洒落たスタイルの「カフェレーサー」 元々は不良ライダーのコトだった!? カッコイイのに意外と短命が多いのは謎
個性派ライダーに人気の「カフェレーサー」ですが、なんとなくスタイルのイメージは沸くものの、何か定義はあるのでしょうか? そもそもその呼び名は、バイクのカテゴリーではなかったのです。
元々はイギリスの暴走族のコトだった!?
「カフェレーサー」と聞くと、旧車風のレトロなスタイルだけれど、低いハンドルやシングル(風)のシートで、ライディングポジションが前傾のスポーティなバイク……というイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。

いまではそんな洒落たバイクのジャンル名となっているカフェレーサーですが、そもそもは1950~1960年代頃の英国で、24時間営業のカフェ(有名なのが「ACE CAFE LONDON」)に集うライダーたちを指す言葉でした。
当時の英国は経済的な不況により、職にあぶれた若者も多く、彼らは社会に不満を抱えていました。そんな時代に反発するように、彼らはバイク(当時はクルマよりバイクの方がかなり安価で手に入れやすかった)で夜な夜な集まり、公道レースに興じたりもしていました。
もともと英国には「タンナップボーイズ(時速100マイル=160km/hで走る若者)」という、日本で言うところの暴走族というか、走りに徹した「カミナリ族」のような呼び名がありました。
また当時アメリカで「The Wild One」(邦題:乱暴者)という映画が大流行したため、主人公のマーロン・ブラントのファッションを取り入れた、革ジャンにエンジニアブーツ、リーゼントの髪形で決めたタンナップボーイズたちが続出。そのファッションや音楽嗜好から、彼らは「ロッカーズ」と呼ばれるようになりました。
ロッカーズたちは速さを競うため、愛車(英国なのでトライアンフやBSA、ノートンなどが主流)を低いセパレートハンドルや後退したステップ、シングルシートやカウリングなどレーシングパーツでカスタムしました。
こうしてカフェに集い、公道をレースまがいに飛ばすロッカーズたちは「カフェレーサー」と呼ばれるようになり、彼らのカスタムされたバイクも同様にカフェレーサーと呼ばれるようになりました。
ファッションやバイクがカッコいいので、現代ではだいぶ美化されている部分もありますが、当時は危険で社会的に迷惑な存在だったため、カフェレーサーは「カフェに集まってレーサーを気取る輩」と揶揄する意味もあったようです。
カフェレーサースタイルをバイクメーカーが提唱
呼び名の由来はともあれ、バイクカスタムとしてのカフェレーサーが高い人気を得たのは事実です。そこで1970年代にはメーカー自身がカフェレーサー手法でバイクを作り、販売しました。

日本メーカーで有名なのが、ホンダが1974年に発売した「ドリームCB400FOUR」です。セパレートハンドルではありませんが、当時のスポーツバイクとしてはかなり低めのコンチハンドルを装備し、ステップ位置も車体のベースとなった「CB350FOUR」より後退し、なにより4in1の集合マフラーが目を引きました。
ホンダは翌1975年に、同様の集合マフラーを装備する「ドリームCB750FOUR-II」も発売しています。
カワサキは1978年に、輸出モデルとしてシャープな角型のデザインと国産初のビキニカウルを装備した「Z1-R」を発売します。
ヤマハは1976年に当時大人気だった「GT50ミニトレ」をベースに、角型のロングタンクにゼッケンプレート風シートカウルのミニカフェレーサー「GR50」を発売しますが、これは当時の2ストロークスポーツ「RD」シリーズや、4ストロークの「GX」シリーズなどのデザインを汲んだスタイルでした。
というワケで、当時の日本メーカーは「角型&コンチハンドル」がカフェレーサーの定義だったように思われます。
たびたびトレンドがやってくる
1980年代以降も、日本メーカーはたびたびカフェレーサー系のバイクをリリースします。
ホンダが1983年末に発売した「GB250クラブマン」は、オプションでシングルシートカウルを用意していました。さらに1985年にはロケットカウル&シングルシート仕様の「GB400TT MkII」が登場します。
ホンダはどちらもカフェレーサーとは謳っていませんが、なんとなくクラシックスポーツ=カフェレーサーの流れがあったように感じます。
またカスタムシーンでは、ヤマハの「SR400/500」(1978年~)がハズせません。シンプルでクラシカルな単気筒スポーツをベースに、多くのビルダーをはじめ個人でもカフェレーサー系カスタムを施すSRは、現在も高い人気を誇っています。
その後、メーカー系カフェレーサーはしばらく登場しませんでしたが、近年になってトレンドが復活したようです。
ヤマハは2015年にビッグネイキッドの「XJR1300」ベースの「XJR1300C」と、Vツインスポーツの「BOLT」ベースの「BOLT C-SPEC」を発売しており、車名の「C」はカフェレーサーを意味しています。

スズキも2018年に、Vツインスポーツの「SV650」をベースに「スポーティさとカフェレーサースタイルの融合」と銘打ったセパレートハンドル&ビキニカウルの「SV650X」を発売しました。
カワサキは2019年にトラディショナルな「W800」がベースの「W800 CAFE」と、「Z900RS CAFE」をリリースします。
そしてホンダが2022年に発売したロケットカウル&セパハンの「ホーク11」も、まさにカフェレーサーと言えるのではないでしょうか。
カフェレーサーは、意外と短命!?
もちろん海外メーカーもカフェレーサーを輩出しています。本場英国のトライアンフは2005年に「スラクストン」を発売し、排気量アップやモデルチェンジを重ね、2024年のファイナルエディションまで生産を続けました。
イタリアのモトグッツィも、カフェスタイルの「V7レーサー」を2000年代末から10年余り生産。ドゥカティは2019年に「スクランブラー」をベースに「Scrambler Cafe Racer」をリリースしています。
そしてBMWが発売したばかりの「R 12 S」は、かつてのメーカーメイドのカフェレーサーである「R 90 S」をオマージュし、そのイメージを見事に再現しています。
さて、これらスタイリッシュなカフェレーサーですが、意外と短命なモデルが多いような気がします。日本メーカーで販売中のモデルはカワサキ「Z900RS CAFE」とスズキ「SV650X」のみで、モデルスパンが長い海外メーカーでもすでに生産終了している車両が多いようです。とくに不人気だから生産終了というワケではなさそうですが……。
したがって、自分の好みに合ったカフェレーサーを探して手に入れるには中古車サイト検索が得策ですが、かつてのように、カスタムで作り上げるのも楽しいかもしれません(相応にハードルは高そうですが……)。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。





















