昭和の個性派バイク【スズキ編】 攻めの独自コンセプトでジャンルの隙間を埋める!?

「旧車と言えば、やっぱり昭和!」大人気モデルも多くありますが、時代に埋もれた名車(迷車?)も数多く存在します。2025年で「昭和100年」を記念して、空前のバイクブームだった1970年代後半から昭和最後の10年(+α)にスポットを当てて、スズキの個性派バイクを紹介します。

昔からチャレンジングだったスズキ

 日本が空前のバイクブームに包まれた「昭和」最後の10年(1978~1988年頃)は、毎月のように新メカニズムやパワーアップしたニューモデルが登場しました。

 1970年代に4ストローク化に力を入れたスズキは、1980年代にラインナップを大幅に拡大し、「GSX1100S KATANA」やレーサーレプリカの草分けといえる「GSX-R」シリーズが人気を博しますが、それだけでは終わりません!!

 2025年は「昭和100年」ということで、ザックリ年代を追ってスズキの個性派バイクにフォーカスします。当時の中型免許(中型限定自動二輪)で乗れた小型2輪クラスまでを中心に、スズキならではの「+α」もピックアップします。

ロータリーエンジンを搭載する「RE-5」(1975年)は、排気量497ccのシングルローターが62馬力を発揮。輸出専用モデルで国内販売されなかった
ロータリーエンジンを搭載する「RE-5」(1975年)は、排気量497ccのシングルローターが62馬力を発揮。輸出専用モデルで国内販売されなかった

 いきなりの「+α」(1978年以前・大型バイク・輸出専用モデル)ですが、スズキは次世代スポーツとしてロータリーエンジンを搭載した「RE-5」を1975年に発売しました。

 ロータリーエンジンは、ほぼ同時期にホンダやヤマハ、カワサキも開発を進めていましたが販売には至っておらず、バイクで市販化&実用化できた日本メーカーはスズキだけです。

 国内販売されなかったこと、後継モデルが存在しないことが残念です。

レジャーバイクも独自路線!?

 1970年代後半は、ファミリーバイクやレジャーバイクもラインナップが拡大しますが、スズキが1979年に発売した「EPO(エポ)」は、かなり変わったデザインでした。

 基本構造的には当時のスポーツバイクでメジャーだったセミダブルクレードルフレームですが、あえてフレームを表に出したスタイルが斬新です。マニアックな人気があり、1993年に復刻版の「PV50」が登場し、1999年まで生産されました。

1979年発売の「EPO(エポ)」は、フレームのパイプがぐるりと車体を囲む独特のスタイルに2ストロークの50ccエンジンを搭載
1979年発売の「EPO(エポ)」は、フレームのパイプがぐるりと車体を囲む独特のスタイルに2ストロークの50ccエンジンを搭載

 他にも、1982年に発売した「ファンファン」は、アンダーボーンフレームに小振りな燃料タンクを載せたヨーロッパのモペッドのようなスタイルが斬新でした……が、当時は足を揃えて乗るスクーターの人気が絶大で、激レア車になってしまいました。

 また同じく1982年には極太タイヤを履いたレジャーバイク「ウルフ(50cc)」が登場しました。初代は1969年に発売したレーシングマシンイメージの車体に、90ccおよび125ccの2ストローク2気筒エンジンを搭載した生粋のロードスポーツだったので、どちらかと言うと1970年代初頭の「バンバン(125/90/75/50cc)」シリーズの再来という感じで、なぜ「ウルフ」と命名したのか少々謎です。

 ちなみに、後の1988年に「WOLF(250)」、1989年に「WOLF50」が発売されますが、いずれも初代の正常進化版と言えるロードスポーツ車です。

 また1980年代初頭は、いわゆる「アメリカン」も人気が高まりますが、スズキは4ストローク単気筒396ccの「GN400E」を1980年に発売します。スリムなチョッパースタイルは魅力的ですが、販売面ではいまひとつでした。エンジン始動がキックスタートのみだったからでしょうか?

