オフ車イメージで走りたい! そんな思いを満たすヤマハ「テネレ700」
日本では2020年夏、ヤマハの新型モデルとして発売開始された「Tenere 700(テネレ700)」は、ミドルサイズアドベンチャーバイクです。2022年型では排ガス規制に適合し、グラフィックも一新されました。あらためて試乗します。
デビュー当時から変わらない、オフ車のバランス感が魅力
ヤマハの「Tenere 700(テネレ700)」は、「MT-07」や「XSR700」が搭載する水冷並列2気筒の不等間隔爆発をするエンジンと同系のものを搭載することで、全体のコンパクトさ、軽さでミドルサイズアドベンチャーバイクに一石を投じたモデルです。

205㎏の車重を動かすそのエンジンは、54kWと69N.mを生み出し、鼓動感、サウンド、そして何よりも重要なオフロードでのトラクション特性が魅力です。
開発を進めたヤマハでは、「MT-07」が出た時点でこのエンジンのコンパクトさに着目。適切な剛性を持たせたフレームとの組み合わせで、フロントに21インチの大径タイヤとリアに18インチタイヤを選択し、最低地上高240mmを確保。サスペンションストロークもフロント210mm、リア200mmと、オフロード走破性能を意識したパッケージを造ることにも貢献しています。
オフ走行性能を意識しているのはライディングポジションからも伝わります。テーパー形状のアルミハンドルバーのマウント位置を高めにセットし、ライダーがステップの上に立ったスタンディングポジションでのコントロール時にピッタリになるよう設定されています。
ハンドル位置が高めのせいか、市街地での極低速領域でちょっとした腕からの力がバイクに伝わり、渋滞時などフラッとするところもありますが、慣れの範疇だと言えるでしょう。
その分、市街地ではオフ車のように軽快に走ります。エンジンが生み出すトルクと比較的ローギアードに仕立てたファイナルギアレシオで、キビキビ感ある加速が持ち味。

フロントに採用した片押し2ピストンのブレンボ製キャリパーと282mm径のディスクプレートの組み合わせもコントロールしやすく、リアのブレーキユニットも同様です。ブロックタイヤをイメージした装着タイヤも、全体のオフ車的ムードに貢献しますが、見た目ほどゴロゴロもせず、パターンノイズも高くありません。
高速道路ではコンパクトに見えるウインドスクリーンですが、実に効果的にライダーに当たる風を弱めてくれます。そのため、1時間走っても疲労感はミニマム。クルージングは余裕です。ファイナルがローギアードなため、120km/h制限の道となるとやや振動が気になるかもしれません。これも後で解るのですが、オフロードでの一体感ある楽しさを考えたら納得です。
ワインディングではフロント21インチ、リア18インチというオフロードを意識したタイヤサイズにもかかわらず軽快さがあります。前後17インチのバイクのようなワイドなタイヤで路面を掴むという印象とは異なるものの、グリップ感や安心感があり、旋回性もロードバイクとツーリングしても遜色ないものを持っています。
とくにセンターラインも無いような細いワインディングでは、左右に軽快にコントロールできるハンドリング特性も手伝って楽しさが際立ちます。また、そんな道に多い荒れたアスファルトでも、しっかり吸収するサスペンションのお陰で得意科目と言えるほど。

オフロードでも試します。このバイク、現行モデルはトラクションコントロールを装備していません。それはこのエンジンの特性が回転上昇とともに解りやすくトルクを供給するため、ライダーの右手のコントロールを優先してのこと。タイヤと路面のグリップバランスを探りやすく、またその限界がいきなり訪れる印象もありません。「乗れている感」が楽しい!
700クラスという排気量のため、高回転領域まで使えばパワフルさは充分。滑りやすい路面ではそれを使ってリアをパワースライドしてコントロールすることも楽しめます。また、高速道路では低めに感じるファイナルレシオも、ダート走行ではピッタリ。
サスペンションを含めたシャーシ性能がグリップ限界領域の挙動をマイルドに表現してくれる恩恵で、ライダーにスキルさえあれば相当楽しめるように仕立てられています。
そしてこんな場面でも標準装備のタイヤ、ピレリ「スコーピオンラリーSTR」はバランス良く「テネレ700」をコントロールでき、この日テストした市街地、高速道路、ワインディングを含め、オフロードまでこのバイクを楽しませてくれました。また、このサイズならよりオフロード向けのリプレイスタイヤも選びやすいことも魅力です。

海外ではサスペンションストロークを伸ばし、標準から7リッター増量した23リッターの燃料タンク(左右別体)を搭載したバリエーションモデル、「テネレ700ワールドレイド」の話題もあるものの、現行型もデビュー以来変わらぬバランス感で魅力があることを、今回再確認できたのです。
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ヤマハ「Tenere 700(テネレ700)」(2022年型)の価格(消費税10%込み)は128万7000円、カラーバリエーションは取材車両のラジカルホワイトのほか、ディープパープリッシュブルーメタリックとブラックメタリックの計3タイプ設定です。
Writer: 松井勉
モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

















