次戦も『Yoshimura SERT Motul』の活躍に期待大です!

【画像】『Yoshimura SERT Motul』の渡辺一樹選手を画像で見る(10枚)

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Writer: 小野木里奈

女優。両親の影響で幼い頃にはバイクに憧れを持ち、23歳で大型バイクの免許を取得。いつか自分もお気に入りのバイクを見つけて、友達とツーリングに行くのが夢。初心者の立場で感じたことを素直に発信する。

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