S字カーブが美しいクネクネ素掘りトンネル 房総半島で出会った「奥米トンネル」
千葉県の房総半島には、素掘りのトンネルが数多く現存しています。トンネルごとに様々な個性があり、ツーリングの目的としてトンネルめぐりを楽しんでいるライダーも多いとか。今回はそんな素掘りトンネルの中から、「奥米トンネル」をバイクで訪れてみました。はたしてどんなトンネルなのでしょうか。
緩やかに蛇行する不思議なトンネル、途中にある横穴は一体?
房総半島に現存する個性的な素掘りトンネルの数々、今回紹介する「奥米トンネル」は、国道465号と410号が交差する付近、ヘラブナやブラックバス釣りがさかんな三島湖の南側にあります。

国道から三島ダム方面へと細めの道を曲がり、そのままダムや県民の森スポーツ広場などを越えて鴨川方面に進み、三島湖を渡る赤い橋を過ぎたら現場に到着です。北側から来ると最初に短いトンネルがありますが、目指す「奥米トンネル」はそのすぐ先にある方となります。
ふたつのトンネルの間には、未舗装ですが広い駐車スペースがあるので、ますはそこにバイクを停めて内部を覗いてみます。入り口はしっかりとコンクリートで整備されていますが、入ってすぐに、デコボコとした内壁が現れます。コンクリートを吹き付けて補強されてはいますが、岩肌のいびつな表情が、素掘りのトンネルであることを示しています。

そしてこのトンネル、少し進むと内部でカーブしており、先が見通せないのです。すると突然「クオォォ~ン」という大きな音がトンネル内に響き渡りました。おそらく車が入ってきたのでしょう。しかしその姿が現れるまでにはけっこう時間がかかりました。どうやらトンネルは意外と長いようです。音の大きさからトラックかな? と思ったら、ごく普通の乗用車……音響効果もなかなかのようです。

今度はバイクで通ってみることにしました。やはりトンネル自体けっこう長く、しかもカーブはひとつではなく緩やかにクネクネと蛇行していました。内部は一部広くなっているスペースがあるものの、基本的に狭いです。
オレンジ色のナトリウム灯が照らし出す岩肌は幻想的で、秘密の施設への入り口か、テーマパークのアトラクションの導入部のようなワクワク感があります。そしてこのトンネル内の途中には、小さな横穴がふたつありました。隠しダンジョンへと誘う秘密の入り口のようで、さらにドキドキする構造となっています。
トンネル内で一瞬エンジンを停めてみると、あまりの静けさに現実感を失います。すぐに再始動して進むと、緩やかな上り勾配の先にようやく出口が見えてきました。その直前、トンネルは優しく官能的なS字カーブを描いており、とても美しい表情を見せてくれます。

長さ約300メートルの「奥米トンネル」は、ただ通過するだけでも、見てよし、音を聞いてもよし、不思議な横穴にドキドキするもよしという、多面的な魅力にあふれたトンネルでした。
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Writer: 野岸“ねぎ”泰之(ライター)
30年以上バイク雑誌等に執筆しているフリーライター。ツーリング記事を中心に、近年はWebメディアで新車インプレッションやアイテムレビューも多数執筆。バイクツーリング&アウトドアを楽しむ『HUB倶楽部』運営メンバーの1人。全都道府県をバイクで走破しており、オーストラリア、タイ、中国など海外でのツーリング経験も持つ。バイクはスペックよりも実際の使い勝手や公道での走りが気になるキャンプツーリング好き。