カワサキ「Z2」再生 4ストエンジンにとって重要なタペットを確認・調整 〜日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承〜Vol.4
メイド・イン・ジャパンのモーターサイクルを代表する一台として、誰もが認める存在、それがカワサキZ1/Z2シリーズです。バイク仲間の友人が所有し続けてきた1975年式を購入。将来的なフルレストアを目指して、まずは現状コンディションを確認中です。
4ストロークエンジンはタペットノイズに注目
「頑丈なエンジン」であることでも、たいへん有名なのがカワサキの初代空冷Zシリーズです。しかし、過信や油断は禁物!! このエンジンは頑丈だから大丈夫だと信じて走り続けてしまい「気が付いたときには……」といったお話しも決して少なくありません。

最悪の場合、主要エンジン部品が継続使用できない、修理もできない、いわゆる「お釈迦」となってしまうケースもありました。いくら頑丈なエンジンとはいえ、各部機能が正しく、正常に作動していなければいけなせん。
そんな正常作動の裏付けとなっているのが「エンジンオイルのコンディション管理」などなどの日常メンテナンスになります。このエンジンに限らず、4ストロークエンジンの場合は、高性能で評判が良いエンジンオイルを入れたから「長く使ってみよう……」ではなく、あくまで定期的な交換が大切です。この重要性を理解しないと、残念な結果になってしまうこともありますので、理想的には「早め早めのオイル交換」を実践するように心掛けましょう。
一般的に、きちっとしたメンテナンスされてきたバイクなら、タペットクリアランス(タペット:カムシャフトとカム山によって駆動される部品との間に備えられ、直線上の動作を伝達する部品)が大きく狂っているようなケースは少ないと思います。
しかし、過去に分解履歴があるような旧車エンジンの場合は、単純なミスで組み付け場所を間違えてしまったり、最終的な確認作業を行わないままで、ヘッドカバーを閉じてしまうケースも考えられます。ヘッドカバーを取り外すような機会があるのなら(例えばオイル漏れやオイル滲みの修理などで)、タペットクリアランスの確認くらいは必ず実施するようにしましょう。

タペットクリアランスの調整は、4ストロークエンジンにとって極めて重要な作業になります。隙間が広過ぎるとカチカチノイズが大きく、タペットシムがタペット本体の中で踊って(暴れて)しまい、結果としてコインのような調整シムが割れてしまうこともあります。

逆に、規定のクリアランス以下=調整シムが厚過ぎて、例えば常時吸排気バルブを押し下げ気味になっている状況が続くと、圧縮漏れが発生して、エンジンは本調子と程遠いコンディションになってしまいます。
例えば、分解したエンジンのバルブフェースとバルブシートの当たりが悪かったり、摩耗して減っていると判断し、バルブシートカット&擦り合わせを行った際は、組み立て実走後にバルブフェースがヘッド側へ僅かに潜り込みやすい傾向があります(実走行による擦り合わせ進行)。結果として、タペットクリアランスが調整時と比べて、やや狭くなってしまうことも当然にあります。

エンジンによって異なるタペット周辺の構造
カワサキ空冷Z1/Z2系エンジンは、厚さ違いの調整シムを交換することでタペットクリアランスを既定の範囲内に収めますが、例えばSOHCエンジンのロッカーアームには、アジャストボルトとロックナットがセットになっていて、ネジ込み調整とナットの固定でタペットクリアランスを維持する構造になっています。
スーパーカブやモンキーのエンジンがロッカーアームタイプになり、タペットシム調整タイプとは構造がまるで異なります。
「カチカチッ」と聴こえるタペットノイズが気になっていたので、ヘッドカバーを外したついでに、タペットシム調整を行いました。しかし、理想寸法の調整シムが手元に無かったので「そのまま組み立て復元してしまった」との例も多くあると思います。あるいは、調整シムの存在やメカニズム構造を理解せぬまま「復元してしまった」といったお話を、時折、聞くこともあります。

元通りに復元すれば良いのでは!? と考えがちなのがメンテナンス初心者です。自身のスキルだけではどうにもならないと感じた時には、経験豊富なショップやバイク仲間の先輩に相談することをおすすめします。4ストロークエンジンにとって、とにかく重要なのがタペットクリアランスの確認調整なのですから。
ちなみに、このエンジンは開けてビックリでした。走行距離が少ないとは説明を受けましたが、シム調整が必要な箇所は僅か1箇所だけでした。
測定時は「0・05mmのシックネスゲージがススーッと差し込むことができて、0・10mmのゲージは差し込むことができない」といった感じで確認することで、作業性は良くなるようです。この数値データは、あくまでノーマルエンジンのものであって、ハイリフトカムを組み込んだチューンドエンジンでは、それぞれの仕様で異なります。メンテナンス実践前には、メンテナンスデータ(メーカー発行のサービスマニュアルなど)を参考に、数値を明確にしておきましょう。

タペットクリアランスを確認する際には、1箇所ずつ作業を進めていくのが基本中の基本になります。一度に数箇所を調整しようとすると、組み込むシムの厚さを間違えてしまうことが多くあります。アウターシム式なので、1箇所ずつ確実に作業進行しましょう。
また、ベテランメカニックの調整方法を垣間見ましたが、ベース円周辺でタペットクリアランス測定する際には、一箇所ばかりで行うのではなく、僅かにクランクを回し、ベース円の位置を変え、シックネスゲージを滑らせながら測定するのがコツのようです。どうやらベース円にもバラツキがあり、一箇所に固執すると、正しい調整ができないこともあるそうです。
Writer: たぐちかつみ
フリーランスライター。バイクも作る国内自動車メーカーの生産技術開発部門を経てから大人向けのバイク専門誌「クラブマン」誌へ合流。同誌のメンテナンスコーナーが縁で、1995年春には「モト・メンテナンス」誌を創刊し編集長を務めた。同誌休刊後の2019年秋からは、内外出版社にて「モトメカニック」誌を創刊。現在も同誌編集長を務めている。








