サーキットを目指した究極の「CB」!? ワイン・ガードナーが駆り初優勝を獲得したホンダ「CB1100R」とは
盛り上がっていくバイクの市販車レースの排気量が1000ccを超えた時代、ホンダは「CB900F」では太刀打ちできなくなり究極の空冷4気筒マシン「CB1100R」を開発しました。オーストラリアのリッターバイク戦線に投入されて優勝を獲得し、3年間生産された特別なバイクです。
市販車レースで勝つために開発・量産された伝説のバイク
バイクのロードレースと言えば、世界最高峰のMotoGPが有名ですが、そこで使用されるマシンはMotoGP専用車です。例えばホンダなら「RC213V」というMotoGPのために造られた究極の速さを持ったバイクで出場しています。

一方、鈴鹿8時間耐久ロードレース(以下、鈴鹿8耐)では公道用市販車の「CBR1000RR-R」などをベースにレース用にチューンナップしたバイクで参加可能です。
このように古今東西のレースには車両規則があり、参加者がお互いに公平にレースできるようルールが定められています。
その市販車縛りのレースに向けて、メーカーがスペシャルマシンを生産したらどうなるでしょうか? 特別な速さがあるならレース参加者はこぞって購入するでしょうし、公道しか走らないライダーだって欲しがる人はたくさんいるはずです。
アマチュアレーサーが参加しやすかった市販車のレースは、1969年に登場したホンダ「CB750FOUR」により世界中で盛り上がりを見せます。この流れに乗ってライバルメーカーからも大型の4気筒スポーツバイクが次々と登場し、ホンダも負けじと新型の「CB900F」と「CB750F」を市場に投下しました。
「レースで勝つとバイクが売れる」という好循環により、レースが販売戦争の最前線という状況になりました。
やがてライバルメーカーからは1000ccを超える排気量のバイクが登場し、ホンダの「CB900F」では太刀打ちできない状況となっていました。
ヨーロッパやオセアニアの市場からも市販車レースで勝てる性能を持ったバイクを求める声が届くなか、ホンダは「CB」シリーズの性能を訴求するために新型車を開発し、当時、注目度の高いオーストラリアのカストロール6時間耐久レースへの出場を計画します。
新型車のベースは「CB900F」でしたが、鈴鹿8耐で3位に入賞した本田技研の社内チームのレース用マシンのフレーム形状を流用しました。エンジンは排気量を1062ccまで拡大し、燃料タンクは耐久レースで給油回数が少なくて済むように容量26Lとして、軽量化のためにアルミで製作しました。
レースへ向けて開発期間が半年しかない突貫作業で「CB1100R」は完成しますが、市販車のレースのため、オーストラリアのレースに出るにはたくさん生産して現地で販売しなくてはいけません。
写真の「CB1100R」はハーフカウリングを装備していますが、オーストラリアに輸出された最初のロットは生産が追いつかず、カウリングの無いネイキットモデルとして輸出されました。しかし当時カウリングを装備しているバイクは少数で、カストロール6時間耐久に出場しているバイクもほとんどネイキットでした。
レース当日は雨となり、激しい走りで「CB1100R」を優勝のチェッカーに導いたのは当時21歳の若きワイン・ガードナー選手でした。ガードナー選手は7年後にはホンダ「NSR500」を駆り世界GPチャンピオンになっています。

1981年モデル(1980年に輸出開始)の初期型「CB1100R」はレースに出場するためのベース車として開発されたので、1人乗りのシングルシート仕様で1050台の限定生産でした。
一方では公道走行での快適さも考慮したハーフカウリングを装備し、ハンドルの高さを調整できる機構も採用していました。結果的にレースに出場しないサーキット走行やワインディングロードを楽しむプレミアムな1台として人気を博し、市場から継続生産を求める声が上がります。
毎年モデルチェンジで性能を向上させながら、「CB1100R」は3年間生産されました。「空冷4気筒CB」の究極の到達点とも言えますが、それはちょうどホンダのスポーツ車のラインナップが水冷V型4気筒の「VF」シリーズへと切り替わり、市販車レースも750ccクラスへと変わって行く時代でした。
当時の日本では、排気量750cc以上のバイク販売を自主規制していたため「CB1100R」は国内では販売されていません。それもあってかファンにとっては伝説的なバイクとして愛され続け、白赤のカラーリングは後の「CB1300 SUPERFOUR」などにも受け継がれています。
■ホンダ「CB1100R」(1981年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク並列4気筒DOHC16バルブ(1気筒あたり4バルブ)
総排気量:1062cc
最高出力:105PS/9000rpm
車両重量:235kg(乾燥)
【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員












