電動バイクが行き交うMotoGPパドックを歩く 気になったのは「音」のこと
2023年シーズン、取材に赴いたMotoGPのパドックで気になったのは、移動手段として使われている多くの電動スクーターです。そこには可能性があり、デメリットもありました。それは、今の電動バイクが抱えるものでした。
多くの人で賑わうMotoGPパドックを、静かに走る電動スクーター
MotoGPが開催されるサーキットのパドックは、とても広いです。わたし(伊藤英里)は、2023年シーズンのうち9戦、MotoGPの取材に赴き、行くたびにパドック全体をぐるぐると歩きました。そんな経験を通しても、「広いなあ」と思います。パドックは、大きなトレーラーや巨大なホスピタリティによってエリアが分けられていて、街のような規模なのです。

そんなパドック内の移動手段として、スクーターや自転車、電動キックボードなどが使われています。そこに、2022年から感じている変化がありました。パドックを走るスクーターの、電動化です。そしてそのパーセンテージは、2023年になってさらに高くなったように思います。
確かに、電動スクーターはパドックでの移動手段として最適なのかもしれません。現在の電動バイクが抱える航続距離、充電時間という課題は、パドックを走る限りはさほど問題にはならないでしょう。パドックが広いとは言っても、1日に数十kmを走るわけではありませんから。
昼間に短い距離の移動で繰り返し使い、夜間に充電する。今の電動バイクとして、理想的な使い方かもしれません。わたしは乗る側ではないため、あくまでも様子を見ている限りではありますが。

ただ、電動スクーターが走るパドックの中を「歩く側」として、ネガティブなポイントを挙げるとしたら、それは「音」なのです。
電動スクーターは、走行音がとても静かです。正面から走って来たときは視認できるので問題ないのですが、後ろから来ているときは、全くと言っていいほどわかりません。気付くと数cmの距離まで来ていて、驚いたことが何度もありました。
パドック内で電動スクーターを利用するのは、ライダーやチームのスタッフ、フォトグラファーなどです。パドックを走るのは、とても慣れた様子です。

余談ですが、ライダーがパドックをスクーターで走る姿を見ていても、「さすがだなあ」と、ため息をつきたくなります。例えば日曜日のパドックなどは本当に人が多くて、歩いて進むのも一苦労なのですが、そんな中を、スクーターを手足のように操って、的確に素早く「ライン」を判断し、スルスルと走っていくのです。
そんな「パドック走りの猛者」の中を歩くので、わたしは常に背中にアンテナを張ることになりました。
しかし、パドックには観戦に来たたくさんのファンもいます。その姿を見ているだけでほほえましい、ファビオ・クアルタラロ選手のリュックサックを背負った少年が父親と並んでウキウキと歩いているし、車椅子でゆっくりと移動する人もいるのです。

わたしは以前から、電動バイクにおける今後の課題のひとつは、「静かすぎること」であると考えています。パドックでもそれを感じたことは、事実です。
ただ同時に、MotoGPのパドックの様子は、電動バイクの可能性であるとも感じました。MotoGPは、パドックでも「走る実験室」としての役割を果たしているのかもしれません。
MotoGP カタルーニャGP初日、パドックをぶらぶらと。 写真はチームのホスピタリティが並ぶエリア。何度見ても、「このホスピタリティ群がサーキットからサーキットへ移動するんだよなあ……」と感心してしまう。とても大きくて豪華なんです。ちょっとした街みたい。すごいよなあ。pic.twitter.com/93BMRXGq8J
— eriito_伊藤英里(@moto_writer110) September 28, 2023
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。















