「ショート」とか「ロング」とか……エンジンのボア・ストローク比とは? どんな違いがある?
バイクのスペック表で目にする「ボア×ストローク」は、ピストンの直径とシリンダー内で上下する距離を表しています。じつはこのボアとストロークの「比率」が、エンジンの特性やバイクの乗り味に、けっこう影響しています。
「ボア・ストローク」比で、エンジンの性格が決まる!?
バイクのスペック表のエンジンの欄には、たいてい「ボア×ストローク」が表記されています。ボアはピストンの直径、ストロークはシリンダー内でピストンが上下する距離を表しており、これらを計算すれば、エンジンの排気量がわかります……が、そもそも排気量はエンジンスペックの項目にシッカリ明記されています。そこで今回は、ボアとストロークの「比率」に注目してみます。

ボア・ストローク比が「1」より小さいと「ショートストローク」、「1」になるエンジンを「スクエアストローク」、そして「1」より大きければ「ロングストローク」と呼び分けています。
ちなみに図は単気筒ですが、2気筒や4気筒など多気筒エンジンの場合でも、それぞれのエンジンの1気筒のボアとストロークの比率で表しています。
じつは現行バイクの7割くらいが「ショートストローク」で、排気量250ccを超える国産のスポーツバイクなら、9割近くがこのタイプになります。
バイクのエンジンは、ショートストロークが主流
エンジンを高回転まで回しやすく、高出力を得られるのがメリットなので、スーパースポーツ系はもちろんネイキッドやオフロード車も、高いスポーツ性を狙ったバイクはショートストロークのエンジンが多いと言えます。

また、昔のショートストロークは低回転時にトルクを出しにくく、燃費が悪いと言われていました。しかし現在はFI(電子制御式燃料噴射)や可変バルブタイミングなど様々な技術進化によって、かつてのショートストロークのデメリットはかなりの部分がクリアされています。
ちなみに、ゆったり走るイメージのあるクルーザーのホンダ「レブル250」も、じつはショートストロークです。これはエンジンのベースがスポーツ車の「CBR250R」だったのも関係しているでしょう。
また、惜しまれながらも姿を消したヤマハ「SR400」は、空冷単気筒エンジンがドコドコ回るイメージがありますが、じつはショートストロークです。こちらも、軽く高回転まで吹け上がるオフロード車の「XT500」のエンジンがベースだからでしょう。
実用性の高いロングストローク
ロングストローク型は、まさにショートストロークの対局にあり、低回転でしっかりトルクを出し、燃費が良くてノッキングもしにくいなど、実用面での性能や扱いやすさを追求しています。そのため原付2種のスクーターの多くや、「スーパーカブ」から派生したホンダの横型エンジン(現行車)はすべてロングストロークです。

またホンダの「GB350」シリーズもロングストロークですが、こちらはインド発祥という部分が大きいかもしれません(タンデムや3人乗り、荷物の大量積載に対応したトルク重視)。
他にもヤマハ「MT-125」「YZF-R125」「XSR125」などもロングストロークですが、元々がアジア圏を主な市場とした輸出モデルであり、実用性能を重視したためと思われます。
また国産の大排気量モデルでは、カワサキ「メグロK3」および「W800」がロングストロークですが、これはクラシカルな乗り味を追求したからではないでしょうか。
スポーツバイクで主流のショートストロークより、ロングストロークは高回転・高出力が苦手と言えるかもしれませんが、あくまで比較した場合の話であり、一般道を走る上では何ら問題ありません。
ゆったりした乗り味や燃費で選択するのも大いにアリでしょう。
完全なスクエアストロークは極少
ボアとストロークが同じ長さの「スクエアストローク」は、まさにショートストロークとロングストロークの中間的な特性になり、総合的な性能を追求したタイプです……が、現行バイクでは最も少なく、ホンダの「ゴールドウイング」が採用するのみです。
とはいえ完全にボアとストロークが同寸法でなくても、たとえばホンダ「レブル500」のボア×ストロークは67.0×66.8mmのショートストロークですが、かなりスクエアストロークに近く、こういったストローク比のバイクは他にも意外とたくさん存在します(小~中排気量に多い)。
ちなみに、クルマ(一般的な乗用車)のエンジンも、スクエアストロークに近似したボアストローク比が多いと言えます。

他にも、旧車のカワサキ「900Super4」(通称:Z1)は、ボア×ストロークが66.0×66.0mmの完全なスクエアストロークです。ただしこちらは後に追従するであろうライバル車に対抗するため、ボアを広げて排気量を拡大できるように設定したと言われています。そのため、後に登場した「Z1000」等のモデルはすべてショートストロークになります。
「化」が付いたら意味が変わる??
ストローク比に近い言葉として、バイクがモデルチェンジした時などの車両解説で「ショートストローク化され~」といった表現を目にすることがあります。
少々ややこしいですが、これは「従来ロングストロークだったエンジンが、新型ではショートストロークに変わった」という意味ではなく「元のストロークよりも短くなったこと」を意味します。
「ロングストローク化され~」という場合も同様で「元のストロークより長くなったこと」なので、「化」が付くときは要注意です。
とはいえショートストローク化はより高回転化を狙ったり、ロングストローク化はトルクや燃費向上を目指すなど、エンジン性能を高めたり乗り味を際立たせるためなので、言葉の意味は異なっても方向性としては近いのかもしれません。
もちろんエンジンには様々な排気量や気筒数、並列やV型などレイアウトの違いがあり、ボアストローク比だけでエンジン特性が決まるわけではありません。
しかしバイクの使い方や方向性に相応に大きく影響する要素なので、バイクの購入時などにはスペック表で確認すると良いでしょう。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。











