快適なタンデム走行を行うコツや手順を徹底解説

タンデムは、乗せる方も乗る方も不慣れだと怖い思いをするばかり。安全に快適なタンデムのためのちょっとしたコツや手順をお伝えします。

快適なタンデムを行うためのコツや手順とは

 高速道路における「タンデム」(=ふたり乗り)が解禁されたのは、2005年4月のこと。年齢や免許取得からの期間といったいくつかの制限があるものの、バイクの楽しみ方はおおいに広がったと言えるでしょう。

高速道路(一部区間を除く)でも2005年4月からタンデム走行が可能になりました

 とはいえ、乗せる方も乗る方も不慣れだと怖い思いをするばかりです。ここでは、快適なタンデムのためのちょっとしたコツや手順をお伝えしていきます。

●乗車してもらう時

パッセンジャーを乗せる前には、左足がしっかり着くところまで傾け、片足で車体を支えた方が安定します

 まず、パッセンジャー(リアシートに乗ってもらう人)に乗車してもらう時、多くのライダーは両足を地面に着いて身構えていませんか? 余裕の足着きならそれでもOKですが、そうでない場合は左足がしっかり着くところまで傾け、片足で車体を支えた方が安定します。

 なぜなら、両足を着こうとすると必然的に車体は直立し、中途半端にグラグラしがちだからです。だったら一方向に傾いている方が踏ん張りやすく、サイドスタンドを出した状態でパッセンジャーを迎え入れるのもアリです。

パッセンジャーにはライダーの肩に手を掛けてまたがると車体が安定します

 その時にフロントブレーキを握って車体を固定し、パッセンジャーにはライダーの肩に手を掛けてまたがってもらうとお互い安心でしょう。グラブバーやシートといった車体側だけを掴むと身体の動きが大きくなりやすく、落車や立ちゴケを誘発しかねないからです。

 また、タンデムステップはあらかじめ出しておき、ライダーは「どうぞ」、パッセンジャーは「乗るよ」と準備が整っていることを確認し合いましょう。

●乗車姿勢

タンデムの乗車姿勢は、身体の間隔は少し空け、片方の手をライダーの腰に、もう片方の手でグラブバーを掴むと自由度が高く、加速にも減速にも対応できます

 無事にシートに座ることができたなら、次にすべきはきちんとした乗車姿勢を取ることです。ここで気をつけたいのは、身体を密着させ過ぎないこと。例えば、ライダーのお腹にベルトのように両手をまわすと一見安心な気がします。

 ところが、それだとライダーの動きが妨げられ、特に減速時はパッセンジャーの体重が大きくのしかかる格好になって危険です。そのため、身体の間隔は少し空け、片方の手をライダーの腰に、もう片方の手でグラブバーを掴むと自由度が高く、加速にも減速にも対応できるはずです。

●発進する時

発進の手順は、車体が動き出したら、すぐさま足をステップに戻すことを意識しましょう

 ではいよいよ発進です。ギアを入れるために足を入れ換えたり、クラッチ操作の影響で最もフラつきやすい瞬間ですが、主な手順は次の通りです。

(1)左足を踏ん張り、車体を起こす
(2)右足をステップから外し、地面に着く
(3)ギヤを1速に入れる
(4)右足を踏ん張り、車体を起こす
(5)左足をステップから外し、地面に着く
(6)クラッチを繋ぎ、発進

 最も手順の多いパターンだとこうなりますが、乗車する時にあらかじめギヤを1速に入れておいたり(こうするとブレーキ代わりにもなります)、(3)を終えたタイミングでそのまま発進するのもアリです。

 では、なぜ(4)と(5)をわざわざ追加して、足を再び入れ換えたのかと言えば、基本的に左足を着いている時の方が安定感と安心感を得られるからです。サイドスタンドは左側通行の国でも右側通行の国でも、ほぼ例外なく左側に装着されていますよね? それに伴う慣れもありますが、人の身体は左足が軸足になっていることが多く、そちらを基準にした方が車体もフラつかない確率が高いのです。

 もっとも、足を入れ換える動作の方が不安という場合もありますから、これはケースバイケース。ひとつアドバイスしておくと、ヤジロベエのように右から左、左から右とシート上で真横に移動するのではなく、腰をひねるようなイメージで行うと足の出し入れがよりスムーズなものになるはずです。

 そしてもうひとつ。車体が動き出したらその余韻に浸ることなく、すぐさま足をステップに戻すことを意識しましょう。足を出したままにしていると身体を支えるためにハンドルに力が入りやすく、それがフラつきの要因になるからです。この効果はすぐに体感できるため、是非ひとり乗りの時に試しておいてください。スムーズさがワンランクアップする効果的な練習です。

●ギアチェンジ

タンデム走行時、意外に多いパターンがパッセンジャーへの「気の使い過ぎ」です

 上手く発進できても、気をつけるべきポイントはまだまだたくさんあります。特にパッセンジャーがストレスを感じやすいのが加減速時のギアチェンジでしょう。これがギクシャクしていると不安が途切れず、疲労も蓄積。険悪な雰囲気が漂うことは珍しくありません。

 ひとり乗りの時から操作が根本的に雑な人はさておき、意外に多いパターンが「気の使い過ぎ」です。余計な挙動を与えまいと、不必要なほど丁寧に操作をしていませんか?

