人気の「絶版旧車」のプライスタグに驚愕!! 実際に走ると感じる「遅い・止まらない」はホント? 「旧車はこんなモン」で片づけるのは間違いかも
「旧車はカッコイイ!」けど実際に乗ると思ったより遅いし止まらないし性能だけでなく調子が悪いこともあります。そこに疑問や不満を感じると「こんなモンだよ」と諭されたりもしますが、本当なのでしょうか。
「旧車」はカッコイイけれど……
旧車のスタイルや雰囲気に魅力を感じるライダーは多く、それだけに、いわゆる「絶版旧車」の販売では結構シビれるプライスを目にします。
ところが、頑張って手に入れたり、たまたま乗る機会があって実際に走らせると、「思っていたのと違う……」と感じることも少なくないようです。
その感想(というか疑問や不満)を口にすると、大抵が「旧車なんだからこんなモンだよ」と諭されることがあります。

旧車は文字通り「旧いバイク」なので、それほど過度な期待はしていないハズですが、本当に「こんなモン」なのでしょうか?
ひとくくりに「旧車」と言うと猛烈に幅が広くなってしまうので、空前のバイクブーム以降の1980~90年代頃の、人気の高い国産旧車をメインに考えてみます。
1980年代のバイクは「遅くない」というより「速い」!?
まずは性能面ですが、バイクに限らず「機械」として考えると、現代と40年前後も昔のモノを比べたら、性能が低いのは当たり前と言えます。とはいえ1969年に登場したホンダの「ドリームCB750 FOUR」は、すでに最高速度200km/hを謳っていました。
また当時のバイクブームで人気の中型クラスだと、有名なバイク雑誌の企画だったサーキットテストで、2ストローク人気に火をつけたヤマハ「RZ250」(1980年)は約168km/h、対抗して登場した4ストロークのホンダ「VT250F」(1982年)が約163km/hを記録しています(いずれも当時の実測値)。
現代の250ccクラスのロードスポーツモデルでは、2気筒最速と言われるホンダ「CBR250RR」が約167km/hで、現状ではこのクラスで唯一の4気筒エンジンを搭載するカワサキ「Ninja ZX-25R」が約175km/hという記録があります(2020年頃のバイク誌のサーキットテストの実測値)。
現在は2ストローク車が存在しないので単純比較はできませんが、「RZ250」は現行「CBR250RR」と同等の最高速度を記録しているので、決して「遅い」とは言えません。
ちなみに、1980年代中盤以降のレーサーレプリカの最高速度は、2ストローク2気筒の250ccクラスで190km/hオーバー、4ストローク4気筒の400ccクラスだと200km/h前後でした。
またブレーキ性能だと、前出の「ドリームCB750 FOUR」は前輪に市販量産車初の油圧式ディスクブレーキを装備しましたが、当時も「初期は良く効くが、過熱するとドラムブレーキより効かない」と言われました。
しかし1980年代にロードスポーツ車では油圧式ディスクブレーキがメジャーになり、対向ピストンや2POT~4POTのブレーキキャリパー、穴あきディスクローターも登場し、ブレーキ性能も格段に向上しました。
なのでブレーキレバーを強く握っても制動力が足りないようなコトは無かったと思われます。そしてコーナリング性能も、峠道を走るならとくに問題なく普通にスポーティに楽しめました。

