ファンティック副社長に訊く「キャバレロ700」にヤマハのエンジンを搭載する理由
「私たちは同じメンタリティーを持っています」
その印象は、ファンティックの本社でさらに色濃くなりました。ちなみに、ボローニャのミナレリからヴェネト州サンタ・マリア・ディ・サーラまでは約150km、クルマで約1時間半の距離です。遠過ぎるわけではありませんが、決して近いわけでもありません。

日々のコミュニケーションについて、工場内を案内してくれた技術開発責任者であるフィリッポ・ローマンさんに質問しました。フィリッポさんは、後述のファンティック副社長、マリアーノ・ローマンさんのご子息です。
「チームワークがとても重要です」と、フィリッポさんは答えます。
「彼ら(ミナレリ)とは毎日ビデオ会議を行なっています。それに、とても頻繁に電話で話していますよ! しかし私たちは、R&D、車両開発のためだけではなく、日々、素材を運んだり、連絡を取り合っているんです。コミュニケーションはとてもうまくいっていますよ」
「週に1度、月に2度くらい、実際に顔を合わせてミーティングすることもあります。来てもらうこともあれば、こちらから行くこともあります。顔を合わせてのコミュニケーションというのはとても大事ですからね」
フィリッポさんは「ファンティックとミナレリには、とても強いチームワークがあります。私たちは、同じ会社です。異なる2つの会社ですが、同じグループです」とも語っていました。それはまさに、筆者がミナレリのレセプションで感じたことでした。
その後に、ファンティックの副社長であるマリアーノ・ローマンさんに話を聞くと、さらにファンティックとミナレリの深い関わりが見えてきました。あるいはそれは、ミナレリとマリアーノさん個人との、と言った方が良いかもしれません。

まず、マリアーノさんはミナレリを買収した理由を簡潔に説明しました。
「私たちは量産エンジンのノウハウに欠けていると考えているからです。ミナレリを所有するということはエンジンのノウハウを持つことで、それを社内に持つということがとても重要なのです。私たちはミナレリを所有することで、ノウハウを完成したのです」
筆者が「ミナレリとの関係性が2020年末に変わったことは、ファンティックにとってのターニング・ポイントに見えます」と言うと、マリアーノさんは「ええ」と穏やかに同意しました。そして、「しかし、私個人はミナレリとは40年前から仕事をしていますよ」と続けたのです。
「私は1985年にアプリリアで働き始めたんです。アプリリアのテクニカル・マネージャーでした。そして、ミナレリとたくさんのエンジンを開発したのです。50ccエンジンを一緒に開発しましたし、ほかのエンジンもね。私たちはミナレリ・ブランドと素晴らしい関係性を持っています。結局のところ、それが、私たちがミナレリを買収した理由なのです。1985年にミナレリとの仕事は始まっていたのです」
「わたしはミナレリのオーナー、ゼネラルマネージャー、そして社長と非常に強い関係性を持っています。ミナレリの人々はとても優秀です。そのうちの1人とは、40年前から一緒に仕事をしています。私はミナレリの社員の50パーセントを知っているんです。仕事の仕方や関係性という点において、問題はありません。私たちは同じメンタリティーを持っています」
なるほど、ファンティックとミナレリの関係性は、すでにずっと以前から始まっていたということです。違う会社でありながら、同じメンタリティーを持っているということは、非常に興味深いところです。同じメンタリティーを持ってはいるけれど、違う会社であり続けている、ということでもあるからです。













