スペックの定説を乗って確認 ホイールベースの長さで言われるアレやコレ、実際どうなのか?

バイクのスペック(仕様)には様々な定説があります。その定説(固定観念?)に注目し、スーパースポーツモデルを題材に「実際のところ、どうなの?」を体感してみることにしました。

スペックの定説を乗って確認、ホイールベース(軸間距離)に注目!

 バイクのスペック(仕様)には様々な定説があります。その定説(固定観念?)に注目し、スーパースポーツモデルを題材に「実際のところ、どうなの?」を体感してみることにしました。

ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」に試乗する筆者(松井勉)

 テストトラックには、ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」(以下、RR-R SP)、ヤマハ「YZF-R1M」(以下、R1M)、スズキ「GSX-R1000R」(以下、GSX-R)、カワサキ「Ninja ZX-10R KRT EDITION」(以下、ZX-10R)、BMW Motorrad「S1000RR Mパッケージ」(以下、S1000RR)の5台が集合。今回は「ホイールベース(前後車輪の車軸間の距離を指します)は短いほど旋回性には有利だ」という説を確認します。

 ちなみに、ホイールベースの距離が短い方が運動性に優れ、長いと安定方向になる、という概念があります。それを額面通りに感じるのか、実証実験してみました。テスト車のスペックを見ると、ホイールベースの距離が短い順に次の通りです。

■ヤマハ「YZF-R1M」1405mm
■スズキ「GSX-R1000R」1420mm
■カワサキ「Ninja ZX-10R KRT EDITION」1440mm
■BMW Motorrad「S1000RR Mパッケージ」1440mm
■ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」1455mm
※カワサキとBMWは同値

 R1MとRR-R SPでは50mmもの差があります。これはさすがに違いを体感できるか……?

 まずは最長のRR-R SPで走ってみます。緩く左に旋回しながらアプローチするヘアピン。その先にはまた曲率の違うカーブが待っている意地悪なカーブ。曲がりながら減速し、奥が回り込むカーブにアプローチする複雑な状況です。

 ここでRR-R SPはブレーキングのグリップや回り込む旋回性を感じながらアプローチします。後輪の位置は確かに後ろにあるようにも感じますが、意のままに走れる印象です。その先にあるタイトなクランク状の切り返しでも、重みや動きの遅れは感じません。なにより、低くワイドなハンドルバーと、今回の車輌の中でもっとも高く後方に位置するステップの上でライダーが体重移動をすると、余すこと無くその挙動をバイクが察知し、一瞬で向きを変え、しっかり曲がってくれる印象です。

 ギャップの吸収性も高く、オーリンズ製電子制御セミアクティブサスペンションの作動性の良さを実感するところです。

つづいてヤマハ「YZF-R1M」に試乗

 次にR1Mに乗り換えます。こちらもサスペンションはオーリンズ製電子制御セミアクティブを搭載。カウル周りがドライカーボン製となり、いかにも車体上部が軽そうな印象です。同じカーブで比較すると、なるほど、R1Mの方が後輪をお尻の下に感じます。

 左に旋回しながら減速、さらに寝かし込んで回るヘアピンでも一体感があります。サスペンションはRR-R SPよりもさらにソフトに吸収する印象で安心感があります。その先のクランク状の切り返しでも素直に走れる。

 テーマであるホイールベースの長さによる差異ですが、正直50mmの違いがナニかを生んでいる、というより、車体のパッケージの違いによるキャラクターの差、と言った方がしっくりきます。

 タイトな最終コーナーを曲がり、ワイドターンをしながら加速するメインストレートでもその印象は変わらず、甲乙付けがたいものでした。

 ちなみに2番目にホイールベースが短いGSX-Rで走ると、むしろRR-R SPよりも安定感があり、それをライダーが思いきって寝かし、切り返せる印象。重いというのではなく、ダイナミックにライディングできるから安心して楽しめる印象です。

スズキ「GSX-R1000R」に試乗。ホイールベースの定説とは違った印象を受ける

 また、ZX-10Rは国産の他モデルの良いとこ取りのような馴染みやすい印象で、軽快かつ安心感があり、キャラを掴みやすい。攻めの走りに自分の心が移行するまで時間がかからない。

 逆にZX-10Rと同じホイールベース値のS1000RRは、路面の変化に影響を受けやすく、まるで操縦感が違うバイクです。そのクイックさで見るならこれが一番とも言えるものの、挙動の速さに安心して身を委ねるまで、慣れるのに少し時間を必要とする印象です。

 結論として、単純にA車、B車のホイールベースの長さを比較しても、車体が持つ走りへのアプローチが異なるので、単純比較にならない、というものでした。なぜなら同じホイールベースのZX-10RとS1000RRですら、全く別の乗り味だったからです。

カワサキ「Ninja ZX-10R KRT EDITION」に試乗。ホイールベースが同じでもモデルが変われば特性も異なる

 これは乗り手の好み、走る場面によって印象が変わるはず。今回の路面、カーブでは、という限定付きの結果であることもご承知おき下さい。同じ車両で長いスイングアームを装着して比較したら、純粋に1台のバイクでホイールベースによる違いが見られたかもしれません。

 ちなみに、スーパーバイク世界選手権(SBK)で活躍するドゥカティ「パニガーレV4R」のスペックを見ると、RR-R SPをも上回り、なんと1471mm! R1Mより66mmも長いことになります。これもホイールベースの長い短いでは計れない、という証左のひとつかもしれません。

 ホイールベースの長さよりも、旋回性、挙動を生むエンジンの特性、そこに自分の走りを方がしっくりくるか、合わせやすいか、という視点で見るべきかもしれません。

【了】

【画像】スーパースポーツモデル5台を比較試乗してみた(10枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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