 ここで言う丁寧とは、ゆっくり過ぎる、もしくは大き過ぎる操作と言い換えてもいいでしょう。シフトアップのためにスロットルを戻し、クラッチを最後まで切り(握り)、ひと呼吸置いてからシフトアップし、さらにひと呼吸置いてからクラッチレバーを離していく。例えば、こういう操作です。

 パッセンジャーへの心配りとしては悪くありませんが、これだとスロットルオフやクラッチを切った後の前のめり感が長く続き、シフトアップやスロットルオンではその反動でのけぞる感覚が強くなるなど、逆効果になりがちなのです。

スロットルの戻しもごくわずかに留めると一定のリズムで滑らかにスピードが上昇します

 特に気をつけたいのはクラッチレバーの操作。一般的なバイクなら、レバーを切るのは遊びが取れてからほんの1~2cmで問題ありません。その時、スロットルの戻しもごくわずかに留めると一定のリズムで滑らかにスピードが上昇していくはずです。

 シフトダウンの時はこの逆で、「頑張り過ぎ」のライダーが多いようです。これは、ついいい格好を見せようとしてしまう、と言い換えてもいいでしょう。

 ブリッピングによってエンジンブレーキを上手く逃がし、車体に余計な挙動を与えることなく減速できるライダーは、それほど多くはいません。ふたり乗りでピッチング(車体が前のめりになったり、後ろ下がりになる動き)が大きく出やすい状態ならなおさらなのに、なぜかついついやりたくなってしまうようです。

 やるべきことはまずブレーキに頼り、ブリッピングする必要がない回転域とスピードまでしっかり減速。シフトダウンはそれから落ち着いて行うようにしましょう。この時もやはりクラッチレバーは最後まで切る必要はなく、最小限に留められるように日頃から練習しておきたいものです。

●ブレーキング

減速の時も停止の時もふたり分の体重がかかるブレーキは、基本的にリアブレーキを多用し、フロントブレーキは最後の補助に使うくらいのイメージでいましょう

 では、そのブレーキはどうすればいいのか? ふたり分の体重でブレーキに対する負担は増し、サスペンションも大きくストローク。制動距離は伸び、バランスも崩しやすくなるなど、細心の注意を払いたい部分です。

 なにより多用したいのがリアブレーキです。減速の時も停止の時も基本はまずリアブレーキを掛け、車体が前のめりになる動きを抑制。フロントブレーキは最後の補助に使うくらいのイメージでいると、そもそもスピードを出し過ぎることもないはずです。

 そして、いよいよ停止する瞬間は、発進の時と同様に片方の足(基本は軸足)を出して準備。この時、単にステップから足を外すのではなく、やや前方に出すといいでしょう。車体には前へ進もうとする慣性力が残っていますから、真下に出すと足が後方に持っていかれ、バランスを崩す可能性があるからです。杖をつくようなイメージで構えておけば、そうした挙動にも対応できるというわけです。

 ただし、左手でリアブレーキが掛けられるスクーターと異なり、右足での操作に苦手意識を持っているライダーは多いに違いありません。

 足は手と違って微妙な力加減が難しく、底の厚いブーツを履いているとなおのこと。リアタイヤをうっかりロックさせてしまうリスクも少なくありません。そこで、リヤブレーキの調整が比較的簡単になる操作をお伝えしておきましょう。それがステップをカカトで踏むという方法です。

土踏まずを支点にするとツマ先が下がる一方、カカトが浮き上がり足全体の動きをコントロールしにくい

 普段、ステップには土踏まず部分を乗せているライダーが多いと思います。ライディングの基本スタイルのひとつですが、土踏まずを支点にするとツマ先が下がる一方、カカトが浮き上がりがちになり、足全体の動きをコントロールしにくいのです。

カカトでステップを踏み支点にしてしまえば、ペダルの感触も力の強弱も分かりやすくなります

 ところがカカトでステップを踏み、そこを支点にしてしまえば、そこからツマ先までは下がる方向(=踏み込む)にしか動きません。結果的にペダルの感触も力の強弱も分かりやすくなるというわけです。

 さて、ここまでいろいろと書き連ねてきましたが、タンデム成功のポイントは距離も時間も無理することなく、決していいところを見せようとしないこと。常にパッセンジャーを思いやり、楽しいひと時をお過ごしください。

【了】

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Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。マン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムなど、世界各国のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

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