【首都高】転落防止基準からバイクを除外し続けて50余年 ライダーの落下事故なぜ起きる
首都高速を利用するバイクの転落事故が止まりません。2025年12月に起きた事故では、ライダーは幸い真下にある運河に落下することで一命をとりとめましたが、2026年1月に起きた事故では死亡しています。2010年代に連続した落下事故で充分な対策を施したはずですが、再び転落事故が起きるようになってしまいました。
乗用車にはじかれたライダーを受け止められない、古い道路構造基準
2025年12月11日19時頃、首都高速都心環状線江戸橋JCT付近で、乗用車とバイクの接触事故が発生しました。片側2車線の自動車専用道で、追越車線(右車線)を走っていた乗用車が、本線(左車線)を走っていたバイクの進路に入って接触し、60代のライダーが高速道路上から約15m下の日本橋川に落下しました。
当初のニュースでは、5階建てのビルに相当する高さから落ちたものの、ライダーは自力で岸まで泳いで軽傷だったことが話題になりました。
首都高速の高架橋から人が落ちる事故はけして珍しくはなく、それがライダーの運転ミスとは言い難いものなのです。
この事故から1カ月もたたない2026年1月9日にも、大型トラックとバイクによる多重事故が発生しました。朝8時頃のことです。
神奈川県横浜市の首都高速狩場線の上りで、中型トラックが減速車線から第一通行帯に右寄りに進路変更したため第一通行帯を走っていた大型トラックが第二通行帯へと車線変更し、第二通行帯を走っていた大型バイクに接触。40歳のライダーが高速道路外に弾き出されて死亡したのです。この事故で付近は5時間半にわたって通行止めになりました。
側壁の高さ90cmで最初からバイクの転落を防ぐ構造になっていない
ほとんどの区間が高架橋で作られた都市高速では、車両の転落を想定した道路構造とすることが義務付けられています。
一般的には側壁、専門的には「壁高欄(かべこうらん)」と呼ばれる部分が車両防護柵となり、転落防止になっています。ただ、前述の2件の現場の壁高欄の高さは、バイクのシート高と大差ない90cm程度しかありません。これではバイク本体は道路上に残っても、乗っているライダーの慣性を押しとどめることはできないのです。

壁高欄の高さを90cmと定めた根拠は、国土交通省道路局の「防護柵の設置基準」にあります。設置基準は衝突条件の車両を大型トラックと乗用車に限定しており、バイクの事故を設置基準の想定から除外しています。
設置基準には車両衝突時の衝突角度や離脱角度まで定められ、衝突後の誘導性能(衝突車両を再び道路へと押し戻す動き)を確保することも求められていますが、そのいずれもがバイクを対象としていません。ライダーの転落を防止することに役立つ根拠がありません。
首都高速のバイク転落事故は、これが初めてではありません。2012~2017年の6年間で、首都高速で運転者に深刻なダメージや死亡に至る転落事故が3件発生しています。
これらの事故はカーブを曲がり切れずに車線を逸脱し、転落に至ったと考えられることから、高さ90cmの壁高欄の上に、防護柵を設置して逸脱を防止、カラー舗装などでカーブの危険性を視認できる対策を独自に考えました。
設置個所の中には、2025年12月の事故現場に近い6号向島線両国JCT、2026年1月の現場である3号狩場線も含まれています。
この時の転落防止対策は、ライダー自身の運転ミスを補うものでした。スピードを抑制する道路標示で警告し、運転ミスを起こしやすい場所に限定した防護柵を設置することで転落は防ごうとしたのです。
2010年代に起きた転落事故について、当時の国土交通大臣は次のように話していました。
「国土交通省としてはこれまでも必要に応じ高速道路会社に交通安全対策に関する指導・助言を行ってきた(中略)いずれの箇所においても首都高速道路会社の適切な安全対策が実施されるものと考えている」(石井啓一国交相/2017年8月4日)
しかし、転落事故は再び連続するようになりました。いずれも他の車両の車線変更、つまり進路妨害が第一の要因だと考えられています。
こうした接触事故は、どこで起きるか予測できません。どこで起きるか分からない転落を防ぐための設置基準ではなかったのでしょうか。
2025年12月の事故から約1カ月後、首都高速は事故現場手前に「車両接触注意」の横断幕、事故現場付近に「車線変更接触注意」の看板を、それぞれ設置する方針を決めました。
ウェブサイト「首都高ドライバーズサイト」に二輪車の安全走行について書かれたページがあります。掲載されたポスターには「二輪車事故は死傷に繋がりやすい!」と注意喚起されています。
適切な安全対策とは、何だったのでしょうか。
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。







