新型登場前に2018年モデルの熟成度を確かめる ユニークなパッケージと充実装備のホンダ「NC750X DCT」

クラッチ操作不要のDCTを装備するホンダ「NC750X DCT」は、力強いトルク特性で扱いやすく燃費性能に優れた排気量745ccの直列2気筒エンジンを搭載し、他にはないユニークな装備が特徴のモデルです。2021年の新型登場を控えた2018年型にあらためて試乗しました。

新型登場を控え、熟成極まる贅沢装備車も狙い目!?

 ユニークなクロスオーバーモデルとして、また、750ccクラスがもつお手軽さも手伝ってファンも多いホンダ「NC750X」ですが、2021年1月すでに新型(2021年モデル)が発表され、注目を集めています。メーカーの発表によると新型は軽量化を果たし、パワー/トルクアップしたエンジンを搭載、スタイルはキープコンセプトながらエッジを効かせ、自慢のラゲッジボックは大型化され踏襲されています。

ホンダ「NC750X DCT」(2018年型)に試乗する筆者(松井勉)

 つまり、新型登場前、今がもっとも熟した造りであるハズの現行モデルをいま一度路上に連れ出し、その走りを味わってきました。「NC750X DCT」はご存じ、ホンダのキラーコンテンツ「Dual Clutch Transmission(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」を搭載するモデルです。

 キャンディークロモスファイレッドの「NC750X DCT」の価格は96万8000円(消費税10%込み)。マイナーチェンジを2018年4月発売のモデルで受け、2018年11月発売のモデルからは、それまで「Eパッケージ」としてオプション扱いだったグリップヒーターやHSTC(トラクションコントロール)、ETCは2.0を標準装備化しています。

 このスタイルとなった2016年2月発売のモデルから、搭載されているLEDヘッドライトやロングスクリーンなどはそのまま。つまり、ツルシで一番装備充実となっているわけです。

 そもそも「NC」シリーズの特徴は、パッケージ作りにあると言えます。ブリッジ型フレームにシリンダーを前傾させた特徴的なカタチのエンジンを搭載。リアシート下に燃料タンクを配置することで、ライダーの前にはヘルメットを飲み込むサイズのラゲッジボックスが備わっています。

「NC」シリーズの特徴のひとつであるラゲッジボックス。新型(2021年モデル)では容量23リットルへ拡大

 また、エンジンの特性も、高回転高出力とするのではなく、位相角90度のクランクを直列2気筒と組み合わせてトルク型とすることや、低燃費に向いた吸排気の諸元を与えたことで、鼓動感あるフィーリングに仕上げています。そして通常の6速リターンミッションの他に、DCTを搭載し、自動変速が持つイージーさと6速ミッションをベースとしたマニュアル感の双方を楽しめる設定としています。

 クラッチ操作が不要なので現行のAT免許で運転できることも特徴でしょう。その良さは乗れば納得、エンストしない安心感、シフトアップ、ダウンもツインクラッチが見せるスムーズでシームレスな駆動フィーリングを持っています。クロスオーバーモデルらしい、やや幅広でアップライトなハンドルバーと、ステップ位置もツーリングに向いたロードモデル、という印象です。

 DCTの操作は簡単です。エンジン始動後にハンドル右のスイッチボックスにある「N-D/S」のシフトスイッチを指で押し「D(ドライブ)」にすると1速にシフトされます。あとはやんわりアクセルを開けるだけ。低回転トルク豊富なエンジンはするりと車体を押しだします。

 毎度DCTに乗って思いますが、この半クラッチ制御やシフトアップ&ダウンジのクラッチ制御のスムーズさは素晴らしいものです。走る時、クラッチ操作に振り向ける神経を休めることができるので、気持ちに余裕ができます。
 
 ドライブモードには「D」と「S」があり、「S」モードは加速力やエンジンブレーキの強さをだすため「D」モードよりエンジンの高い回転域を使うシフトプログラムになります。あえてモード変更をしなくても、短い時間であれば「D」モード選択中でもライダーの右手の開け方次第でECUが乗り手の次なるアクションを予測して高い回転を保持したり、シフトアップを待ってくれたりします。ライダーが「D」モード的なライディングを続ければ、そのシフトプログラムも自動復帰します。

排気量745ccの水冷直列2気筒OHC4バルブエンジンを搭載。DCT搭載車にはシフトペダルが存在しない(オプションでスイッチペダルを装備可能)

 また「MT」モードも備え、ハンドル左のスイッチボックスにあるパドルスイッチのシフトアップ(+)、ダウン(-)操作で走ることも可能、お望みなら足で操作するシフトスイッチペダルもオプションで用意されています。

「AT-MT」のモード変換を行なわずとも、シフトアップ、ダウンスイッチを活用すれば「D」モードであっても欲しい瞬間にシフトをしてくれます(走行速度に合ったギアしか選択はできません)。

 とにかく、デュアルクラッチの特徴でもある駆動力の途切れがほとんど無いシームレスなシフトは、何度味わっても新鮮です。ホンダがDCTを世に出して10年。私は未だに乗るたびにツボってます。

 シフトパターンは様々に設定して走れるのですが、エンジンと自分の走り方からすると、基本「D」モードで、欲しい時にパドルを叩く、というのがデフォルトです。低速トルクに富むエンジンと、早め早めにシフトアップする「D」モードのプログラムが心地よく、常に2000から3000rpmあたりで走行している印象です。信号からの発進はそれでも力強く、流れをあっさりリードするダッシュ力は排気量1000ccクラスと同等以上、これも「NC750X」の魅力だと思っています。

 ハンドリングに関しては、基本的に鋭過ぎないナチュラルなものにまとめられており、市街地からツーリングで走るような場面でも気を遣いません。ワインディングを気持ち良く走るのも得意。スポーツバイクを追い回すようなキャラクターではありませんが、エンジンを回さなくても高いギアで加速する特性なので、けしてトロくないのも特徴です。

ホンダ「NC750X DCT」は隠れた名車とも言える存在。新型(2021年モデル)にも期待が高まる

 不満を言えば、自慢のラゲッジボックスの開閉がイグニッションキーを使うため、エンジン始動後に「あっ」と思って仕舞ったモノを取り出したい場面でアクセスに手間取りますが、これは贅沢な悩みかもしれません。クルマでいえばグローブボックスのようなアクセス感があると便利なのですが、新型に期待しましょう。

 独特の乗り味で人を魅了する「NC750X」は、これはこれで長く付き合える「GTバイク」と言えそうです。隠れた名車、と言うと照れてしまいそうですが、そんな存在であることが、改めて確認できました。

 さて、燃費についてはすでにリポートしていますが、2021年に新型として登場が控えている「NC750X」は、燃費性能をどのように進化させているのでしょうか? こちらも楽しみです。

【了】

【画像】モデルチェンジ前の2018年型ホンダ「NC750X DCT」を見る(12枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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