スポーツ車の証!? 現行の公道市販車では見かけなくなった「シングルシート」のバイク かつては多かった?

いまどきのスーパースポーツ車は、どれも「シングルシート」かと思いきや、じつはタンデムシートと取り換える「シングルシートカバー」が主流です。これまで純粋なシングルシートのバイクは販売されたのでしょうか? じつは少ないようで結構あるのです。

現行スーパースポーツ車は、基本的にタンデム仕様

 レーシングマシンなら、オンロード/オフロードに関わらず1人乗りのシングルシートです(サイドカーレースは除く)。

 本格レースにも使うようなスーパースポーツ車は、公道走行モデルでもシングルシートが似合うように思うのですが、多くの車両が基本的にはタンデム仕様(2人乗り)で作られて(販売されて)います。

 そのかわりタンデムシートと交換する「シングルシートカバー(カウル)」がオプションで用意されている車両が多いようですが、シングルシートカバーを装着すると「1人乗り」になるため、自動車検査証の記載事項の変更(構造変更申請)を行う必要があります。

 それでは、最初から純粋にシングルシートを採用する1人乗りのバイクは販売されているのでしょうか? 日本メーカーが国内販売した公道用モデルをピックアップしてみましょう。

いまどきのスーパースポーツ車は、総じてシングルシートに見えるが、多くの車両がタンデムシートとタンデムステップを装備する「2人乗り」仕様
いまどきのスーパースポーツ車は、総じてシングルシートに見えるが、多くの車両がタンデムシートとタンデムステップを装備する「2人乗り」仕様

 ここでは1人乗りが規定される原付1種と新基準原付、および原付1種と同じ車体の原付2種の兄弟車や(例:ホンダ「NSR50」と「NSR80」など)、ビジネス車、およびバイク黎明期のビジネス車ベースのスポーツ車を除き、基本的に1970年以降のモデルとします。

ホンダの歴代頂点モデルは、どれもシングルシートだった!?

 ホンダでシングルシートと言えば、マニアなら「RC30」こと「VFR750R」(1987年)や、「RC45」こと「RVF」(1994年)をイメージするのではないでしょうか。

 そんなレーシングマシンのベース車両はもちろんですが、レース技術から生まれた究極的な限定モデルの「NR」(1992年)やMotoGPマシンのフルレプリカである「RC213V-S」(2015年)もシングルシートになります。

 また、リッター(1000ccクラス)スーパースポーツでお馴染みの「CBR1000RR」は、2014年に登場した「SP」がシングルシート仕様で、サブフレーム(シートレール)も1人乗り用に軽量化されていました。

 その後も「CBR1000RR SP」はカラー追加やカラーチェンジを経て毎年発売され、フルモデルチェンジした2017年以降も継続し、シングルシートを採用していました。

 しかし、2020年にフルモデルチェンジした「CBR1000RR-R」も「SP」が発売されていますが、このモデルからシングルシートではなく2人乗り仕様になっています。

 他にも、1985年に販売された「CBR400F FORMULA 3」も本格的なシングルシートを備えていますが、中型クラスのレプリカ(スーパースポーツ)では、この車両だけだと思われます。

 珍しいところでは、1985年発売のクラシックな佇まいの「GB400TT MkII」と「GB500TT」がシングルシートです。いにしえの英国ロードレーサーに倣ったのかもしれませんが、販売数はいまひとつで、タンデムシートを装備する「GB400TT」の方が人気があったように思います。

クラシックスタイルのホンダ「GB400TT(ツーリストトロフィー)」(タンデムシート)に、ロケットカウルとシングルシートを装備した「GB400TT MkII」(1985年)
クラシックスタイルのホンダ「GB400TT(ツーリストトロフィー)」(タンデムシート)に、ロケットカウルとシングルシートを装備した「GB400TT MkII」(1985年)

 また時代をさかのぼると、1970年代にトライアル競技の人気が盛り上がり、公道モデルも発売されます。その第1弾が「バイアルスTL125」ですが、競技志向に合わせたシングルシートでした。

 1975年には「TL250」が登場し、その後もモデルチェンジや2ストロークエンジンの「TLM220」が登場するなどして、1990年代半ばまで継続しました。

 そして1981年にはトレッキングバイクとして「シルクロード」と「CT110」が登場します。どちらもシングルシートですが、「シルクロード」はオプションでタンデムシートが用意され、よく見ると車両には最初からタンデムステップが装備されています。

 反対に「CT110」は、「スーパーカブ」がベースながらタンデムステップを装備しない純粋な1人乗り仕様です。この辺りは現行モデルの「CT125・ハンターカブ」と異なります。

 さらに、ホンダ人気のFUNバイク125シリーズでは、「モンキー125」のみがシングルシート(1人乗り)です。

ヤマハもピュアスポーツはシングルシート

 ヤマハもトライアル人気を盛り上げるべく、1974年に「TY250J」を発売します。こちらは競技車両の「TY250」に公道を走れるように灯火類を装備した日本専用モデルで、もちろんシングルシートです。1975年には「TY125」を発売し、その後も進化を続け、ホンダ同様に長らくトライアル車の販売を継続しました。

 また1985年にはトレッキングバイクとして「AG200」が登場しますが、こちらは海外で牧羊バイクとして使われていたモデルで、残念ながら国内では人気を得られず激レア車のまま姿を消しました。

 ロードスポーツで最初にシングルシートを装備したのは1987年の「FZR400R」で、1990年の「FZR400RR」もシングルシート仕様でした。いずれもタンデム仕様のベースモデルから足まわりやキャブレターなどを強化したモデルでした。

