2ストレプリカ好きならハマる!? 「バイク界のテスラ」ゼロモーターサイクルズ大型電動ネイキッド「SR/F」を公道で乗ってみた

日本においては「XEAM」が取り扱う米国の電動バイクブランド「ゼロモーターサイクルズ」は現在、様々なモデルを発売していますが、そのなかでフラッグシップとよべる存在が大型電動ネイキッド「SR/F」でしょう。はたしてその公道での走りはどれほどのレベルなのでしょうか。

「走行性能」に着目すれば悲観する必要はナシ

“脱炭素化社会”の実現を目指し、東京都では脱炭素社会への取り組みをまとめた「ゼロエミッション東京」に基づき2035年までに都内で新車発売される2輪車すべてを「非ガソリン化」する目標が掲げられました。

 更に世界的な動きを見ても2020年から運用開始した気候変動問題に関する国際的な枠組みである「パリ協定」に基づき、2050年までに「カーボンニュートラル社会の実現」が定められているとのことです。つまりは、この先の未来、クルマ・バイクの“EV化”や水素エンジンの開発や普及などによって“脱ガソリン”の流れが益々、加速していくであろうことが予想されます。

ゼロモーターサイクルズ「SR/F」に乗る筆者(渡辺まこと)

 こうした流れを受け、既存の“ガソリンエンジン”を愛好するユーザーからは“EVバイク”に対する否定的な意見も聞こえてくるのが正直なところですが、しかし、こと“走行性能”に関して言えば、現時点ではさほど悲観する必要はないのではないか、とも感じます。それが今回、『ZERO MOTORCYCLES(ゼロモーターサイクルズ)』の『SR/F(エスアールエフ)』というモデルを走らせた筆者(渡辺まこと)の率直な感想です。

 以前、当サイト(バイクのニュース)でも米国のゼロモーターサイクルが生産し、日本国内ではMSソリューションズが展開する電動バイクブランドの「XEAM(ジーム)」によって同モデルが初上陸を果たしたことをお伝えさせて頂きましたが、今回はSR/Fを限られた時間の中、実際に走らせてみたのですが、繰り返しを承知で言えば「走り」に関してあまりネガティブな印象を抱かなかったのが正直なところです。

 とはいえ、このSR/F。やはりガソリン・バイクに慣れた身にとって、多少の違和感を感じるポイントが幾つかあります。たとえばモーターの始動にしても普通のバイクのようにセルモーターが存在せず、イグニッションキーをオンにし、サイドスタンドを収納し、モータースイッチをオンにするという手順ではじめて走行可能な状態となります。

ホイールベース1450 mm、車体重量220kgという大型区分ながら車体自体は至ってコンパクト。ドゥカティモンスターやKTMデュークを彷彿とさせるデザインもスタイリッシュです。カラーリングはレッドとグレーの2種類でグレーは既に完売とのことです

 これがガソリンなどの燃料を使用したバイクの場合、セルモーターが「キュルキュル」と回り、エンジン始動となるのですが、EVバイクの場合、こうした一連の動きがまったくの無音&無振動で行われます。

 そうした構造ゆえ、たとえば信号待ちで停車した場合など「アレ? もしかしてモーターが止まっちゃった?」と錯覚してしまうのですが、アクセルを少し捻れば車体がググっと動く感覚は、やはり既存のガソリンバイクとは明らかに違います。

 また、ゼロ発進からアクセルをラフに開けた場合、「クラッチを切り、シフトを入れ、クラッチを繋ぐ」という動作が求められるミッション付きのバイクより注意が(もちろん慣れれば問題ないでしょうが)必要な気がします。オーナーとして日常の中で走らせる場合、既存のバイク以上にモーターが動いているか否かをキッチリ確認しなければならないでしょう。

ハマる人にはハマる2スト的な乗り味

 先程述べたとおり、EVバイクという構造上、このSR/Fはクラッチどころかミッションもなく、操作はアクセルとブレーキのみになるのですが、しかし、それは決してスクーターのような感覚ではなく、個人的には「バイク」を操作する感覚がキープされていたように感じたのも率直な感想です。

クラッチレス・ダイレクトドライブのZF75-10モーターは最高出力82kw(110hp)、最大トルク140Nm(約14.3kgf・m)を発揮。減速時にモーターが発電し、バッテリーを充電する「回生ブレーキシステム」を搭載しているゆえ、高速走行より市街地での方が電力消費を抑えられる構造となっています。パーシャル走行からの追い抜き加速はガソリン・バイク以上の性能を感じさせるものとなっています

  特に最高出力82kw(110hp)、最大トルク190Nm(約19.3kgf・m)と国産大型ネイキッドモデル並みのスペックはかなりのもので、加速の鋭さはEVならでは。たとえばハイパフォーマンス・モデルの代表格といえるスズキ・ハヤブサは最高出力140kw(190ps)/9700rpm、最大トルク150Nm(約15.3kgf・m)というスペックになっているのですが、特にトルクの面を比較するとガソリンエンジン搭載車を上回ることがお分かりになるでしょう。
 
 また、SR/Fの最高速度はカタログ上で200km/hと記されているのですが、加速の鋭さは2ストのレーサーレプリカを彷彿とさせるものとなっており、「バイク界のテスラ」と呼ばれるだけの性能を誇ります。

SR/Fの左グリップにはモード切り替えボタンが装備されており、ストリート/スポーツモード/ECO/レインと4タイプのライディングモードが切り替え可能。フルカラー5インチのOLCDモニターも速度や充電残量、走行可能距離が確認しやすいものとなっています

 ちなみにEVバイクの特徴として(エンジンがないのにこうした表現は適切ではないかもしれませんが)アクセルを戻しても「エンブレが効かない」乗り味となっているのですが、こうした部分も「2ストっぽさ」を感じさせるもので、アラフィフの「80sレプリカ世代」、しかも「2スト派」なら、きっとハマる人はハマるのではないでしょうか。走り自体は「全否定」するほどではなく、バイクとしてのダイナミズムを十分に感じさせるものとなっています。

 カタログ上の満充電時で航続距離259km、208~240Vのレベル2で4時間30分、110~120Vのレベル1では8時間30分という充電時間を考えると、まだ長距離での実用性に不安が残るのも正直なところですが、純粋にバイクとしての乗り味だけを語ればこのSR/Fは、さほど否定する要素がありません。ちなみにSR/Fの車両区分は大型自動二輪、免許区分AT限定大型二輪免許・大型二輪免許、車検は免除となっています。

 価格は新車で291万5000円(消費税10%込)とのことですが、こちらは既にSOLD OUT。日本総代理店の「XEAM(ジーム)」では現在、2020年モデルのユーズドモデルを販売しているとのことなので、気になる方は時代を先取りしてみてはいかがでしょうか。

【了】

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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