【インタビュー】ミシュランが目指すサステナビリティとは 電動バイクレース「MotoE」との関係

電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』にサステナブル素材を使ったタイヤを供給する「ミシュラン」は、いつからサステナビリティへの取り組みを開始したのでしょうか。そして、今後どのようにサステナビリティの目標を達成していこうとしているのでしょうか。MotoE第1戦フランス大会(MotoGP第5戦フランスGP)の現場で話を伺いました。

ミシュランのサステナビリティ(持続可能性)への取り組み、その始まり

 電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)に、サステナブル(持続可能な)素材を使ったタイヤを供給するフランスのタイヤメーカー「ミシュラン」は、いつからサステナビリティへの取り組みを開始したのでしょうか。そして、今後どのようにサステナビリティの目標を達成していこうとしているのでしょうか。MotoE第1戦フランス大会(MotoGP第5戦フランスGP)の現場で、二輪モータースポーツマネージャーのピエロ・タラマッソさんと、トピック・リーダー・イノベーションのアンナリサ・デ・シモーネさんにインタビューを行ないました。

ミシュランがサステナブル素材を使ったタイヤを供給する電動バイクレース「MotoE」
ミシュランがサステナブル素材を使ったタイヤを供給する電動バイクレース「MotoE」

「ミシュラングループの目標は、レース用タイヤ、市販タイヤという全てのタイヤのサステナブル素材を、2030年までに40%、2050年までに100%を達成することです」

 二輪モータースポーツマネージャーのピエロ・タラマッソさんは、そう語りました。2021年、ミシュランは2050年までにタイヤを100%サステナブルにすると発表しています。

 ミシュランは、2019年よりタイヤサプライヤーを務めるMotoE(※2019~2022年はFIM Enel MotoE World Cupとして開催。2023年よりWorld Championshipに格上げされた)に、サステナブル素材を使ったタイヤを供給しています。

 2023年シーズンに供給するタイヤは、フロント34%、リア52%のサステナブル素材が使用されているとのことです。

二輪モータースポーツマネージャー、ピエロ・タラマッソさん
二輪モータースポーツマネージャー、ピエロ・タラマッソさん

 それでは、ミシュランがサステナブル素材のタイヤに取り組みを開始したのはいつなのでしょうか。

「私たちは1992年、シリカを使用した“グリーンタイヤ”を発表しました。シリカを初めて採用したことでさらに距離を延ばすことができ、転がり抵抗も少なくなりました。また、燃費が良くなりました」

 そう答えてくれたのは、トピック・リーダー・イノベーションのアンナリサ・デ・シモーネさんです。つまり、ミシュランのサステナビリティの取り組みとしては、30年以上前に第1歩を踏み出していたことになります。

「これが、私たちが(サステナビリティに向けて)行なった切り替えの始まりです。その後、少しずつ、イノベーションのステップはサステナビリティへと入っていきました」

 モータースポーツに関してもターニングポイントがありました。

「モータースポーツでさえも、ある時期にスイッチが入りました。それまでは勝つためのタイヤでしたが、今は2輪でも4輪でもチャンピオンシップのタイヤはワンメイクで、(MotoGPでは)私たちのワンメイクです。モータースポーツを(サステナビリティを)加速させるものとして利用することについて考えています。より速く走るためではなく、サステナブルのために新しいイノベーションを進めるためです。モータースポーツの本質の変化、モビリティの考え方の変化です」(シモーネさん)

「(MotoEのリアタイヤの割合は)すでに52%となっています。つまり予定よりも進んでいるのです。それがモータースポーツの役割です。モータースポーツは、これらの目標を達成するための解決策を見つけ、革新を加速させるものです」(タラマッソさん)

 モータースポーツは「サスティナビリティ達成に向けて加速度的に促進させる」役割を担う存在になっているということです。これは、新しいモータースポーツの役割と言えるのかもしれません。

サステナブル素材とは、何か?

 では、サステナブル素材とはどのようなものを指すのでしょうか? シモーネさんは、こう説明します。

トピック・リーダー・イノベーションのアンナリサ・デ・シモーネさん
トピック・リーダー・イノベーションのアンナリサ・デ・シモーネさん

「今日では、サステナブル素材についてこうだ、というレギュレーションはありません。そこで、私たちは透明性の高い選択をして、サステナブル素材と呼ばれるものや、再生可能な素材、リサイクルされた素材を選択しました」

「素材は自然由来のものですが、それだけでは不十分です。再生可能でなければなりません。なぜなら、ガソリンも自然から生まれたものですが、再生可能ではなく、サステナブルではないからです」

「例えば、天然のゴムは木から採れるものです。また、ヒマワリ油は再生可能なもので、栽培できます。また、柑橘類、レモンやオレンジの廃棄物もあります。それはレジンを作るのに役立ちます」

 そして、サステナビリティにとって重要なパートのひとつはリサイクルです。

「リサイクルもまた、サステナブルという観点にとって非常に重要だと思いますが、リサイクルはどのように行われているのでしょうか?」と聞くと、タラマッソさんは「そうです。とても重要です」と肯定し、「使用したタイヤはファクトリーに持っていき、1%であっても新しいタイヤに再利用します」と言います。

 リサイクルについて、シモーネさんがより詳しい解説をしてくれました。

「廃タイヤから出るカーボンブラックもリサイクルされています。廃タイヤを熱分解オーブンに入れ、大きな熱で加熱して、戻ってきたものをタイヤに使うことができます」

「サステナブル素材であることは重要ですが、いま以上にエネルギーを使用することなくそれらを生産しなければなりません。環境に悪い影響を与えてしまいますからね」

「多くのCO2によって環境に悪影響を与えないことも重要なのです。私たちのグローバルなアプローチは資源を考慮することですが、同時に、資源から生産、輸送、使用、再生まで、タイヤのライフサイクルの全ての段階による影響も考慮しています」

2050年、サステナブル100%を達成するためには

 現在、ミシュランはMotoEタイヤにフロント34%、リア52%のサステナブル素材を使用しています。2050年までにその割合を100%にすることが、ミシュランの目指すところです。どのように達成するのでしょうか。

サステナブル素材を使ったMotoE専用タイヤ
サステナブル素材を使ったMotoE専用タイヤ

 シモーネさんは「私たちは新しいテクノロジーを使わなければなりません」と言います。

「その新しいテクノロジーは今も存在していますが、次のステップはそれを産業的な規模でスケールアップさせることです。そのテクノロジーは廃棄物から出発します。そしてそれらを使うことで、オリジナルの素材に戻すことができるのです」

 新しいテクノロジーについては「考え方としては、ケーキがあるとして、そのケーキを卵や花に戻すというようなものです。それらを最初のケーキと同じように、また新しいケーキに使うことができます」と説明しました。作られたものが原料に戻り、また原料として使用できるようになるというのです。

「つまり、エンドレス・ライフなのです」(シモーネさん)

 このような取り組みを続けるミシュランでは、すでに市販タイヤについてもサステナブル素材が使われています。

「現在、私たちのタイヤ全体の平均で30%はサステナブル素材が使われています。平均というのは、飛行機、土工機械、トラック用などを含めて30%です。クルマ用のタイヤを例に挙げると約20%で、バイクは約10%です」(シモーネさん)

 ミシュランのタイヤは、サステナブル100%を目指して進化、変容していくのでしょう。

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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