ヤマハ第1号車から67年目を迎えた伝統のエンジン ~2022年型「YZ125」開発陣に聞く、最新2ストローク事情(第1回/全4回)~

ヤマハは2022年型として、2ストロークエンジンを搭載するモトクロス競技車両「YZ125」を17年ぶりにフルモデルチェンジしました。国内2輪メーカー唯一となった最新2ストロークモデルについて、ライターの中村友彦さんが開発陣に話を聞きました(第1回/全4回)。

個人的には、2021年の最大のトピック

 微妙に時期を外した話題ですが、私(筆者:中村友彦)にとって2021年の2輪業界の最大のトピックは、モトクロッサーの2022年型「YZ125」用として、ヤマハが17年ぶりに排気量125ccの2ストローク単気筒エンジンを新規製作したことでした。

1955年11月の第1回浅間高原レースで、125ccクラスの1位から4位を独占したファクトリーマシンの姿を再現したヤマハ「YA-1」。同年7月の富士登山レースでも、ホンダを筆頭とするライバル勢を抑えて優勝を飾っている
1955年11月の第1回浅間高原レースで、125ccクラスの1位から4位を独占したファクトリーマシンの姿を再現したヤマハ「YA-1」。同年7月の富士登山レースでも、ホンダを筆頭とするライバル勢を抑えて優勝を飾っている

 もっとも、オフロードの腕前が万年初級で、モトクロッサー事情に疎い身としては、YZ125はなかなか接点が持ちづらいバイクです。とはいえ、2015年から2ストロークパラレルツインの1986年型ヤマハ「TZR250」を愛用し、近年になって仕事とプライベートの両方で、1990年代以前に生まれた2ストローク車に接する機会が増えている私は、「2022年型YZ125の開発陣に、最新2ストロークの話を聞いてみたい」と以前から考えていました。

 そしてその思いを実現するため、知識不足で恥をかくのを承知でヤマハにインタビューを打診したところ、幸いなことに快諾をいただき、YZ125の開発に携わった技術者から、いろいろな話を聞くことができたのです。

ヤマハ第1号車も、2ストローク125cc単気筒だった

 YZ125の技術者インタビューを行なったのは、本社に隣接したコミュニケーションプラザです。ここでは往年のモトクロッサーを含めて、膨大な数の展示車が並ぶ館内をじっくり見学することができます。

ヤマハの第1号車となった1955年型「YA-1」。エンジンはピストンバルブ吸気の空冷2ストローク125cc単気筒、最高出力は5.6ps/5000rpm
ヤマハの第1号車となった1955年型「YA-1」。エンジンはピストンバルブ吸気の空冷2ストローク125cc単気筒、最高出力は5.6ps/5000rpm

 そこで同社の第1号車である1955年型「YA-1」の前に立った瞬間に、ふと気づいたのです。このモデルのエンジンは2022年型YZ125と同じ、2ストローク125cc単気筒じゃないか! と……。

 もちろん、今から67年前に誕生したYA-1と最新のYZ125は、冷却方式や吸排気系は言うに及ばず、何もかもが異なります。でも改めて考えると、ヤマハは創業時から現代に至るまで、ずっと2ストローク単気筒エンジンを作り続けているのです。

 そう考えると、同社にとっての2ストローク単気筒は、ホンダの4ストローク水平単気筒や、ハーレー・ダビッドンの45度Vツイン、BMWのフラットツインなどと同様に、メーカーの歴史を語るうえで欠かせないエンジン……と、言えるのかもしれません。

2種のエンジン形式が共存する、ヤマハのバイク

 本題に入る前に私の知る限りで、近年のモトクロッサー/エンデューロレーサーの概要を説明しておきましょう。そもそもの話をするなら、かつてのこのジャンルの主力は2ストロークだったのですが(ただし黎明期となる1960年代以前の500ccクラスでは、AJSやFN、モナーク、BSAといった4ストローク勢が活躍)、オンロードのGPレーサーと同様に、環境問題を考慮した結果として2000年前後から4ストロークへの移行が始まりました。その嚆矢(こうし)となったモデルは、1997/1998年に衝撃的なデビューを飾ったヤマハ「YZM400F」「YZ400F」です。

取材当日のコミュニケーションプラザには、往年の2ストロークモトクロッサーが展示されていた。手前右の1987年型「YZ125M」と奥左の1983年型「YZM500」は、シリーズチャンピオンを獲得している
取材当日のコミュニケーションプラザには、往年の2ストロークモトクロッサーが展示されていた。手前右の1987年型「YZ125M」と奥左の1983年型「YZM500」は、シリーズチャンピオンを獲得している

 そして、ホンダ、スズキ、カワサキの3社は、ヤマハに続く形で4ストロークモトクロッサー/エンデューロレーサーを開発し、2000年代に既存の2ストローク車のほとんどの生産を中止しました。

 ところがヤマハは、4ストロークを主軸に据えつつも、2ストロークのYZ85/125/250シリーズを、改良を加えながら継続販売するという方針を選択したのです。この方針は、かつて“2ストロークのヤマハ”と呼ばれた、同社ならではのこだわりと言えそうですが……。

 世界的な視点で考えると、ヨーロッパ勢のこだわりはヤマハ以上でした。何と言ってもKTMやハスクバーナ、ガスガス、ベータ、tmレーシング、シェルコといったメーカーは、2010年代に入っても2ストロークエンジンのニューモデルを定期的に発売しているのですから。

 と言っても、2000年代以降のモトクロスでは4ストロークが圧倒的な優位に立っているのですが、エンデューロの世界では2ストロークが根強い人気を維持していますし、近年の欧米では2ストロークのみを対象としたジュニアクラスのレースが開催されています。また、アマチュアレーサーやファンライドとしてオフロードを楽しむ人の中では、最近になってヨーロッパ製の2ストローク車を選択する人が着実に増えているのです。

2021年夏の発表以来、世界中のオフロードファンの間で大反響を巻き起こしている2022年型「YZ125」。最高出力は非公表だが、海外のサイトに掲載された情報を検討してみると、低く見積もっても36ps前後は出ている模様
2021年夏の発表以来、世界中のオフロードファンの間で大反響を巻き起こしている2022年型「YZ125」。最高出力は非公表だが、海外のサイトに掲載された情報を検討してみると、低く見積もっても36ps前後は出ている模様

 そういった状況の変化を踏まえて、ヤマハは2019年型でYZ85のエンジンの大改革を行ない、さらには全面新設計のYZ65をラインナップに追加しました。そしてボトムレンジを支える2台に続く形で、2022年型YZ125のエンジンは、17年ぶりの全面刷新を受けることになったのです。

 さて、前振りのつもりで文章を書き始めたら、意外に長文になってしまったので、第1回目はここまでです(全4回)。もちろん第2回目以降では、YZ125の開発陣に聞いた、最新2ストロークエンジンの詳細をお伝えします(つづく)。

【画像】ヤマハの2ストロークバイクの歴史を振り返る(12枚)

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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