サーキットのスポーツ走行でスピード(最高速や加速性能など)やブレーキング、コーナリング性能(バンク角やタイヤのグリップ性能含む)を現行スポーツモデルと比較したら、もちろん旧車の方が劣るのは事実です。
しかし公道を交通法規の範囲内で走るなら、現行スポーツ車と一緒に走っても不満に感じるシーンはあまり無いでしょう。
「こんなモン」なのはメンテ不足が原因かも
このように、1980年代以降の旧車なら、性能面で「こんなモン」と諦める必要は無いでしょう。にもかかわらず「遅い・止まらない・曲がらない」と感じたり、「こんなモンだよ」と言われるのは、多くの場合はメンテナンス状況が影響しているのではないでしょうか。実際は「調子の悪さ、扱いにくさ」を、性能の低さに感じているのかもしれません。
たとえば1990年代以前のバイクの多くは、燃料供給を「キャブレター」が担っていますが、ガソリンに混入した汚れ(燃料タンクのサビなど)でキャブレターの内部が目詰まりしたり、ガソリンや空気を混合するための各部の調整が狂ったりすると、かなり調子が悪くなります。
加速やスピードが鈍るだけでなく、アクセル操作の反応が悪い、ギクシャクする、それ以前にエンジンの始動性も悪化します。
また、そんなキャブレターの不調は点火プラグがカブる(ガソリンで湿って火花が飛ばなくなる)原因にもなり、やはり調子が悪かったりエンジンが始動しにくくなることもあります。
これらの症状は現代の電子制御式燃料噴射(FI)より顕著ですが、相応にメンテナンスしていれば防ぐことはできます。
ブレーキの効きが悪い場合は、ブレーキキャリパーのピストンが汚れたりサビたりして動きが悪くなっているのが主な原因と言えますが、メンテナンスで解決できます。
コーナリングに関しては、サスペンションの動きが悪い(フロントフォークやリアショックユニットの不調、リンク部分のグリス切れなど含む)、スイングアームやステアリングの動きの悪さ(潤滑不良、ベアリングの傷みなど)など、車体の可動部の作動性の良し悪しが、曲がりにくさの要因かもしれません。

これらを改善するには、日常メンテナンスの範疇を超える「重整備」になる場合もありますが、製造されてからの時間や走行距離を考えると、必要な措置と言えるでしょう。
先にも述べたように、1980年代の日本は空前のバイクブームで、とにかくライダーが大勢いました。そして日々バイクに乗って、遠くまでツーリングに出かけたりもしましたが、しょっちゅう壊れたり、調子を崩して困ったりしたワケではないですし、もちろん全員がバイクに詳しくて誰もが整備に長けていた、というワケでもありません。
にもかかわらず、当時は「こんなモン」と呼ばれるほど調子を崩すことが少なかったのは、ひとえに新車だったから、もしくは新車からあまり時間が経過していなかった(走行距離も極端に長くなかった)からでしょう。
また旧車の場合は、摩耗など部品の経年劣化が調子を崩す場合もあります。たとえば2ストロークエンジンは構造的にピストンやシリンダーが摩耗しやすかったり、クランク軸のオイルシールの摩耗や劣化によって圧縮が落ち、体感できるほどパワーダウンすることもあります。
このあたりは一般的な消耗部品(ブレーキパッドやタイヤなど)とは異なり、日常的に点検や交換するモノではないので、旧車ならではの弱点かもしれません。とはいえ、これは2ストロークエンジンで相応に距離を走ったような場合の話です。
反対に4ストロークエンジンなら、エンジンオイルの交換など一般的なメンテナンスを正しく行っていれば、10万キロ単位で距離を走っていなければ、あからさまに感じるほど性能が低下することは少ないと思われます。
最新バイクも10年経ったら「こんなモン」に?
高額プライスが付く人気の絶版旧車も、ありていに言ってしまえば「かなり低年式の中古車」です。そのため、現在に至るまでのメンテナンスに不足や不備があれば、当然ながら調子が悪く、性能的にも「こんなモン」になっている可能性は「大」です。
そう考えると、ものすごく高性能な現代の新型車でも、キチンとメンテナンスしなければ性能を維持できず、10~20年後には遅くて止まらず、よく壊れる「こんなモン」と呼ばれる低性能バイクになっているかもしれません。

ちなみにブレーキパッドやチェーン、タイヤ、エンジンオイルや点火プラグなどの消耗部品は、40~50年前よりも性能や耐久性が断然向上しています。
そのため、メンテナンスで消耗部品が現代のモノ(カスタムの意味合いではなく個々の車両の適合品)に交換されていれば、むしろ当時よりバイクとしての性能や耐久性が少なからずアップします。
その意味でも、適正なメンテナンスがされて新車時に近い性能を維持していれば、性能的にも使い勝手でも、「旧車はこんなモン」と感じることはないハズです。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。









