チャンピオンにも輝いたBETAの4スト・エンデューロモデル「RR4T 350」の実力を検証

イタリアの「BETA」は、上質なオフロードバイクを製造するバイクブランドです。今回は最新モデルの4ストロークのエンデューロモデル「RR4T」シリーズ最小排気量モデル「RR4T 350」にジャーナリストの松井勉さんが試乗します。

エンデューロGPでチャンピオンに輝く「RR4T350」

 イタリア、ベータ社が送り出すエンデューロマシンは、大別すると2ストロークエンジンを搭載したRR2Tシリーズと、4ストロークエンジンを搭載したRR4Tシリーズに分けられます。

 ここに紹介するRR4T350は、同社がラインナップする4ストモデルの4機種、350/390/430/480㏄の中でもっとも排気量が小さいモデルなのです。

イタリア、ベータ社の4ストローク・エンデューロマシン「RR4T350」
イタリア、ベータ社の4ストローク・エンデューロマシン「RR4T350」

 意外に思ってKTMやハスクバーナ、その他多くのエンデューロバイクブランドに用意されている4スト250クラスのモデルがなぜベータのラインナップにないのか、ベータモーター ジャパンに尋ねました。すると「ベータの開発者は、4ストローク250㏄エンジンだと、ベータが求めるベータにならない、というのが250をラインナップしない理由だそうです」と教えてくれました。

 ベータは、エンデューロシリーズの最高峰でもあるエンデューロGPで4ストローク450㏄以下のモデルで競われるE2クラスにおいて、RR4T350を走らせたイギリス人ライダー、スティーブ・ホルコムのライディングによりチャンピオンを獲得。

4ストローク450㏄以下のモデルで競われるエンデューロGP E2クラスでチャンピオンを獲得したスティーブ・ホルコムとBETA「RR4T350」
4ストローク450㏄以下のモデルで競われるエンデューロGP E2クラスでチャンピオンを獲得したスティーブ・ホルコムとBETA「RR4T350」

 2020年シーズンはCOVID-19の影響でシリーズ開幕が9月になる異例の展開ながら、数戦に圧縮されたシーズンを着実に戦い、ベータとしては初となる4ストロークエンジンによるタイトルを獲得したのです。

 参戦するのはファクトリーチームなものの、市販車をベースにアップデイトしたマシンで戦う部分は、WSS(スーパースポーツ世界選手権)やWSBK(スーパーバイク世界選手権)と同様。市販車のポテンシャルの高さがそのまま反映されるだけに、すでにポテンシャルの高さはお墨付き、と言えるのです。

ベータ製4ストローク・エンデューロマシン「RR4T350」。2022年モデルではECUセッティングやクラッチスプリングのダイヤフラム化が果たされています
ベータ製4ストローク・エンデューロマシン「RR4T350」。2022年モデルではECUセッティングやクラッチスプリングのダイヤフラム化が果たされています

 そのベータRR4T350の2022年モデルに施された改良点としては、エンジンマネージメントの要、ECUセッティングを最適化。スイッチ一つでドライバビリティーを、レイン、ドライモードに変更でき、より明確なマッピングを採用したほか、クラッチパックの圧着に必要なクラッチスプリングにダイヤフラム(コイルバネではなくサラ状の形をしたバネ)を採用し、レバー操作力の低減と確実な既コントロール性をアップ。駆動力の伝達容量もアップさせています。

 また、エンデューロというオフロードレースでの使用を前提としているだけに、ダイヤフラムのプリロードを簡単に変更できる機構を採用することで、走る場面や好みでセッティングが可能。
 
 さらに、前後のザックス製サスペンションのセッティングも煮つめられています。リアショックには圧側減衰圧調整にオフロードでは重要なストロークスピードの低速/高速、双方の調整ダイヤルを設けたことで、路面を問わずセッティングの合わせ込みがしやすくなっています。

ベータ製4ストローク・エンデューロマシン「RR4T350」に乗る筆者(松井勉)
ベータ製4ストローク・エンデューロマシン「RR4T350」に乗る筆者(松井勉)

世界レベルの高さに触れた瞬間

 ワールドタイトルを獲得し、さらに伸張した性能を持つベータRR4T350。意気揚々とテストライドしたいものの、当日は昼まで降り続いた雨でコースは溶けたチョコソフト状態。つまりドロドロです。マキシス性のオールパーパス路面用タイヤを前後に履くベータに跨がり、いざコースへ。

ベータ製4ストローク・エンデューロマシン「RR4T350」に乗る筆者(松井勉)
ベータ製4ストローク・エンデューロマシン「RR4T350」に乗る筆者(松井勉)

 RR4T350の第一印象はこんなコンディションにもかかわらず、極めて乗りやい! 450マシンを向こうに回して戦っただけに、350だけどピーキーなほどパワフルなのでは、という見立ては見事にハズれ、高回転まで振動が少なく、アクセル開度に合わせ必要なトルクが送り出される掴みやすいパワー特性に安心します。 

 パワーデリバリーも想像しやすい着々と力感が増すエンジンで、ドカンと洪水のようなパワーが出ることがありません。だからこそ路面を掴みつつ前進する……!!

 ミッションのタッチはカチリとして硬くなく、シフトストロークも適度。クラッチの切れ、操作性もバツグン。とても乗りやすい!

 その印象と細身の車体、考え尽くされたボディー形状の車体と相まって、滑りまくるコンディションでもバイクをホールドしやすいのも嬉しいニュースです。コンペティションマシンですから、長いサスペンションストロークと最低地上高の高さも相まって足付き性など語るまでもありませんが、軽く細身の車体はけして足付き性が悪い、と言うわけではありません。まっすぐ足が下ろせるので、地面は掴みやすい印象です。

ベータ製4ストローク・エンデューロマシン「RR4T350」と筆者(松井勉)
ベータ製4ストローク・エンデューロマシン「RR4T350」と筆者(松井勉)

 後輪は常に適度にスリップしつつも、ビギニング(初期)領域からスムーズな前後サスペンションの恩恵もあり、足回りは突発さのない路面追従性を発揮してくれます。数周するうちに世界チャンピオンのベースマシンがまるで我が愛車のような一体感すら覚えることに。

 正直、フレーム剛性やペースを上げてのサスペンション性能を語れるほど攻められないコンディション。ブレーキ性能も、レバーやペダルにそっと触れる程度しか使いこなせません。なにせ、ドロドロのうごめく路面の上を泳ぐように走ることで精一杯。

 そんな中でもタイトターンではカチっとしたハンドリングを見せてくれるだけに、周回するほど耕されソフトになる路面でもしっかりと方向性を維持できます。レイン/ドライのマップ変更もこの日は試すべくもなく終了しましたが、ベータとベータが取った世界の一端に触れた思いだったのは確か。

 唯一アクション的に飛べたジャンプの着地でシュンと衝撃を吸収するその余力と懐の大きさに感心しつつ、試乗時間を終えたのです。

 これを全開にできるコースで真っ向対峙してみたい。正直ドロの海を走りながらそんな妄想をするのでした。RR4T350は、それほど全体のバランスが取れ、高い性能をライダーが容易に引き出させるようまとめ上げた様子が伝わるバイクだったのです。

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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