実際どうなの? クラッチ操作不要のヤマハ「MT-07 Y-AMT」 価格差9万円弱を埋める楽しさはそれ以上だった!?
2025年にモデルチェンジとなった、排気量688ccの直列2気筒エンジンを搭載するヤマハ「MT-07」は、クラッチおよびシフト操作を不要とする「Y-AMT」搭載車が新たにバリエーションとして設定されました。その乗り味はどうなのか? 試乗しました。
マニュアル操作の自動化によって、新たなページが開かれる?
このところ、ホンダの「E-Clutch」、ヤマハの「Y-AMT(ヤマハ・オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)」、そしてBMWの「ASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)」などなど、マニュアルギアボックスをそのまま自動化することで新たなライディング体験を提供するメーカーとバイクが増えています。

ナニを隠そう、私自身(筆者:松井勉)もBMW Motorrad「R 1300 GS」に装備されたASAに乗る1人として、クラッチ&シフトチェンジを自動化している「Y-AMT」には興味津々。初号機とも言える「MT-09 Y-AMT」は未体験なものの、新たに加わった「MT-07 Y-AMT」に乗れるとあって試乗を楽しみにしていたのです。
そもそも「MT-07」は、スリムで700ccクラスだからといってことさら大きさを主張するタイプではありません。「MT-25」や「MT-03」などから乗り換えてもほどよいボディサイズと余裕のあるエンジントルクで、乗りやすさが魅力です。なによりデザインもカッコイイですし。
タイヤサイズなどこのクラスならでは。そのワイドさで排気量とパワー、トルクを意識させますが、「Y-AMT」モデルで通常の「MT-07」より4kg増量しても187kgとなる車重は、扱いやすいバイクとして取り回しの段階からフレンドリーです。
フェイスデザインは先代以上のコンパクトさの中に「MT」らしさを秘めたもの。左右に配置したLEDスモールランプと中央にあるヘッドライトで主張します。
跨がるとメーターやハンドルスイッチまわりが刷新された新型を意識させます。スマホアプリとの連動で様々な拡張機能を活用できるこのモニターは、ハンドルスイッチから操作が可能なのも2025年の今にとっては必須の装備でしょう。

ステップ位置が下方に移ったこともあってか、身長183cmの私には少しゆとりあるライディングポジションに思えます。燃料タンクまわりのスリムさやシート前端部分を細く合わせ込んだボディラインは相変わらず。足つき感はさらに向上した印象です。
位相クランクを持つ直列2気筒エンジンを始動すると、パルス感あるアイドリング音が耳に届きます。エンジンの回転はスムーズです。
吸気系経路にあるパーツを最適化してエンジン特性はもちろん、ライダーの耳に届くサウンドまで磨き込むのがヤマハ流。市街地中心の試乗でその心地よさはどこまで感じられるのでしょうか。
そして「Y-AMT」です。まずはATモードを選択。左スイッチボックスにある「+」「-」が印字され、人差し指と親指で操作するシーソースイッチから1速にシフト。アクセルを開くと滑らかにクラッチを操作し、前に押し出されます。
混雑した市街地の道路、エリア30km/hの狭い道を行く場面でも違和感は皆無。動き出してほどなく2速にシフトしても、変速音がエンジンケースの中でカツンとするだけでシフト後のギクシャク感なく進みます。大通りに出てからも変速時のカチョンという音と振動は伝わるものの、走行の滑らかさはそのまま。
そもそも3000回転もあれば加速が事足りるのが「MT-07」です。低いエンジン回転、少ないアクセル開度でシフトアップすると、ワイドに開けたときよりも少々シフトショックがあるような印象でした。
自動で変速するATモードでもシフトスイッチは作動するので、自分が欲しいタイミングでシフトアップをしてみることも可能。これは2000回転程度でシフトアップして、エンジンのパルス感を楽しめたのでお試しの価値アリです。

今回、エンジン回転を上げることも少なく自慢の吸気音を楽しむまでには至りませんでしが、全体に2気筒エンジンが持つ加速とトルク、排気音など全体は心地よく感じました。
スポーツ、ストリート、カスタムと3つあるライディングモードは、ストリートが多様な路面状況を想定したモード、スポーツはワインディングやサーキットを視野に入れたダイレクト感あるモード、カスタムはスロットルレスポンスやトラクションコントロールをライダーの好みに合わせて保存できるモードです。
さらに「Y-AMT」のシフトスケジュールにも、ATモードの場合は通常のDモードと、回転を高めまで引っ張るD+というモードがあります。
この日、マニュアルシフトで走るよりも市街地ではATモードが個人的に好感触だったので、DとD+を切り替えながら走りました。気持ち的にはスポーツモードだとD+、ストリートモードだとD、というパワーデリバリーによってそのように集約されるようにも感じました。
バイクのブレーキ、旋回性などは意のままながら走る、曲がる、停まる、操作を優しくライダーに伝えてくれるのです。
フロントフォークのアッパーブラケットやホイールなど、旋回を生み出す瞬間に効く軽量化がなされたはずなのに、キュンと曲がり出すような動きをしません。前後に履くダンロップのSPORTMAX Q5Aというタイヤもグリップとハンドリングを重視しているにもかかわらず、急かされないのは嬉しい誤算。
タッチの良いフロントブレーキも市街地走行では使用頻度が高いので、バイクの良さを味わえました。これも実は「Y-AMT」のおかげだ、と気が付くのです。
普段、クラッチ操作とアクセルワーク、シフト操作をシンクロさせるのにライダーとしての意識の大半が総動員されていて、こうしたバイクそのものの味わいにまで気持ちが振り分けられていないのかも、と感じたワケです。

結論として、バイクを味わうフィーリングの深さはクラッチ操作が無い方が楽しめるのかな、と新たな魅力を発見した試乗でした。
市街地中心でこれですから、風景の綺麗な場所や魅力的なワインディングを走ったら、きっとまた新たなページが開かれるのでは……。ナルホド、9万円弱の価格差がある「Y-AMT」搭載の「MT-07」ですが、テストが終わる頃にはすっかりお気に入りだったのです。
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2025年でモデルチェンジとなったヤマハ「MT-07」は、バリエーションとして今回試乗した「Y-AMT」搭載車も設定されました。価格(消費税10%込み)は「MT-07」が96万8000円、「MT-07 Y-AMT」が105万6000円です。
Writer: 松井勉
モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。





















