世界で唯一の現存車両!? 1978年式「無限 ME250R」が全日本モトクロス選手権開幕戦でマーシャルバイクとして走る
2025年も開幕となった全日本モトクロス選手権シリーズですが、4月13日(日)の開幕戦では、会場となった熊本県の「HSR九州」で、1台のビンテージモトクロッサーがマーシャルバイクとして走行し、注目を集めました。1978年式の「無限」オリジナル「ME250R」です。
往年のマシンを復元、現在のモトクロスコースを走る
2025年4月13日日曜日、今年も全日本モトクロス選手権シリーズが、熊本県の「HSR九州」で開幕しました。

好天に恵まれたこの日、コースにひときわ甲高い2サイクルエンジンの音を響かせていたのが、1978年式の「無限(MUGEN)」オリジナル市販モトクロッサー「ME250R」です。
パドックではマシンの「レーシング」(暖機をしたり、キャブレターやエンジンの調子をみたりするために、ニュートラルのままスロットルを開け閉めすること)をする姿があり、まるでこれからレースに出場するかのようでした。
しかし、そのゼッケンプレートにはナンバー(数字)ではなく「M」の文字が貼られていました。これは「マーシャルバイク」(コースの下見やスタート後の安全確認を行う役割)を示していて、レストアを手がけた佐々木達哉さんがライディングを務めました。
「無限」と言えば、バイクではマン島TTレースに参戦した電動バイク「神電」、4輪ではF1をはじめとする各種フォーミュラカーなどのレース活動で知られるレースコンストラクターですが、実は1976年から1992年にかけて全日本モトクロス選手権、さらには世界モトクロス選手権にも参戦していました。
この「ME250R」も、無限のオリジナルマシンとして選手権レースに参戦していただけでなく、市販レーサーとして国内外で販売されていました。
1970年代に無限のワークスライダーとして活躍したのが、的場平選手です。
この「ME250R」は当時、的場選手が実際にレースで使用していたマシンそのもので、後に個人所有になったものだそうです。
一説によれば、1978年の全日本モトクロス選手権シリーズ鈴鹿大会で優勝したマシンの可能性もあるとのこと。

2014年に知人の納屋から発掘──いや、発見された際は、長年にわたる保管による腐食が進んでおり、スクラップ寸前のボロボロな状態だったそうです。
この「ME250R」を託された佐々木達哉さんは、もともとモトクロスの国際A級ライダーとして選手権に参戦していた経験を持ちますが、マシン作りやレストアに深い興味を持ち、現在では20台以上のマシンを所有しているとのこと。
「ME250R」に装着されていた部品は全てバラバラに分解してレストアされました。当時の姿を残すことを目指してのレストアなので、調達できない部品は型から起こして製作したそうです。
ただし、タイヤだけは当時のものをそのまま使うわけにはいかないので、入手当時にぎりぎり販売されていた当時の雰囲気があるパターンのピレリタイヤを入手して使っているそうです。
エンジンの中身を分解していく中で、シリンダーのポート研磨の職人技には驚いたと言います。
丁寧にレストア作業を続け、2015年には新車状態へと復元。そして「動態保存」、つまり走行できる状態で保存しているとのこと。
今回のマーシャルバイクとしての走行について佐々木さんは、「以前、名阪スポーツランドで開催された全日本選手権でマーシャルの方がビンテージマシンを使っているのを見て、自分もHSR九州大会を盛り上げたいとの思いから主催者に掛け合って実現しました」と話してくれました。
無限の「ME250R」は現存している車両の情報がほとんど無く、おそらく世界で唯一の現存車両と思われます。
「機会があれば、当時の音を伝えられるこのマシンをまたマーシャルバイクとしてコースを走らせたい」と、佐々木さんは話していました。
■無限 ME250R(1978年式)主要諸元
エンジン:空冷2サイクル単気筒ピストンリードバルブ(アルミ製メッキシリンダー採用)
排気量:247cc
変速機:5速リターン
最高出力:37ps以上
車両重量:約105kg
点火方式:CDI点火
Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)
モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。
















