不動車のホンダ「ベンリイC92」をエンジンのプロがレストア!車体側各部の不具合点検と修復を行います【vol.9】
老舗内燃機屋「井上ボーリング」で、年間700台ものヘッド再生を行うベテランヘッド技師が、不動車となったホンダ「ベンリイC92」の再生とモディファイを行う連載。第9回目は、エンジンを降ろしたままの状態である車体側について、各部不具合の点検と修復を行います。
ステアリングセンターに引っ掛かりがあるステム
車両を引き取ってまず気になっていたのが、ステアリングステムです。
センタースタンドを立てて前輪を浮かせた状態でハンドルを左右に切ると、センター部分に明らかな引っ掛かりがあって、左右10度くらいで手を離すと勝手にセンターに収束します。
まさかそんな機構が付いているのか?と疑い分解してみると、なんとステムナットが閉まっておらず、手で回ってしまう状態で、ステムベアリングにはくっきりと打痕が出来た状態でした。

長い車歴のなかで、いろいろあったのでしょう。無事故車という事は無いようです。そういった意味でもう一つ痕跡が。リアブレーキペダルの取り付け軸がこんなに曲がる?という状態。この部分は、3人掛りの力業で修正しました。

ちなみに、ステムベアリングに関してはタイ製リプロパーツを準備していましたが、思わぬ問題が発生。ステムシャフトに軽圧入するインナーレースの内径が大きく、ガタが有ったのです。
また、純正のアウターレースは上下それぞれが別サイズで、内径は下が大きく上は小さいのですが、リプロ品は2つ共小さく、このままではステムシャフトが刺さりません。そのため、無駄な手直しを余儀なくされました。
実は準備していたタイ製リプロパーツは軒並みこんな状態で、手直ししなければ使えないものばかり。アフターマーケットパーツにしても、やはり日本製は品質が高く、海外製はそれなりでしかない事を、思い知らされる事になりました。
リプロメインハーネスの修正
純正の電装は、いわゆるこけし型端子と言われる独特な形状で、嵌めづらく抜きにくい困りもの。さらに60年が経過している為、端子の錆やケーブルの硬化が進み信頼性が低い状態です。
一方の現代規格の端子が使われたリプロハーネスはありがたい製品なのですが、取り外した純正と見比べると明らかに間違って作られている部分があり、修正しないといけません。
さらに6Vのセレニュウムレクチファイヤを12Vの全波整流レギュレーターに変更する他、ウインカーリレー、イグニッションコイル、ホーン等も12V対応にする為の変更を行いました。

ウインカーリレーはLED対応で純正の取り付けステーに固定できる形状のものを購入し、イグニッションコイルは手元にあったスズキ「GS750」用の純正品を使用。
ベンリイC92用と同位置に取り付けできる様、ステーを製作していきます。

今回のレストアでは基本的に再塗装は行わない予定ですが、現状で塗装面の状態は比較的良好。アルミ部品の磨きとメッキ部分の錆落とし程度で当時のオリジナル感を生かした仕上がりとする為、長年のほこりと泥汚れのクリーニングでフレーム周りのレストアは完了とし、エンジンを積み込みました。
次回は昨年9月から設備保全で入社した電気設備のプロフェッショナル社員に気軽に依頼して、とんでもない重作業になってしまったヘッドライトのLED化を紹介します。
Writer: 市川信行(井上ボーリング ヘッド技師)
川越で創業70年の老舗内燃機加工屋「(株)井上ボーリング」で多種多様な4ストロークエンジンのシリンダーヘッドに関するオーバーホール作業を担当する加工技師。プライベートでもバイクのレストアを趣味としており、趣味を仕事に生かしてるのか仕事を趣味に生かしているのかよく判らないこの状況を楽しみながら、年間700台前後のヘッド再生をこなしている。