ヤマハの4ストローク用排気デバイス「EXUP(エグザップ)」を初装備した「FZR400R」(1987年)は、軽量ピストンやクロスミッション、後退したステップなども装備し、2500台限定で発売された
ヤマハの4ストローク用排気デバイス「EXUP(エグザップ)」を初装備した「FZR400R」(1987年)は、軽量ピストンやクロスミッション、後退したステップなども装備し、2500台限定で発売された

 そしていまだマニアに大人気の限定車「OW-01」こと「FZR750R」が1989年に発売されます。そして「OW-01」から発展した「YZF750SP」(1993年、1995年)も登場しますが、これらはシングルシート装着モデルの王道と言えるでしょう。

「変わり種」としては、1987年発売の「SDR」でしょう。オフロードモデルの「DT200R」の2ストローク単気筒エンジンをメッキ仕上げのトラスフレームに搭載した、超スリムなロードスポーツは1人乗りに割り切った仕様でした。

スズキは250ccクラスにシングルシート車をラインナップ

 フルカウルやアルミフレーム、低いセパレートハンドルなど、いち早くレーサーレプリカに注力したスズキが最初にシングルシートを装備したのは、1986年の「GSX-R750R」です。スズキ独自の油冷エンジンで名を馳せた「GSX-R750」(1985年)をベースに、乾式クラッチなど特別装備を施した限定モデルです。

「GSX-R750」は1988年にフルモデルチェンジしますが、翌年1989年に再び限定モデルの「GSX-R750R」を発売します。こちらもシングルシートのみならず、中身は「ほぼレーサー」と言える過激な仕様でした。

スズキ独自の油冷エンジンを搭載する大排気量レーサーレプリカ「GSX-R750」の限定モデル「GSX-R750R」(1986年)。乾式クラッチやステアリングダンパーなども装備し、500台限定で発売
スズキ独自の油冷エンジンを搭載する大排気量レーサーレプリカ「GSX-R750」の限定モデル「GSX-R750R」(1986年)。乾式クラッチやステアリングダンパーなども装備し、500台限定で発売

 そして1986年には水冷4気筒DOHC2バルブ搭載の「GF250Sスペシャル」も登場します。ベースの「GF250S」にシングルシートとアンダーカウルを装備し、エンジンもブラックとするなど力を入れましたが、知る人ぞ知るレアモデルです。

 さらに250ccクラスで、1988年に2ストロークV型2気筒エンジンの「RGV250Γ」に、翌1989年には4ストローク4気筒DOHC4バルブエンジンの「GSX-R250R」にSP仕様が加わり、どちらもシングシートを装備していました。

1000ccスーパースポーツのシングルシートはカワサキのみ!?

 1980年代半ばから盛り上がった「レーサーレプリカ・ブーム」ですが、なぜか当初カワサキは消極的でした。しかし1980年代後半から力を入れ、とくに400ccクラスにはSP(スポーツプロダクション)仕様の「R」モデルを投入し、1989年の「ZXR400R」はシングルシートを採用します。

 また「ZXR」シリーズ長兄となる、シングルシート装備の「ZXR750R」が1991年に登場します。その後も400、750共に「R」仕様はシングルシート装備でした。

 それからしばらく間が開きますが、スーパースポーツのトップモデル「Ninja ZX-10R」に、スーパーバイクレースで闘うワークスマシンにより近い「ZX-10RR」(2017年)が加わります。当時は「R」「RR」ともに輸出専用モデルでしたが、2019年に両モデルとも国内販売を開始しました。

「Ninja ZX-10R」と同時に国内販売された「Ninja ZX-10RR」(2019年)は、チタニウム製のコンロッドやマルケジーニ製アルミ鍛造ホイールなどを装備する
「Ninja ZX-10R」と同時に国内販売された「Ninja ZX-10RR」(2019年)は、チタニウム製のコンロッドやマルケジーニ製アルミ鍛造ホイールなどを装備する

 冒頭で「いまどきのスーパースポーツ車はシングルシートカバーが一般的」と書きましたが、「Ninja ZX-10RR」は最初からタンデムシートは存在せず、完全1人乗り仕様のためタンデムステップも非装備です。

 そしてモデルチェンジした2021年にも同様の仕様で発売しました。また2025年にイタリア・ミラノで開催された「EICMA 2025」では2026年モデルが発表され、こちらもシングルシート仕様になります。

シングルシートは売れない? 現行は「モンキー125」のみ

 傾向として、シングルシート装備のバイクはレーサーレプリカやスーパースポーツ車が主軸です(競技志向の意味ではトライアル車も同様)。

 とくに1980年代は一般ライダーのレース登竜門と言えるSP(スポーツプロダクション)レース用に、250や400クラスで足まわりなどを強化したり、シングルシートを装備した、レース参戦コストを抑えるのが目的のモデルも登場しています。

 対する大排気量スーパースポーツは、本格レースに参戦時にはレース専用のシングルシートに交換するのが一般的なので、市販モデルのシングルシート車は、シートカウルよりもサブフレーム(シートレール)の方が重要だったのかもしれません(1人乗り専用ならコンパクトかつ軽量に作れる)。

 そしてシングルシートのモデルは、レーシングマシンに通じるシャープなルックスが魅力的ですが、じつは販売数はあまり伸びなかったと言われています(車種による)。多くのライダーにとって、いざというときにタンデムできないのはデメリットと捉えられたのかもしれません。

 というわけで、現在日本メーカーで国内販売している公道用市販モデルだと、シングルシート(1人乗り)のバイクはホンダ「モンキー125」のみになります(原付1種、新基準原付、ビジネス車を除く)。

 少々意外というか、やはり当然というか、微妙な感じではありますが……。

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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