インド製のスズキやホンダ、海外市場が優先されるのは誇らしいコト? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.230~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、インド製のスズキ「ジムニー」やホンダ「GB350」のベースとなったモデルなど、海外市場で人気があることは誇らしい気持ちだと言います。どういうことなのでしょうか?

日本のメーカーだけど、日本のユーザーに届くのは……

 ネオレトロな雰囲気を醸し出すホンダ「GB350」はインド製だそうです。現地でパーツを製造し、日本で組み立てているのだとか。クオリティに関する不安はありません。排気量350ccクラスの単気筒エンジンを搭載し、トコトコと響く鼓動は個性の源であり、また「急がない速さ」が感じられ、販売も好調のようです。

日本で販売されているホンダ「GB350」は、2020年にインドで「Highness(ハイネス)CB350」のモデル名で発表・販売され、その後2021年4月より日本市場に導入された
日本で販売されているホンダ「GB350」は、2020年にインドで「Highness(ハイネス)CB350」のモデル名で発表・販売され、その後2021年4月より日本市場に導入された

 最近は海外生産が流行っています。クルマの世界も同様で、海外に生産拠点を移す、もしくは日本国内への移管を計画していながらまだ実現していないモデルがたくさん存在します。その筆頭が、スズキのジムニーでしょう。

 ジムニーはスズキのクルマですから、国籍で区分するならば「日本車」となりますが、生産のほとんどはインドです。

 スズキは古くからインド市場の開拓に積極的です。2023年には中国を抜いて世界最大の人口(約14億2860万人)になり、自動車販売も386万台まで増えています。

 今後急拡大が見込まれるインド市場に早くから参入したことで、現地でのスズキのシェアは41.3%に達しています。ジムニーが日本車であることをどれだけのインド人が理解しているでしょうか。もはやインドの国民車なのです。

 スズキは現地に国営との合弁会社であるマルチスズキを設立し、インドに根ざした企業となりました。インドの生活環境を考えれば、日本の規格に当てはめるならば軽自動車になるコンパクトなボディサイズは、インドの街並みにも馴染みます。

 道路環境も悪く、悪路踏破性やタフな耐久性を誇るジムニーを現地生産するのは当然のことなのです。その先見の明が功を奏して、スズキの経営状態は盤石です。

 ジムニーは相変わらず数年の納車待ちがあるほど人気です。さらにはボディを拡大したジムニーシエラの人気も衰えを知りません。手に入れるには、注文してから数年待ちを覚悟しなければなりません。

 さらには、そのジムニーシエラのボディを前後に延長した5ドアもリリースしました。ジムニーの販売は驚くほど好調なのです。

 ですが、不思議なことがあります。人気のジムニーシエラ5ドアのローンチは、まずインドで行なわれました。そして日本市場への投入に関しては何のアナウンスもありません。国籍は日本にあるにも関わらず、優先すべきはインド市場なのです。

「日本車なのだから、まずは日本でしょ」

 僕(筆者:木下隆之)をはじめ、多くの日本人は一刻も早い日本導入を望んでいます。しかし、マルチスズキはインドの自動車メーカーなのだから、優先すべきはインド市場でしょ、と考えているのかもしれません。

 いち早くインドでローンチを果たしながら、日本導入のアナウンスも無いことから、スズキがいかにインド市場を大切にしているかが理解できます。

 じつは、僕は2022年1月にジムニーシエラ3ドアを注文しました。ですが、納車時期は見通せません。待ち焦がれている隙にインドで5ドアが発表されました。オーダーした3ドアをこれから5ドアにスイッチすることは出来ないようです。

 その点ホンダ「GB350」は、インド製でありながら日本市場に素早く投入されました。羨ましいですね。

 なぜかモヤモヤがつのりますが、日本のジムニーシエラが世界最大の市場に成長するであろうインドで人気でいてくれることもまた、ちょっと誇らしい気持ちなのです。

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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