サンマリノGPは外出多し!? 理由はエミリア・ロマーニャ名物「ピアディーナ」【MotoGPの現場から No.9】
MotoGPのパドックで、HJCヘルメットのレーシングサービスを行なう長谷川朝弘さんによる、現場のリアルです。ヘルメットのレーシングサービスやMotoGPのパドック、そしてMotoGPとともに移動する旅での出会いなど、30年以上にわたってMotoGPに関わり続ける長谷川さんの視点でお届けします。今回は、第16戦サンマリノGPで、長谷川さんがよく行くという「ピアディーナ」のお店について伺いました。
長年通う「ピアディーナ」屋さん。2軒並びのどちらに行くか
みなさん、こんにちは。MotoGPのパドックでHJCヘルメットのレーシングサービスを担当している、トミーハセガワ(筆者:長谷川朝弘)です。今回は、サンマリノGP(イタリア)が開催されるミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリの近くの街にある、「ピアディーナ(Piadina)」屋さんについてお話ししたいと思います。

このお店を知ったのは、ロベルト・ロカテリ(現ファンティック・レーシングのチームマネージャー。2000年125ccクラスチャンピオン)がまだ走っていた頃のことだったと思います。
当時、ミサノは多分まだMotoGP(WGP)が開催されていなかったと思うので、スーパーバイク(※スーパーバイク世界選手権)で来たのかもしれません
【※編集部注:ミサノでWGPあるいはMotoGPが開催されたのは、1980年、1982年、1984年、1985年~1987年、1991年、1993年。2007年にカレンダーに復活した】
ロカテリの元パートナーに、「ここに来たらピアディーナがうまいから食っていきなよ」と言われたんです。ピアディーナって、日本でもそんなに有名じゃないと思うんですけど、僕も当時はピアディーナを知りませんでした。
「トルティーヤみたいなのに挟んで食べるものだよ。ミサノ・アドリアティコの海沿いにあるから食べていきなよ、おいしいから。お店は2軒があるんだけど、海を見て右側の方の店に行きなさいね。右のお店のほうがおいしいよ」と、彼女に言われて行ってみたんです。
確かにね、(海を見て)右のお店は行列になるんですよ。昼間もまあまあ入っていますが、特に夜ですね。面倒ではあったけれど、それでも並んでそのお店で食べていました。
ピアディーナってどんなものかというと、トルティーヤやブリトーのようなフラットブレッドに具材を挟んで食べる料理です。スーパーマーケットに行くと、冷蔵や常温で、かなりの種類のピアディーナの生地が売られています。ピアディーナを扱う店も多いです。それは、このエミリア・ロマーニャ地方だけですね。
【※編集部注:ピアディーナは、エミリア・ロマーニャ州で古くから食べられてきたそうです】
「サルシッチャ」(イタリアの生ソーセージ)を潰して挟んだり、水牛のモッツァレラを入れたり。夏になるとリミニ空港は結構ドイツ便があるんですよね。だから、このあたりはドイツ人の観光客が多いんです。ドイツ人のためにドイツのソーセージがあったりします。茹でた小エビやマヨネーズ、レタスを入れるものもある。メニューは無限ですね。
とにかく、何を挟んでもいいんですよ。お店にはメニューがたくさんあるんですが、メニューから「これをちょうだい」とオーダーしてもいい。
僕はサルシッチャが好きで、それと水牛のモッツァレラを入れてルッコラをたっぷり入れてもらいます。そういうこともできるんです。もちろん、その分の料金はかかりますけどね。確か、最初に食べたピアディーナも、サルシッチャだったと思います。
ピザ屋もこんな感じで、すごくメニューがあります。2~3ページにわたっていろいろな種類のピザがあるもんだから、選ぶのも大変ですよね。もちろん、マリナーラとかマルゲリータとか定番のピザはありますけどね。
