“立ち乗り”イメージの50cc原付スクーター? ホンダ「バイト」はシートの高さも調整できるって!?
2002年に発売されたホンダの50cc原付スクーター「Bite(バイト)」は、若者の新しいニーズに向けたカジュアルでスタリッシュなスクーターです。工具なしでシート高を7段階に変更できる新機構を採用していました。
電動キックボードの原付スクーター版?
1980年代に沸騰した日本のバイクブームですが、1990年代は逆に10代から20代の若者のバイク離れが進む時期でした。一方で、東京の渋谷・原宿などを中心にストリートカルチャーの影響を大きく受けたカスタムバイクシーンが盛り上がっていました。

ホンダはこの時期に、若者とそのバイク文化を研究して魅力的な製品を開発する、若い研究者で構成された開発チーム「Nプロジェクト」を立ち上げます。
その流れの中で、若者が気軽に街に集まり、コミニケーションするシーンをイメージして開発された「Bite(バイト)」が2002年に誕生しました。
スリムで個性的なスタイリングに加え、乗る人の体格やその日の気分に合わせてシート高を7段階に変更できる、アジャスタブルシートを採用しています。
当時は新感覚の乗り味と表現されていましたが、開発段階のイメージスケッチにはシートに座るのではなく、ほぼ立った状態でシートは腰部後方を支えるようになっている絵もありました。またフットボードに片足で立っているビジュアルもあります。
それらは現代の目線で見ると、いま流行っている電動キックボードそのもので、実車の「バイト」に目を移すと、2002年の原宿を立ち乗りで走っていく姿が見えてくるようです。
アジャスタブルシートは、シート高730mmから840mmまでの間で7段階に調整が可能でした。しかも工具が必要なく、赤いストッパーピンを抜き差しする簡単な操作だけで調整できました。
家を出る前に、あるいは出先でも手軽にライディングポジションを選ぶことができます(もちろんMotoGPマシンのように走行中に調整することはできません)。
細身のヘッドパイプ部分から立ち上がる、マウンテンバイク風のクロームメッキのハンドルと丸いヘッドライトのフロント部分に対して、自転車のサドル風シートとリアキャリアが他にはない独特のスタイリングをカタチ作ります。
写真の車体色はイメージカラーのイエローですが、ボディのプラスチック部以外はほぼ黒とクロームメッキで構成されており、クールに引き締まった印象です。

また、車体前部には同時期にスクーター用に開発された高剛性のアルミダイキャストフレームを使用しています。後部にはアジャスタブルシートを支える太いスチールパイプが印象的に使用され、このパイプは視覚的にそのままリアキャリアへ繋がり、マフラーも含めて後方に跳ね上るように見えます。
「バイト」が発売された2000年頃は、バイクの排気ガス規制が厳しくなり始めた時期で、ホンダは原付スクーターのエンジンを空冷2ストロークから環境対応型の水冷4ストロークへと切り替え始めた時期でした。
「バイト」のエンジンもこの新世代水冷4ストローク単気筒SOHCエンジンを使用しています。このエンジンユニットには冷却ファン付きのラジエターが一体化されており、スリムなスタイリングを邪魔することなく新世代エンジンを採用することを可能としています。
発売後はオシャレな女性ユーザーにも受け入れられ、また多くのカスタム車が渋谷・原宿のような街中を彩りました。
ホンダ「バイト」(2002年型)の当時の販売価格は17万9000円です。
■ホンダ「Bite」(2002年型)主要諸元
エンジン種類:水冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ
総排気量:49cc
最高出力:4.9PS/8000rpm
最大トルク:0.46kg-m/7000rpm
全長×全幅×全高:1715×665×1050mm
シート高:785mm(中央値)
始動方式:セルフ/キック併用
燃料タンク容量:5.0L
車両重量:77kg
フレーム形式:アンダーボーン
タイヤサイズ(前後):90/90-10 50J
【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員







