イタリアの『ピアッジオ・ミュージアム』へ。長い歴史と魅力あふれるたくさんのベスパに触れる

多種多様なベスパに出会える

 ピアッジオ(Piaggio)は、1884年から始まったバイクと軽商用車のメーカーです。リナルド・ピアッジオが設立した当時の事業は船舶用資材の供給と鉄道で、その後、1916年に航空機製造が開始されました。第2次世界大戦後の1945年、イタリアで復興が始まった時、最初のベスパ(Vespa)のプロトタイプのプロジェクトがスタートしたそうです。

不思議なカタチの「ベスパ・アルファ」は、イタリア映画『Dick Smart 2.007』に登場した架空の乗りもの。作中ではヘリコプターのように空を飛び、海を渡り、潜水も可能だったそう
不思議なカタチの「ベスパ・アルファ」は、イタリア映画『Dick Smart 2.007』に登場した架空の乗りもの。作中ではヘリコプターのように空を飛び、海を渡り、潜水も可能だったそう

 現在、ピアッジオ・グループは「ペスパ」、「アプリリア」。「モトグッツィ」、「デルビ」、「ジレラ」といったブランドを抱えていますが、ピアッジオ・グループの中でも「ベスパ」が特別な存在であることは、ミュージアムの多くのスペースがベスパの展示で占められていることからも分かりました。

 ちなみに、仕事柄、個人的に気になるのはMotoGPに参戦している「アプリリア」です。MotoGPのライダーなどはよく「ノアーレでは……」と言及しています。ノアーレはイタリアの北部に位置する街で、アプリリア・レーシングの拠点なのです。

 後日、ノアーレにも行きましたが、ファクトリーなのでミュージアムはなく、小さな展示室のようなスペースにバイクが展示されていました。

 さて、ピアッジオ・ミュージアムに戻りましょう。ベスパは1946年に誕生しました。敗戦後に製造が開始されたベスパの目的は「シンプル、低コスト、誰もが利用できる車両によって、国全体の移動を助けること」だったそうです。

 ベスパには、それまでにない機能が備わっていました。「フラットフロア」もそのひとつで、スカートを履いた女性でも乗り降りが楽にできるデザインになっていました。また、当時のベスパには「スペアタイヤ」が備わっていたそうです。

 そしてもっとも特徴的なのが「スチール製モノコックフレーム」です。1枚のスチール板をプレスして車体を形成するもので、ピアッジオが持っていた航空工学の専門知識と設備が生かされたということです。それまで航空機を製造していたピアッジオだからベスパが生まれた、と言えるのでしょう。

 このように、ミュージアムではピアッジオにまつわる、そしてベスパにまつわる歴史がしっかりとつづられています。

 たくさんのベスパが展示されているスペースでは、あまりにも様々なベスパが存在したことと、その挑戦の歴史に圧倒されました。

 展示を堪能しきってミュージアムを出るころ、団体客がやってきました。歳は50~60代(に見える)くらいの男性たちです。わいわいとミュージアムに入って行く様子を横目に外へ出ると、たくさんのベスパが停まっていました。なるほど、彼らはベスパ仲間で、ベスパに乗ってミュージアムのベスパを見に来たのでしょう。

 それに気付いて、思わずニンマリしてしまいました。わたしもバイク乗りの1人です。好きなバイクで好きなバイクを見に来るなんて、とても素敵だと思ったのです。

 停まっていたベスパは、それぞれのライダーのキャラクターを表すように、少しずつ違う表情をしていました。

 フィレンツェに観光に行くことがあったら、ぜひピアッジオ・ミュージアムのことも思い出してください。バイク好きなら、行って後悔することはまずないと思いますよ!

【画像】映画の中では空も飛ぶ!? 長い歴史の中で登場したトンデモVespaがいっぱい!!(24枚)

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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