ラフな使い方でも期待に応えてくれるイタリアの巨漢!! ドゥカティ「ムルティストラーダ1260S」

ドゥカティ「ムルティストラーダ1260S」は、どこを走っても使っても期待に応えてくれる。難点は、動き出す前に感じる重量感と車体サイズ。

走る場所を選ばないタフな作り

 イタリアのドゥカティと言えば、トップスピード&ハイパワーありきのスーパースポーツで知られています。実際、今シーズンの世界スーパーバイク選手権(←市販車レースの最高峰)では開幕戦から連戦連勝を記録。手のつけられない速さでライバルを圧倒しているのです。

ドゥカティ「ムルティストラーダ1260S」を試乗する筆者(伊丹孝裕)

 そんなドゥカティの活躍は、実はサーキットだけに留まりません。用途も走るステージも問わない、4輪でいうところの「SUV」的なモデルでも成功していて、そのカテゴリーの主力が「ムルティストラーダ1260S」なのです。

 このモデルは「4 Bikes in 1」というキャッチコピーを掲げています。つまり、1台のバイクに4台分の性能を盛り込んでいることを意味し、スポーツバイクにもツーリングバイクにも街乗りバイクにもオフロードバイクにもなるオールラウンダーとして登場。「あらゆる道」を意味するその車名にいつわりはありません。

車重とシート高のボリューム感は乗る人を困らせるのか?

 乗り出す時、ひとつハードルがあるとすれば車体 サイズでしょう。シートの高さは2段階に切り換えられ、低い方にセットすれば825mmまで下げることができます。この数値自体は決して高くないものの、ガソリン満タン時の車重は235kgあり、燃料タンクの位置も高いため、取り回しや引き起こしの時にズシッと手応えがあるのは事実。小柄なライダーにとって、そのボリューム感はなかなかのものです。

 ただし、いざ動き出せば軽快そのもの。1262ccのL型ツインは最大トルクの85%を3500rpmという低回転で発生するため、無造作にクラッチをつないでも車重を感じさせることなくスルスルッと車体を進めてくれます。

 そのため、ストップ&ゴーを繰り返す街中でも気難しさはなく、高速道路では心地いい鼓動感を披露。ひと昔前のドゥカティのエンジンなら「ダダダダッ」と勢いよく吹け上がり、かなり急かされるイメージでしたが、このモデルは「ドゥルルル~」とまろやかに回転。のんびりとした巡航が可能なのです。

モードは4種類あり、最高出力やレスポンスも変更可能

 では、どのあたりが「4 Bikes in 1」なのか? それはボタンひとつで切り換えられるライディングモードに集約されている、と言っていいでしょう。このモードには、「スポーツ」、「ツーリング」、「アーバン」、「エンデューロ」の4種類のパターンがあり、それぞれに応じてエンジンの最高出力やそこに到るレスポンスが変化。また、トラクションコントロールやABSなどの介入レベルも同時に最適化されるというものです。

 とりわけ魅力的なのはサスペンションのフィーリングが変わるところで、例えば「スポーツ」を選択するとストロークスピードがゆっくりになって車体が安定。「アーバン」ならゆっくりしたペースでもしなやかさに動くなど、走るステージや好みに合わせて乗り心地やショックの吸収性が変化していくのです。

 1台のバイクをありとあらゆる用途に使うのは、現実的にはそれほど簡単ではなく、必ずガマンや妥協を強いられるものですが、どこを走っても、どんな風に使っても期待に応えてくれる。それが、このムルティストラーダ1260Sなのです。

【了】

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Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。マン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムなど、世界各国のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

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