好みがあれば「これ」って言えばいいんだけど……お店によってそれぞれに名前をつけていたりしますしね。全部が全部一緒じゃないんです! ピザ屋もピアリーナ屋も、そんなにかしこまらずに食べられるのがいいですね。イタリアのピザ屋さんではどのお店でも「これを乗せて」と言えば、メニューになくても作ってくれますよ。
それは、イタリアに来て少し経ってから分かったことですね。自分の好きでいいんだな、メニューを見なくたっていいや、って。
自家製生地は、ひと味違う
ミサノ・サーキット周りのコーヒーショップのようなお店で売られているピアディーナは、多分、生地はどこかで買ったものじゃないかなと思います。でも、僕が通っている海沿いにある2軒は、生地を店内で作っています。

じつは、何年か(右のお店に)行っていたんですが、すごく並んでいた時があって、並ぶのが嫌だったし、レースウイーク中に来ていて仕事もあるから、早く食べて帰りたいなと思って、(横並びの左のお店に)チャレンジすることにしたんです。
そうしたら、「うっ!」と驚いちゃうぐらい味が違ったんです! 生地が違うんですよ。美味しいんですね。
レシピを調べてみると、生地にはラードを入れているらしいんですけどね。人気のある方のお店の生地はドライです。しっとりしていない。食べるとボロボロと生地が落ちてくるんです。
【※編集部注:オリーブオイルまたはエクストラバージンオイルというレシピもあります】
これは好みになると思いますが、僕はしっとりしている左のお店の生地が気に入っちゃったんですね。試しに両方のお店で食べましたが「やっぱり違うな」と思いました。
2軒ともに言えるのですが、生地に層を作っているんです。しっとりしている、していない、の差はあれど、だからポロポロ落ちちゃうんですね。他のピアディーナ屋さんで食べたこともありますが、この2軒のような生地の層はなかったです。そこは、自家製ではなくて買った生地だったのかもしれません。あの2軒は生地が特別ですね。
じつは、このピアディーナ屋さんの近くに海の家があるんです。ピエール・フランチェスコ・キリという、WGPやスーパーバイク世界選手権で活躍したイタリア人ライダーが経営しています。キリさん、今では海の家のおやじさんをやっているんですよ。「いらっしゃい、いらっしゃい」ってね。
挨拶しに行って、キリさんに聞いてみたんです。「キリさん、この2つのピアディーナ屋さん、どっちがいいと思う?」って。
そうしたら、キリさんは「左のお店だよ。右のお店は並んでいるけれど、実は左のお店の方がうまいんだよ」と言うんです。
そのとき、海の家で働いているスタッフが7~8人いたかな。その人たちにも聞いたら、「そうそう、人気がない方がうまいんだよ」と言っていました。
観光客は人が並んでいる右のお店に行くんだけど、地元の人や味を知っている人は、左の方に行くんだそうです。インターネットやSNSでしょうね。観光地ですから。でも、味ばっかりは好みですからね。
ミサノは街が近くて出やすいというのもあって、いつものGPのレースウイークよりもサーキットの外に出ますね。いつもは火曜日にサーキットに入ったら、ほとんど出ないんですよ。
ここに来たら、1回は必ずピアディーナを食べます。これがレストランだったら出てくるまでに時間がかかるので行かないけれど、ピアディーナは美味しいし、手軽に食べられますからね!
■HJC HELMETS
韓国のヘルメットメーカー「HJC」は、2025年シーズンは3名のMotoGPライダー、ファビオ・クアルタラロ、ブラッド・ビンダー、ミゲール・オリベイラをサポート。彼らが使用するのは市販製品である「RPHA1」(※モデル名は販売国によって異なる)
(まとめ:伊藤英里)
Writer: 長谷川朝弘
2001年からシーズンを通してMotoGPを転々とし、パドックでヘルメットのレーシングサービスに携わる。2016年、HJCのレーシングサービス担当者に。最大限かつ最も重要なサポートとして「視界をクリアに保つこと」をポリシーに、日々試行錯誤を続けている。