1984年に登場した「GSX550L」は、最高出力64馬力のハイパワーな4気筒エンジンを搭載し、前輪16インチ&モノショックのリアサスを装備する異色のアメリカン
1984年に登場した「GSX550L」は、最高出力64馬力のハイパワーな4気筒エンジンを搭載し、前輪16インチ&モノショックのリアサスを装備する異色のアメリカン

 そしてここで再び番外編(大型バイク)ですが、1984年に発売した「GSX550L」は一見すると人気のアメリカンスタイルですが、前輪は当時のレーサーレプリカがこぞって採用した小径の16インチです。アメリカンの前輪は大径タイヤが一般的なのですが……。

 しかもリアサスペンションは、スズキのスポーツ車ならではのモノショックのフルフローターサスペンションを装備しており、エンジンは排気量572ccの空冷4気筒で破格の64馬力を発揮します。ここまで尖がったアメリカンは珍しいのではないでしょうか。

「ザリ」とか「ゴキ」とか、愛称もスゴい!?

 1980年代のバイクブームは全ジャンルで盛り上がりましたが、なかでもオンロードスポーツの250/400ccクラスの競争が白熱していました。

 そこにスズキが投入したのが「GSX250E」と「GSX400E」です。エンジンは4ストローク並列2気筒で、当時このクラスでは革新的なDOHC4バルブを採用し、非常にパワフルで「GSX400E」は4気筒のカワサキ「Z400FX」やヤマハ「XJ400」より速いと言われました。

1980年発売の「GSX250E」と「GSX400E」は、角張ったスタイルから「ザリ(ザリガニ)」と呼ばれる。スタイルは同じだが、フレームは400のダブルクレードルに対し、250は専用のセミダブルクレードル
1980年発売の「GSX250E」と「GSX400E」は、角張ったスタイルから「ザリ(ザリガニ)」と呼ばれる。スタイルは同じだが、フレームは400のダブルクレードルに対し、250は専用のセミダブルクレードル

 また「GSX250E」はスタイルこそ兄貴分の400とそっくりですが、フレームは専用のセミダブルクレードルを採用して軽量化し、やはり4ストローク250クラスで突出した性能を誇りました。

 前期型と呼ばれる1980年発売のモデルは、角張ったデザインや真っ赤なカラーから「ザリガニ」を連想させ、「ザリ」と呼ばれました。

 そして1981年に「GSX1100S KATANA」が登場して世界的な人気を得たことから、1983年の後期型と呼ばれる「GSX250E KATANA」、「GSX400E KATANA」にモデルチェンジします。

 前モデルの角張ったデザインから丸く滑らかにデザイン変更しましたが、今度は燃料タンクの形状や純正カラーの黒×金が「ゴキブリ」を連想するということで「ゴキ」と呼ばれました。

 少々ヒドイ愛称のような気もしますが、人気漫画に登場して認知度を高めた影響もあり、近年の中古車市場では「ザリ」も「ゴキ」も、半ば正式名称化しています。

「東京タワー」じゃないよ! 「六本木」だよ!!

 1980年代の半ばには、ヤマハが「YSR50」(1986年)、ホンダが「NSR50」(1987年)といったGP500マシンを模したミニレプリカを発売し、これが後のミニバイクレース人気にもつながっています。そしてスズキも1986年に50ccの「GAG(ギャグ)」を発売していますが、こちらはコンセプトが異なります。

ライバルのミニレプリカと異なるコンセプトで攻めた、その名も「GAG(ギャグ)」(1986年)
ライバルのミニレプリカと異なるコンセプトで攻めた、その名も「GAG(ギャグ)」(1986年)

 まずエンジンは実用車の「バーディ」用がベースの4ストロークで、前後タイヤもより小径な10インチです(ヤマハ「YSR50」とホンダ「NSR50」は12インチ)。遊び心溢れる5種のカラーを用意し、なかでも「GSX-R750」風カラーのモデルはサイドカバーには「GSX-R750」同様に「SACS」の文字が入っています。

 しかし「GSX-R750」では革新的な油冷エンジンの「Suzuki Advanced Cooling System」を小さな文字で示していますが、「GAG」には「SUZUKI ADVANCED COMICAL SYSTEM」と書かれており、細部まで面白さを追求した作りになっています。

