【インタビュー】2024年MotoE電動レーサー、ドゥカティ「V21L」はいかに進化したのか
電動レーサーだからこそ、各種電子制御による「味付け」がキモ
とくにエンジンブレーキ(回生ブレーキ)は、電動バイクと内燃エンジンのバイクとの大きな違いです。本来、この味付け、調整は幅広く、重要なセッティングかつ、さらに電動バイクレースならではの面白さを生むだろうと考えられます。

しかし、MotoEでは2019年から2022年までのワンメイクマシン、エネルジカ・モーターカンパニーの「エゴ・コルサ」も、現在のドゥカティの「V21L」も、あらかじめ決められたマッピングから選択する仕様が継続しています。ただ、2024年の「V21L」においてマッピング数が9つに増えた、という点で、ライダーが選べる範囲が広がりつつあることは確かです。
また、PCプログラムが新たに投入され、ウィリーコントロールはレース後、ライダーがオフにできるようになりました。
「バイク・マネージャーと呼ばれるPCプログラムはとても強力なツールで、MotoGPでも使われています。MotoE用のものは、簡略化されたものになるのですが」
「これは、バイクのセットアップをさらに向上させます。そのライダーに最適なセットアップを見つけるために、バイクの様々な部分を変更したり調整したりすることができるんですよ。これが、私たちが提供したツールで、間違っていなければ全チームが使っているはずです」

「そして最後に、ウィリーコントロールをライダーがオフできるようにしました」と、カネさん。その言葉を聞いたとき、「ウィリーコントロールをオフに?」と疑問が浮かびました。オンにするならともかく、オフにすることで、一体どんなメリットがあるのだろうか? と。しかし、その回答を聞けば、納得でした。
「ウィリーコントロールは、ウィリーを抑えますよね。安全上の理由から、オフはできないようになっています。しかし、レースが終われば、ライダーはそれをオフにして望むようにウィリーできるというわけです。ライダーがそれを要求したんですよ。もちろん、性能が上がるわけじゃないですけどね!」
「ファンのためですね?」と問えば、「そうなんです!」と、カネさんはいたずらっぽく笑いました。
これは取るに足らない、小さな変更でしょうか? そんなことはないでしょう。優勝したライダーがさっさとクールダウンラップを終えてパルクフェルメに帰ってくるよりも、ウィリーをして歓喜の姿を見せてくれたほうが、私たちの心をつかむはずですから。

2023年から2024年にかけて、「V21L」は小さく前進しました。確かに大きなものではありませんが、そこには電動レーサーと電動バイクによるロードレースの成長が現れているようにも見えます。一体、2025年はどのような「大進化」を遂げるのだろうかと、早くも楽しみになるのです。
■FIM Enel MotoE World Championship
2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップ。2019年から2022年まではWorld Cup(ワールドカップ)として開催されていたが、2023年よりWorld Championship(世界選手権)となった。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催され、2024年シーズンは土曜日に各2レース開催で全8戦16レースが予定されている。バイクはドゥカティ「V21L」のワンメイクで、タイヤはミシュラン。2024年シーズンからエントリーするチャズ・デイビス選手を含め、9チーム18名のライダーが参戦する。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。









