ヤマハ“V型4気筒”エンジンは1960年代から!! しかも2ストローク125ccクラスで世界チャンピオンに!!

1960年代の世界ロードレースGPでは、小排気量クラスの開発競争が最も熱く、沸騰していました。1968年にヤマハが導入した125ccクラスの「RA31A」は、2ストロークV型4気筒エンジンを搭載したスーパーマシンでした。

2ストローク125ccの技術的到達点!! 緻密なV型4気筒エンジン

 ヤマハは2026年シーズン中のMotoGPにおいて、V型4気筒エンジンを使用することを正式に発表しています。これによってMotoGPに参戦するマシン全てがV型4気筒エンジンになります。

 ヤマハの最初のV型4気筒エンジンは、世界GPのために特別に製作された250ccクラスのレースマシン「RD05」に搭載されていました。このマシンがレースに登場したのは1965年のイタリアGPでした。

 ヤマハが当時世界GPで使用したのは2ストロークエンジンです。当時の世界GPでは、2ストロークと4ストロークが同じ排気量で競い合っていました。メーカーによってさまざまな形式のエンジンがあり、どのバイクが速いか、メーカーの技術競争の最前線という様相は今も昔も変わりません。

 しかもこの時期のGPマシンは進化が早く、ヤマハの250ccマシンは空冷2気筒の「RD56」から、V型4気筒の「RD05」へ、さらに水冷へと次々にバージョンアップします。

1968年の世界GP125クラスチャンピオンマシン、V型4気筒エンジンを搭載するヤマハ「RA31A」
1968年の世界GP125クラスチャンピオンマシン、V型4気筒エンジンを搭載するヤマハ「RA31A」

 一方、ライバルのホンダからは250ccクラスに6気筒車と125ccクラスに5気筒車が、スズキからも125ccクラスに4気筒車が登場するなど、開発合戦はエスカレートしていきました。

 そこでヤマハが1967年に125ccクラスに投入したのがV型4気筒「RA31」です。全12戦中8戦で優勝したビル・アイビー選手がチャンピオンを獲得し、ヤマハに同クラスの初タイトルをプレゼントします。

 そして1968年に登場した発展型「RA31A」は、フィル・リード選手が乗り、ヤマハは2年連続の125ccクラスのタイトルを記録しています。

 現在では125ccのエンジンは単気筒が普通ですが、「RA31A」は4気筒で、しかもV型という常識はずれのハイメカニズムです。

 2気筒から4気筒と数が多くなると、その分だけ高回転高出力が狙えます。当時の125ccクラスでライバルに勝つためには、どうしても4気筒パワーが必要でした。

 V型の構成ですが、125ccの並列2気筒エンジンを水平向き2気筒と垂直向き2気筒を2階建てにレイアウトした250ccクラスのV4エンジンを搭載する「RD05A」という先輩バイクがありました。

 これをスケールダウンして125ccクラスのV4にしたのが、「RA31」と言われています。実際の見た目はV型ではなくL型ですが、挟み角が60度なので、やはりV型です。

 キャブレターはエンジン左右横向きに装着していますが、これはヤマハが得意としたロータリーディスクバルブと呼ばれるエンジン形式の特徴です。キャブレター配置の都合上、2気筒より増やすにはこの2階建て方式が有効です。

ラジエターの下に2気筒、後ろに2気筒の小さなシリンダーが確認できる。オレンジのプラグキャップが目印
ラジエターの下に2気筒、後ろに2気筒の小さなシリンダーが確認できる。オレンジのプラグキャップが目印

 排気チャンバーは、水平側は下から後方へ、垂直側は後方排気でテールカウル横に配置されます。

 4ストロークと異なりVバンクの間には何もなく、ラジエターを抜けた熱い空気がキャブレター側へ影響しないよう導風板が設けられています。

「RA31A」の垂直側2気筒の後ろには、クランクなどにオイルを送り込む強制潤滑機構のポンプがあります。これはヤマハが世界GPに初参戦した「RD48」にも搭載されており、その後ヤマハの2ストローク市販車の多くに搭載された潤滑システム「オートルーブ」に繋がるものです。

 世界GPを統括するFIMは、日本メーカーの多気筒化、ハイパワー化に歯止めをかけるために、1970年から125ccクラスは2気筒という新規則でレースを実施します。

 おそらく今後も、125ccのV型4気筒エンジンが登場することはないでしょう。そういう意味では「RA31A」が最後のスーパーマシンとも言えますが、ヤマハのV型4気筒GPマシンは、ここで終わりではありません。

 1982年の世界GP500ccクラスに、ヤマハは他メーカーに先駆けてV型4気筒の「YZR500・OW61」を投入しました。これはその後にやって来る500ccクラスV4時代の幕開けを告げた画期的なエンジンでした。

 そして2026年のMotoGPでは、V型4気筒エンジンを搭載した新型「YZR-M1」が走ります。ヤマハの新たな章の始まりであるV4マシンの活躍に注目です。

■ヤマハ「RA31A」(1968年)主要諸元
エンジン形式:水冷2ストロークV型4気筒
総排気量:124cc
最高出力:44ps/16800rpm以上
車両重量:91kg(乾燥)

【取材協力】
ヤマハ・コミュニケーションプラザ(静岡県磐田市/ヤマハ発動機本社隣接)
※本記事中の写真は許可を得て撮影しています

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Writer: 柴田直行

カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員

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