カワサキ「Z2」再生 旧車ならでは「ポイント点火」をメンテナンス 〜日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承〜Vol.3
メイド・イン・ジャパンのモーターサイクルを代表する一台として、誰もが認める存在なのがカワサキの型式Z1/Z2シリーズです。バイク仲間のそのまた友人が、長年、所有し続けてきた1975年式を購入して、必要な個所のメンテナンスを実践しつつ、将来的にフルレストアで仕上げるのが、この企画です。
日常点検や洗車でも変わるバイクコンディション
車検が1年近く残っていたので、いきなり分解してフルレストアへ取り掛かる前に、車両コンディションが、いかがなものか!? 確かめておこうと思いました。近所で試運転を繰り返しつつ、時折、ショートツーリングへも出掛けて、様々な確認をしました。特に、気になる出来事は無く、走りもいたって普通のバイクでした。

旧車というと、何かしらトラブルが多い印象が否めません。しかし、日常的な点検やメンテナンスをしっかり行われてきた車両なら、例え1970年代のモデルでも、トラブルが少ないというのがぼくの経験値です。
他人のバイクに触れたり、試乗させていただく機会がある時など、特に、自分の愛車と同じモデルに触れたり試乗できる機会があれば、いろいろ気が付くことがあると思います。跨った時のシートの感触にも、硬いとか、やわらかいなどがあるはずです。
また、クラッチレバーを握った時の重さは、想像した以上に違っていたりするものです。お互いにノーマルエンジンで、強化クラッチスプリングなど組み込んでいない状態でも、レバーを握る重さに違いを感じることが多いです。
原因のひとつにはクラッチワイヤーのコンディションがあります。インナーケーブルとアウターガイドの摺動抵抗が、内部の汚れなどで大きくなってしまい、レバーを握る操作に、多くの握力が必要になることもあります。
また、クラッチレバーとレバーホルダーの支点部分の潤滑が悪く、作動性が低下しているケースもあります。ピボット(支点)部の潤滑が悪く、レバー側の支点ピン穴が拡大してしまい、楕円に擦り減っていることも珍しくありません。そうなると間違いなくレバーの操作性が重くなってしまいます。
そんな状況にならないためにも「気が付いたら」というよりも「気が付く前から定期的に」対処しておくことが重要になります。日常点検で気が付いた必要性に応じ、定期的なメンテナンスを実践することで、愛車のコンディションは、常に心地良く保つことができるようになります。
すべての作業をバイク屋さに任せられる生活環境なら良いですが、必ずしもそうではないケースが多々ありますので、大切な愛車をコンディション良く乗り続けたいのなら、ある程度は、オーナー自身が日常点検と定期的メンテナンス(グリスアップなど)を実践するべきだと言えます。
気持ち良いスロットルフィールを得るのに大切な点火時期
エンジンコンディションを左右するのが点火時期です。「良いガソリン(混合気)」「良い圧縮」「良い爆発」が揃って、初めて調子が良くなるのがエンジンですが、良い爆発を司っているのが点火時期です。

カワサキZ2型のような旧式大型バイクの点火系の多くには、ポイント(コンタクトブレーカー)制御式のバッテリー点火車が多いです。イグニッションコイルに流れる電流を、ポイント接点の断続で制御することで、スパークプラグに着火するのがこの点火方式で、エンジン回転の上昇と同時に点火時期を早めないと、気持ち良くエンジンは回転上昇しません。そんな点火時期を機械的に早めている部品が、通称ガバナーと呼ばれる「スパークアドバンサー」になります。

ここでは「機械的」という部分に注目します。機械的作動部分が不調になると、エンジンコンディションは激変します。
例えば、グリスが固着してポイントカムの作動がエンジン回転の遠心力に追従しなくなってしまうと、エンジンの吹けが著しく悪くなり、スピードも出なくなります。

また、雨天放置していたような車両や、過去に水没歴がある車両などでは、アドパンサー本体の軸芯とポイントカムの摺動部分がサビで固着してしまい、エンジンコンディションを低下させる原因にもなります。

エンジンの回転上昇による遠心力で開く2個のウエイトに対して、戻し(ウエイトの閉じ)は、コイルスプリングの反力で行っているため、スプリングが折れて噛み込んでしまい、ポイントカムが作動できなくなってしまうトラブルケースも過去に経験したことがありました。
いずれにしても、この機械式アドパンサーが正しく作動しないと、エンジンコンディションは大きく変わってしまいます。旧式4ストエンジン車のオーナーさんは、こんな部分の定期的な点検と性能維持にも、気を配るように心掛けると良いでしょう。
Writer: たぐちかつみ
フリーランスライター。バイクも作る国内自動車メーカーの生産技術開発部門を経てから大人向けのバイク専門誌「クラブマン」誌へ合流。同誌のメンテナンスコーナーが縁で、1995年春には「モト・メンテナンス」誌を創刊し編集長を務めた。同誌休刊後の2019年秋からは、内外出版社にて「モトメカニック」誌を創刊。現在も同誌編集長を務めている。









