やっぱりプロの技は凄い!! 新車当時のカワサキ「Z2」エンジンカバーの風合いを再現〜日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承〜Vol.29
メイド・イン・ジャパンのモーターサイクルを代表する一台として、誰もが認める存在と言えるのが、カワサキZ1/Z2シリーズです。エンジンのオーバーホールと同時に実践しておきたかったのが「見た目の美しさ」でした。ブラック仕上げのエンジンパーツは、DIYペイントによってガンコート仕上げを実践しました。アルミ地肌の輝きが美しい各種エンジンカバー類は、磨きのプロに作業依頼することにしました。
アルミ地肌は「仕上げ方」ひとつで印象が様変わり
初代空冷Z時代のエンジンカバーは、ピカピカな鏡面仕上げとは異なり、どちらかと言えば、全体的に輝きながらも「しっとり感のある仕上がり」となっていたのが特徴です。これはぼくなりの印象ですが、正直、表現が難しいと思います。

アルミ部品磨きのプロに相談すると、確かに、同じような仕上げ依頼を過去に何度も受けたことがあるそうです。磨きのプロショップとしては、鏡面仕上げがあくまで基本になるそうですが、時々、ホンダ車のようなヘアライン調の仕上げにしてほしいとのオーダーもあるそうです。
そのヘアライン系の仕上げは、通称“しっとり系仕上げ”と呼ばれています。カワサキ純正のような仕上げ方は、鏡面仕上げとしっとり系のヘアライン仕上げの中間のような感じにも見えます(個人の印象で変わってしまうものですが……)。
今回のカワサキ750RS/Z2-A後期モデルのエンジン仕上げは、そのような印象を目指した仕上げにしていただきました。
過去のレストア作業では、自分自身の手でバフ仕上げにチャレンジしたことが何度もあります。耐水ペーパーを利用した水研ぎに始まり、中目のコンパウンドで磨き、最後にメタルポリッシュで仕上げるといった作業です。
耐水ペーパーの番手は、磨く部品のキズの深さやコンディションによっても異なりますが、深い傷なら240番くらいから始め、240→320→400→600→800→1200→1500番と番手を細かくして水研ぎを進めます。具体的には、240番の耐水ペーパーで磨いた時の細かなキズを、320番の耐水ペーパーで磨き落とすような段取りで磨き進めていきます。
「耐水」の文字通り、硬質スポンジやゴム板ブロックに巻き付けた耐水ペーパーは、磨いた時に出る削れ粉をバケツの水で濯ぎながら研磨作業を繰り返し行います(磨きながら霧吹きで水を吹き付けても良いです)。こうすることで、研いでいるときに出る削れ粉が耐水ペーパーとアルミ部品表面の間で絡みつくのを洗い流しますが、これは絡みつきによって効率良く磨けなくなってしまうからです。
また、折りたたんだ耐水ペーパーを素手で握って磨いている方もいますが、力の入れ具合で平面部分が歪んでしまうこともありますので、広範囲を磨くときには、硬質スポンジやゴムブロックに耐水ペーパーをセットして磨くのが良いようです。
「職人さん」の仕事ならではの美しい仕上がり
最終仕上げでは回転する布バフに研磨材を塗布して部品を押し付けて磨き上げるのが良いですが、なかなか思い通りに磨けません。何度もトライしていくうちにやり方や磨き方を覚えることができますが、やっぱりプロに依頼した部品磨きの仕上がりとは雲泥の差が生まれます。

小物部品や一部分の磨きなら何とかなっても、例えば、初代空冷Z系エンジンのクラッチカバーのように、大型でしかも平面部品の仕上げでは、その違いが明らかに現れてしまいます。
プロの磨き職人に仕上げていただいたエンジンカバーは、まさにぼくが求めていた雰囲気!! 鏡面仕上げの上から、細かく一定のヘアラインを薄っすら重ねたような雰囲気です。文字にしてもなかなかイメージが湧きませんが、大満足の仕上がりでした。
特筆すべきは、目立った磨きムラが一切無く、パーツを組み付けたときのバランス感もさすがです!!

深いキズがあったダイナモカバーやポイントカバーは、キズ処理後に研磨工程に入り、ダイナモカバー内に組み込まれているステーターコイルやリードハーネスは、カバー内側に押し込みマスキングにて配線が飛び出さないように処理した上で作業してくださいました。
磨き職人さんのお話しでは、作業依頼の約8割が鏡面仕上げで、2割がしっとり系のヘアライン仕上げをオーダーらしいです。写真画像ではわかりにくいかも知れませんが、汚れや曇りが目立ちにくいという意味でも、ぼくはこの仕上がり具合がお気に入りです。
取材協力/根岸研磨
Writer: たぐちかつみ
フリーランスライター。バイクも作る国内自動車メーカーの生産技術開発部門を経てから大人向けのバイク専門誌「クラブマン」誌へ合流。同誌のメンテナンスコーナーが縁で、1995年春には「モト・メンテナンス」誌を創刊し編集長を務めた。同誌休刊後の2019年秋からは、内外出版社にて「モトメカニック」誌を創刊。現在も同誌編集長を務めている。