特異なスタイルに目を奪われるが、独自の冷却システムやリアサスペンションなど凝ったメカニズムやハイパワーエンジンを持つ「GSX-400Xインパルス」(1986年)
特異なスタイルに目を奪われるが、独自の冷却システムやリアサスペンションなど凝ったメカニズムやハイパワーエンジンを持つ「GSX-400Xインパルス」(1986年)

 そしてスズキの変わり種で外せないのが、1986年発売の「GSX400X IMPULSE(インパルス)」でしょう。

 同年のレーサーレプリカ「GSX-R(400)」と同じ新冷却方式SATCS(=シリンダーヘッドを水冷、シリンダーはフィンによる空冷、ピストンをオイルジェットによる油冷)のパワフルな4気筒エンジンを、赤く塗ったスチール製角パイプフレームに搭載。リアはモノショックのE-フルフローターサスペンションを採用して高いスポーツ性を実現しますが、何よりフレームから繋がるライトステーが目を惹きました。

 あまりに斬新なスタイルは「東京タワー」と呼ばれましたが、デザインを担当したのは「GSX1100S KATANA」でお馴染身のハンス・ムート氏で、コンセプトは六本木をイメージしたと言われています。

驚きのラインナップ!!

 1980年代半頃からはレーサーレプリカ全盛で、スズキでは2ストロークなら「RG-Γ」シリーズ、4ストロークなら「GSX-R」シリーズが有名です。しかし1980年代後半にはカウルを持たないネイキッドモデルなど、とくに250ccクラスはバリエーションを拡大していきます。

レーサーレプリカの「RGV250Γ」をネイキッド化し、アルミの極太フレームが目を惹く「WOLF」(1988年)
レーサーレプリカの「RGV250Γ」をネイキッド化し、アルミの極太フレームが目を惹く「WOLF」(1988年)

 まず1988年には「RGV250-Γ」からカウルを剥ぎ取った「WOLF(250)」が登場します。そして1989年には「GSX-R250R」からカウルを外したような「COBRA(コブラ)」が、他にも「GSX-R」系の水冷4気筒エンジンをベースに全く新しいデザインの「バンディット250/400」も発売されました。

 昭和64年(1989年)は、1月8日から「平成」に元号が変わるので実際のところ1989年発売のバイクは「平成のバイク」になるのでご容赦ください。

 ついでに、1990年にはまたしても「GSX-R250」エンジン由来の新型バイク「アクロス」が登場します。一見するとフルカウルのスポーツツアラーですが、燃料タンクに見える部分がフルフェイスヘルメットも入る容量25Lの収納スペースになっています。

 当時は「スポーツバイクでなぜ?」と疑問視する声もありましたが、実際は便利機能であり、現在のホンダ「NC750X」もこの形式になっています。

 そしてさらに+αの番外編(平成のバイク)ですが、平成初期の1992年に発売された「SW-1」も紹介します。特徴は……説明の必要も無いフルカバードのデザインです。

フルカバードの新世代バイク「SW-1」(1992年)は、各所の小物入れや静粛なベルトドライブ駆動など、デザインだけでなく作りも独特
フルカバードの新世代バイク「SW-1」(1992年)は、各所の小物入れや静粛なベルトドライブ駆動など、デザインだけでなく作りも独特

 エンジンは同社のオフロード系4ストローク空冷単気筒250ccエンジンで、冷却のためにオイルクーラーを装備したり、静粛でメンテナンスがラクなベルトドライブ駆動を採用しています。

 変速は5段リターン式ですが、靴の甲を傷めないように踏むだけで操作できるシーソー式のシフトペダルを装備したり、燃料タンク部分やリアの左右に小物入れを備えるなど、スクーターとスポーツバイクの良いトコ取りを狙ったのかもしれません。

※ ※ ※

 スズキは個性派バイクの宝庫(?)とも言われますが、とくに「昭和+α」の時代には様々なバイクがリリースされ、個性的過ぎて短命かと思いきや、意外と息の長いモデルも少なくありません。

 それにしても4気筒250ccのラインナップの多さは、いま見ると羨ましいとしか言えません。

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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