もはや絶滅危惧ワード!? 旧車好きが口にする「キャブレターセッティング」ってナニ?
旧車でカスタムを楽しんでいる人が口にする「キャブレターセッティング」という言葉。なんだかマニアックな響きでちょっとやってみたい気もしますが、そもそも何をセッティングするのでしょうか?
2000年の半ばまで主流だった「キャブレター」
バイクのガソリンエンジンは、空気と燃料(ガソリン)を混ぜた混合ガスを爆発(燃焼)させてパワーを発揮します。その混合ガスを作る方法が、スペック表に「燃料供給装置」といった文言で記載されています。そして現在市販される公道用のバイクの燃料供給装置は、ほぼすべてが「電子制御式燃料噴射装置(フューエルインジェクション)」で、略して「FI(エフアイ)」と呼ばれています。

しかしバイクという乗りものが登場してから100年余り、2000年代初頭まで燃料供給装置は「キャブレター」が主流でした。
キャブレターは大気の圧力やエンジンが空気を吸い込む負圧などの物理現象を用いて混合ガスを作り出す装置です。
ちなみに、現在主流のFIは燃料ポンプやインジェクター、そしてガソリンの噴射量を制御するECU(エンジンコントロールユニット)が電気で稼働するのに対し、キャブレターは基本的に電気を必要とせず、かつ単体で機能する優れたパーツと言えます。
エンジンや吸排気系をカスタムしたら、混合ガスを最適にセッティング!
エンジンが爆発エネルギーを生むために必要とする混合ガスは、排気量や圧縮比、吸排気バルブの開閉タイミングなどエンジンの仕様をはじめ、回転数やアクセルの開度など様々な状況で、最適なガスの濃さ(混合比)や吸気量が求められます。
そのため、バイクメーカーはエンジンの仕様や車両のコンセプトに合った混合ガスを供給できるように、キャブレターを設定しています(標準セッティング)。
なのでバイクが完全にノーマルならば、敢えてキャブレターセッティングを行う必要はありません。
しかしエンジンの仕様や吸気系(エアクリーナーボックスやエアフィルターなど)、排気系(マフラーなど)をカスタムすると、エンジンが要求する混合ガスの濃さや供給量がノーマルの状態と変わってきます。
しかしキャブレターが標準セッティングのままだと、せっかくカスタムした効果を存分に発揮することができません。
そこで、カスタムしたエンジンや吸/排気系に最適な混合ガスに合わせる作業が「キャブレターセッティング」というワケです。
小さな内部パーツを交換!
キャブレターは物理現象によって空気とガソリンを混ぜて混合ガスを作るため、内部構造はけっこう複雑で、ガソリンや空気が通る細い通路などで構成されています。

そこでキャブレターのセッティング変えるには、ガソリンや空気の通路の太さを決める、「ジェット」と呼ばれる穴の開いた小さなパーツや、針のようなジェットニードルを異なる太さや形状のモノに交換したり、調整ネジを回すなど様々な作業を行います。
キャブレターの種類によって、セッティングを行える箇所も変わります。かつてはレースにも使ったケーヒンのFCRやミクニのTMRといった高性能なキャブレターはセッティングできる箇所が多く、緻密な調整が可能です。
ちなみにエンジンの排気量を拡大した場合は、大口径の高性能キャブレターに交換してベストなセッティングを行えば、かなりパワーアップする場合があります。
セッティングを行う箇所によって、スロットル開度の影響する部分が変わるので、実際に走って様々な開度や開け方(ジワッと開く、スパッと開くなど)を試し、スムーズに回転やパワーが上昇するかを確認します。そしてスムーズでない開度に影響するセッティング箇所を調整(ジェットの変更など)して最適なポイントを詰めていきます。
ただし1980年代のキャブレター車でも、排気量の大きなモデルは相応にパワーがありスピードも出るので、全域でベストなセッティングを出すにはシャシーダイナモと呼ばれるパワーやトルクを計測できるテストベンチに載せて、かつ空燃比(ガソリンと空気の混合比率)を計測してセッティング作業を行うのが理想的で、これは専門ショップに依頼する必要があります
単気筒や小排気量なら、比較的カンタンに楽しめる!
シャシーダイナモに載せての本格的なキャブレターセッティングは個人では無理ですが、最高出力や最高速度ではなく、スロットルの反応やパワーの出方を楽しむなら、実走でもある程度セッティングを出すことができ、実際に楽しんでいる熱心なライダーも少なくありません。
代表的なモデルとしてはヤマハ「SR400」(2008年までのキャブレター仕様)や、ホンダ「モンキー」(2007年までのキャブレター仕様)などのホンダの原付1種や2種の「横型エンジン車」ではないでしょうか。
「SR400」のような単気筒モデルなら、セッティング作業もキャブレター1個で済むし(4気筒だとキャブレターの着脱が大変だったり、4個作業する必要アリ)、高性能キャブレターも比較的手に届きやすい価格と言えます。
ホンダの横型エンジン車も同様の理由と、小排気量で馬力も低いのでセッティングによる性能の変化も存分に楽しめます。
そもそもキャブレター車に乗っていない人には関係の無いハナシではありますが、旧車に興味があったり、アナログ的なバイク趣味に没頭したいライダーには、キャブレターセッティングは恰好の楽しみ方のひとつ……かもしれません。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。












