勝利のジャンプは「ナックナック」!! ホンダ「CR250M」はマクグラス選手のスーパークロスマシンだ!

1988年から9年連続でAMAスーパークロスを制したマシンがホンダ「CR250」です。そして「CR」シリーズの鉄フレーム時代を締め括ったのが、ジェレミー・マクグラス選手が駆る「CR250M」でした。その栄光は華麗なジャンプの記憶と共に彩られています。

市販モトクロス用バイクで勝利した、マクグラス選手の「CR250M」

 ホンダのモトクロスマシン「CR250M」は、1996年アメリカのAMAスーパークロスシリーズでチャンピオンを獲得しました。世界の頂点を決めるモトクロスレースは2つあります。ひとつは世界モトクロス選手権(現在のMXGP)で、もうひとつがアメリカ国内シリーズ戦であるAMAスーパークロス(野球場などのスタジアムにコースを特設して行われるインドアモトクロス。以下:AMA-SX)です。

1996年にAMA-SXでジェレミー・マクグラス選手のライディングでチャンピオンを獲得したホンダ「CR250M」
1996年にAMA-SXでジェレミー・マクグラス選手のライディングでチャンピオンを獲得したホンダ「CR250M」

 どちらにも世界トップレベルのモトクロスライダーが出場しており、ツインピークスとなっています。「MXGPとAMA-SXのチャンピオンのどちらが速いのか?」というモトクロスファンの興味は今も昔も変わりません。

 MXGPでは世界で1台だけのファクトリーマシンも出場可能ですが、AMA-SXでは市販のモトクロスバイクに限定されています。この辺の事情はMotoGPとスーパーバイクの車両規定に近いものです。

 ちなみにモトクロス用バイクについてですが、国内4メーカーとヨーロッパの数社から市販されています。ナンバーや保安部品を装備しなしので、日本国内では専用コースでしか走れません。

 しかし北米には広い国土の中にオフロードパークなどが走る場所がたくさんあります。世界的にはレジャーとしてのオフ車マーケットは大きく、モトクロス用バイクとそれをベースにしたオフロード車も含めると、毎年何万台も販売されていることから、メーカーにとっては無視できないカテゴリーということになります。

 モトクロス用バイクは総じて走行性能を重視しており、エンジンは同じ排気量の公道用市販車に比べて大きなパワーを発揮します(1996年の「CR250R」は53ps、同年の「CRM250AR」が40ps)。

 前後サスペンションも大ジャンプをこなせる高性能なユニットが標準装備され、性能が人気に反映されるのでメーカーとしてもバイクの開発やレース参戦に力が入ります。

 AMA-SXに出場するバイクは、チューニングはされていますがベースは街のバイクショップで購入できるモトクロス用バイクと同じフレームやエンジンを使用しています。

エンジンは最高出力50ps以上を発揮。ステップやシフトペダル、フレームガード、ACGカバー(市販車はプラスチック)はファクトリーパーツ
エンジンは最高出力50ps以上を発揮。ステップやシフトペダル、フレームガード、ACGカバー(市販車はプラスチック)はファクトリーパーツ

 前置きが長くなりましたが、ここに紹介する「CR250M」は、1996年型の市販車「CR250R」をベースにしたアメリカン・ホンダチームのAMA-SX用のバイクです。

 ホンダが「CR」という車名を使用したのは1972年からです。「CR250R」は1981年型でプロリンクサスペンションと水冷エンジンを採用し、そこから数年でモトクロス用バイクの見本とも言える形態を確立しました。

 1988年型で倒立フォークを採用し、その後は熟成が進み、1997年からアルミフレームへとフルモデルチェンジ。つまり1996年型の「CR250R」は長く続いたホンダ「CR」シリーズの鉄フレームの最終形です。

 マクグラス選手の「CR250M」は、エンジンではクランクケースやシリンダー、フレームとスイングアーム、燃料タンクなど、市販車の「CR250R」と同じものを使用しています。一方、前後サスペンションはハイグレードなファクトリーパーツが装着されています。

 この年、ホンダは「CR250」とともに9年連続でAMA-SXのタイトルを獲得しています。マクグラス選手はその中で4回もチャンピオンに輝いており、当時のホンダ「CR」シリーズのイメージリーダーでした。

 マクグラス選手は勝利を確信した最終ラップの大きなジャンプで、片足をステップから離してバイクを横に振り出す「ナックナック」というトリックジャンプを見せてくれました。彼は「ショータイム」というニックネームでアイドル的な魅力もあり、アメリカンモトクロスのビッグレジェンドなのです。

 ちなみに、マクグラス選手の「CR250M」のベースとなったホンダ「CR250R」(1996年型)の日本国内での当時の販売価格は55万5000円です。

■ホンダ「CR250M」(1996年型)主要諸元
エンジン種類:水冷2ストローク単気筒ピストンリードバルブ
総排気量:249cc
最高出力:50PS以上
車両重量:98kg(乾燥)

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影

【画像】大ジャンプでファンを魅了!! マクグラス選手が走らせたホンダ「CR250M」(1996年型)を見る(10枚)

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Writer: 柴田直行

カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員

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