実際のバイク事故現場で、「5秒」の重要性を知る ヘルメット装着は摘発逃れのためじゃない

交通事故で致命傷となる頭部損傷。ヘルメットは、その頭部を守るためにあります。ライダーにとって最も重要なライフギアですが、正しい装着を怠ると、想像以上に簡単にヘルメットは吹き飛んでしまいます。事故に遭遇したライダーはどうなるのか。東京都江戸川区で起きたバイク事故の現場から考えました。

「死んじゃう!」「死んじゃう!」の絶叫

 スクーターと軽バンの衝突事故は、片側2車線の直線路で発生しました。主要幹線道路である都道315号線(蔵前橋通り)、江戸川区西小岩で起きた右直事故です。JR小岩駅に近く、スクーターは江戸川にかかる「市川橋」方面から直進。逆方向から進行する軽バンが右折しようとしてスクーターの進路をふさぐ右直事故だったと考えられています。

バイクとヘルメットの距離は10メートルほど。現場に居合わせた人が、警察が来るまで二次事故を防ぐ誘導をしていた
バイクとヘルメットの距離は10メートルほど。現場に居合わせた人が、警察が来るまで二次事故を防ぐ誘導をしていた

 目撃者はこう話します。

「ビルの看板が落下したかのような激しい音がして、最初は何が起きたかわからなかった。人が集まる先に目をやると、車道の真ん中に倒れたスクーターのそばで、ライダーが寝転がったまま、ピクリとも動かない。その瞬間を見ただろう歩道の女性が『死んじゃう、死んじゃう』とパニックになって叫んでいた」

 発生は9月12日19時30分頃。夕方の渋滞が終わり、交通量が少なくなっている頃でしたが、居合わせた人の救助がなければ、二次的な事故も考えられました。目立った外傷は確認されませんでしたが、前述の目撃者はライダーの様子が気がかりだったと話しています。

「ずっと寝転がっていて、自分で起き上がった後も話ができない状態。救急車が到着しても説明ができない。病院に向かう直前に救急隊員が警察官に向かって『話せるようになりました!』って呼びかけていた」

ヘルメットは簡単に外れる!! 正しい装着が身を守る

 事故直後の様子では、ライダーとスクーターは、ほぼ同じ場所に倒れています。ライダーはフルフェイスのヘルメットを着用していましたが、車体とは別の場所にありました。

 話を聞いた目撃者によると、ヘルメットを着用しない形で横たわっていたそうです。救護した人が移動させたことも可能性がありますが、事故の衝撃で脱落した可能性も考えられます。

 頭部の重さは体重の約10%です。投げ出されたライダーが打撲で大きなダメージを受けることが多いのですが、過去25年間の事故分析では、バイク乗車中の死亡者が減り続ける中でも、約30%のライダーのヘルメットが脱落していることが指摘されています。

 半キャップや顎のガードがないジェット型のヘルメットでは、風圧でヘルメットが浮き上がることがあります。フルフェイス型はヘルメット重量も比較すると重く、あごひもを装着し忘れても、なかなか気付かないことがあります。

 また、事故の衝撃がライダーに加わると、あごひもを締めていても、ヘルメットが飛んでしまうことがあります。顎とのあいだは、指1本が入るくらいで締め付けること、とされているのは、脱落を防ぐために重要なポイントです。

 前述のように、バイク事故はライダーが大きなダメージを受けて、事故当時のことを訴えることができないことがあります。ヘルメットは頭部損傷を防ぐだけでなく、事故の状況を当事者が記憶し、説明できる状態を保つ意味でも、とても重要です。

 ヘルメットのあごひも正しく締める手間は、わずか5秒ほどの短い時間です。ダメージを最小限に留める効果は、はかり知れません。

【画像】衝撃で簡単に外れる!? バイクと軽バンの右直事故・衝突事故の直後の現場を見る(5枚)

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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