厳しくも美しいヒルクライムと絶景のダウンヒル タイ北部を拠点に異国サイクリング
「人生で一度は登るべき山がある」そう語りたくなるタイ随一のヒルクライムコース『プータップブーク』は、標高差1400m、距離17kmの激坂と美しいスイッチバック、そして山頂からの絶景が魅力です。
タイ屈指の超級山岳に挑戦
サイクリストとして、これまでにどれほどの感動を味わったことがあるでしょうか。タイ北部にそびえる「プータップブーク」は、標高差1400m、111のカーブが織りなすタイ最高峰のヒルクライムコースです。その頂から眺める景色は、いままでヒルクライムで経験してきた全ての感動を超えてしまうかもしれません。

プータップブークは、山に囲まれたタイ北部のペッチャブーン県の中でも群を抜いた存在感を放ち、ペッチャブーン山脈の最高峰で標高は1768mです。その頂に迫る道路を自転車で登ることができます。
景色、ボリューム(距離・獲得標高)、平均勾配の厳しさ、よく整備された路面、九十九折の美しさ、カフェや宿泊施設・レストランの充実度、麓から見た山の存在感など、総合的に見て間違いなくタイ屈指のヒルクライムコースです。
まず目を奪われるのは、山肌を這うように続く美しいスイッチバックです。標高差1400m、全長17km、平均勾配8%以上という挑戦的なコースは走り応え十分です。
スタート直後から道中の多くの場所で山頂が視界に入るのも特徴的です。常に目指すゴールが見えることで、厳しさの中に高揚感が湧き上がります。
序盤は穏やかなアップダウンから始まり、5kmを過ぎたあたりで本格的なクライミングが幕を開けます。そこから先は、フィニッシュまで12km以上に渡って勾配9.5%前後の激坂が続きますが、スイッチバックごとに開ける景色は、モチベーションを奮い立たせ続けてくれます。
眼下に広がる平野、はるか遠くに見える街並み、その全てが一望できるのです。この雄大な景色は、森に覆われた日本の峠道とは異なり、荒野のような植生の広がるタイ独特の魅力と言えるでしょう。
山頂が近づくにつれて下界の景色がどんどん遠ざかり、過去に経験したことがない「高度感」を味わうことになります。最後の数kmは心拍数が限界に近づく中での戦いです。しかし、フィニッシュラインを迎えた瞬間に全てが報われます。
山頂の展望台では『111のコーナーを制した者』と書かれた石碑が出迎えてくれます。脚に感じる疲労感とともに、この言葉の重みが一段と深く響き、達成感が込み上げてきます。
展望台からの眺めは息をのむほど美しく、たったいま登ってきた道が眼下にくっきりと浮かび上がります。しばらくその大パノラマに心を奪われてしまうことでしょう。

山頂には、絶景を眺めながら休憩できるカフェや土産店、出店があります。ロッティ(タイ風揚げ焼きクレープ)やアイスクリームを買って、展望を楽しみながら糖分補給がオススメです。
また、道中に点在するレストランやカフェも魅力のひとつです。中でも筆者(才田直人)のオススメは「T’1994 Cafe」です。絶景のテラス席で、登ってきた道を見下ろしながら冷たいアイスラテを楽しむことができます。疲れた体に、タイ特有の甘いコーヒーが染み渡ります。
もうひとつご褒美があります。それはダウンヒルです。眼下に広がる絶景に吸い込まれるような、いままで感じたことがない興奮が味わえます。
「下界」との巨大な標高差によって生まれる「落っこちる」ような感覚を全身で感じることができるダウンヒルは、忘れられない経験になるでしょう。
筆者が訪れたのは1月で、タイでは12月から2月の乾季に当たります。晴天率が非常に高いため、絶景を存分に楽しむには最適な季節です。
このヒルクライムのためだけにタイを訪れる価値が十分にあると断言できます。人生のヒルクライムの目標に、この壮大なルートを加えてみてはいかがでしょうか。これまでにない感動が待っています。
Writer: 才田直人
1985年生まれ。学生時代に通学用に購入したロードバイクをきっかけにトレーニングを開始。サイクルロードレースの全日本選手権参戦やフランスでの選手生活、国内での社会人兼選手生活を経て2023年に引退。日本だけでなく東南アジアなど自転車旅をこよなく愛し、現在はワーケーション自転車旅を続けている。専門的な知識と経験でTV出演やヒルクライムイベントのアテンド、講師なども務める。











