ふだんは250ccのオフ車に乗るライターがヤマハ「テネレ700」で林道ツーリングに行ってみた

ヤマハ「Tenere 700」は、2020年6月の国内販売開始前から注目を集めた人気の大型アドベンチャーバイクです。日本の林道をツーリングしてみました。

ビビりながらも意外と楽しい!? もっと腕に覚えがあれば……

 ヤマハ「Tenere 700(テネレ700)」は、本格的なオフロード走行ができるビッグバイクとして独特の存在感があり、国内メーカーのラインナップの中でも稀有な輝きを放っています。そのマシンで、林道ツーリングに行ってみました。

ヤマハ「テネレ700」に乗る筆者(野岸“ねぎ”泰之)。アドベンチャーモデルであり、オフロードバイクとしても高いポテンシャルを秘めている

 筆者(野岸“ねぎ”泰之)はバイクメディア業界に身を置いて30年以上、ツーリング雑誌を中心に執筆してきました。その間、取材で林道ツーリングにも相当行きましたし、自身でもヤマハ「TT-250R Raid」を所有しています。

 ただ、バリバリのオフロード乗りでもなく、モトクロスやエンデューロなどのレース経験もありません。そんな「たまにオフ車も乗って、林道にも行くよ」的なライダーの視点から、ヤマハの大型アドベンチャーモデル「テネレ700」での林道ツーリングレポートをしてみます。

 初めて対面した「テネレ700」の印象は「デカい!」「シート高い!」でした。でも、特徴的なLED4灯のヘッドライトや縦長のデジタルメーターは、ラリーマシンみたいでカッコ良くてシビれます。

 筆者は身長170cmで足は短め、試乗したマシンはローダウン仕様ではなくシート高875mmのスタンダードバージョンですから、乗る前からちょっとビビり気味。気合いで跨がってみると、お尻をずらせばなんとか片足のつま先が着くというまさにバレリーナ状態です(ちなみに本来の使い方とは違いますが、リアサスペンションのプリロードを最弱にすると1Gでの沈み込みが増えるので、足つき性は少し改善します。調整はダイヤルでワンタッチ)。

 走り出すと、ビッグバイクにしては軽い車重とオフ車特有の背筋を伸ばすポジションで、思いのほか快適です。ただ、一般道では信号待ちのたびに気を遣いました。歩道の縁石がこれほどありがたく感じるマシンに乗ったのも久しぶりです。

ヤマハのネイキッドモデル「MT-07」と同じエンジンを搭載しており、パワーは十分。高速道路で100km/h巡航は余裕

 まずは三浦半島のフラットダートを目指して、首都高から横浜横須賀道路に乗り入れました。すると、さっきまでの一般道と違い、大柄なボディとゆったりしたポジションが、とても快適に思えてきます。250ccクラスのオフ車が小さな漁船だとすると、ちょっとしたクルーザーぐらいに、パワーも乗り心地も段違いです。

 オンロードモデルの「MT-07」と同じのエンジンを搭載しているので、巡航はもちろん追越加速もパンチがあり、これならロングツーリングでも疲れが少なそうです。

 目指すダートはほぼフラットな砂利道といった雰囲気ですが、道幅が狭く、もちろんスピードを出すような道ではありません。

「テネレ700」はABSを標準装備しており、トラクションコントロールやエンジン特性を変えるライディングモードなど、アシストデバイスをあえて搭載していないのも特徴です。

 速度域の低いフラットダートなら、座ったままの状態でアクセルコントロールだけで走っても車体はとても安定しており、体を預けられる安心感があります。時折現れるタイトなコーナーでわざとガバっとアクセルを開けてみても、車体バランスがよく、きれいにテールを流すこともできて、姿勢が乱れて慌てることもありませんでした。ちょっとしたコーナーでこういう遊びができるのも、大排気量マシンならではの楽しみですね。

フラットダートではしなやかな足まわりのおかげでイージーライディングが楽しめる

 後日、今度は山梨の林道に出掛けてみました。ここは土と砂利が半々ぐらいで、道幅は1.5車線から2車線ぐらいでしょうか。ところどころにガレ場や水の流れで荒れた路面が出てくる感じです。

 見通しの良い直線やゆるめのコーナーで、スタンディングしながら少々ペースを上げて走ってみると、一般的な大排気量アドベンチャーモデルよりも車体の軽さが際立ちます。もちろん250ccクラスよりも重いのですが、フロント21インチ、リア18インチのタイヤサイズと、ストロークが長く動きも軽快なサスペンション、そして240mmというそこそこの最低地上高を確保しているので、純粋なオフロードバイクとしてライディングを楽しむことができました。

 アクセルワークだけでリズミカルにコーナーをクリアしていくと、まるでスキーのスラロームのような心地良さがあります。トルクとパワーを存分に感じる乗り味は、まさにビッグオフと呼べるものでした。

 しかし、道が荒れてくると少し状況が変わります。大きめの石を越えたり深いギャップに突っ込むと、マシンが左右だけでなく、上下に振られる挙動が大きくなります。車両重量は205kg、当然ですが250ccクラスより重い車体で重心も高いので、フロントが暴れてグラリとくると、予期せぬ方向にマシンが行こうとすることがあり、それを制御するのが大変でした。

大きめの石がゴロゴロしていたり、路面に縦溝や深いギャップ多くあるような林道では、車重がある分マシンが振られる挙動が大きくなりがち

 ただ、これは筆者がこのマシンを乗りこなせていないだけで、オフ車に乗り慣れているある程度のテクニックを持っている人なら、荒れた路面でもかなりダート走行を楽しめると思います。それだけこのマシンはオフロードバイクとしての高いポテンシャルを秘めているのです。

 体格や技術に自信がない人は、ローシートとローダウンリンクを装備した仕様を選べば、スタンダードモデルより約38mmも着座位置が下がるので、不安はかなり解消されるはずです。

「テネレ700」は、当初思っていたほど乗りこなすのが難しいジャジャ馬、というイメージではありませんでした。大荷物を積んでもパワーに余裕があるし、DC12Vジャックやヘルメットホルダーを標準で装備するなど、足つきの問題さえ解決すれば、林道はもちろんキャンプツーリングなども楽しめる素性のいいマシンだと感じました。

 シンプルながら走らせて楽しいビッグオフ、日本で乗るにはかなりマニアックな存在になるかもしれませんが、ダート好きなら1度は乗ってみてほしいマシンです。ちなみに価格(消費税10%込み)は126万5000円です。

【了】

【画像】ヤマハ「Tenere 700」で林道を走ってみた!(12枚)

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Writer: 野岸“ねぎ”泰之(ライター)

30年以上バイク雑誌等に執筆しているフリーライター。ツーリング記事を中心に、近年はWebメディアで新車インプレッションやアイテムレビューも多数執筆。バイクツーリング&アウトドアを楽しむ『HUB倶楽部』運営メンバーの1人。全都道府県をバイクで走破しており、オーストラリア、タイ、中国など海外でのツーリング経験も持つ。バイクはスペックよりも実際の使い勝手や公道での走りが気になるキャンプツーリング好き。

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